Brush Up! 権利の変動編
正解・解説
占有権の基本問題1 昭和51年
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
●占有 |
定義
法律上の根拠や権原の有無にかかわらず、物を自己のためにする意思をもって事実上支配することを占有といいます。(民法180条) 民法では、物がその人の事実上の支配圏内に置かれているときに、それによる効力を付与(占有訴権など)して、物の所持という事実上の支配状態を保護する規定を設けています。これが占有権です。 所有権等とは別に、この事実上の支配に法的な保護とも言える占有権を民法が規定している趣旨は、各個人の法的な現状を保護することで、社会の秩序と平和を維持するためとされています。 この占有は、取得時効にも関連します。(民法162条) |
占有に関する次の記述は,民法の規定によれば,○か、×か。(昭和51年) |
1.「悪意の占有者は,占有権を取得することができない。」
【正解:×】
◆占有の成立には悪意・善意は問わない 悪意の占有とは、「本権がないことを知っている、または本権の有無に疑いをもちつつ行う占有」をいいます。 善意の占有とは、「本権がないのに、それがあると誤信してする占有」です。(この善意の用法は通常の用法と異なっています。) 民法では、占有の開始にあたって、善意・悪意は問わず、占有の成立要件にはなっていません。 |
●参考問題 |
1.「占有者は,所有の意思をもって善意,平穏,かつ,公然に占有するものと推定されるが,占有の取得に関する無過失は,推定されない。」(昭和49) |
【正解:○】 ◆善意占有での過失と無過失は区別される 民法186条1項 占有者は、所有の意思をもって善意、平穏、かつ、公然に占有するものと推定される。 占有者が正権限〔本権〕があると誤信して占有しているとき(善意の占有)、過失の有無によって取得時効に必要な期間が変わってきます。(162条)〔善意無過失で占有をはじめたときは10年間、悪意or有過失のときは20年間〕このほかには即時取得でも過失無過失の区別があります。(192条) このような区別がある以上、占有開始時点での無過失〔知らなかったことについて過失がなかったこと〕は推定されることはありません。 ▼参考 10年間の取得時効の完成を主張する者は、占有開始時点での無過失の立証が必要。(最高裁・昭和46.11.11) |
2.「借家人は,所有の意思をもって当該家屋を占有するものと推定される。」
【正解:×】
◆代理占有 占有権には、所有の意思をもって自らその物を所持することによって成立する直接占有と他人の所持を介して成立する代理占有(間接占有)があります。 直接占有の例 : 自己が居住している家屋に対する占有 代理占有の例 : 他人に賃貸している家屋に対する占有 賃借人には原則として「所有の意思はない」とされ、賃貸人は、賃借人(占有代理人)の所持を介して代理占有しています。(大審院・大正11.11.27) したがって、本設問では借家人が「所有の意思をもって当該家屋を占有」となっているので、×になります。 ▼取得時効が完成するのに必要な期間では、直接占有だけでなく代理占有も含まれます。 |
3.「占有権を承継した者は,常に,当該承継した日から占有を開始したものとみなされる。」
【正解:×】
◆占有の承継 占有の承継人(特定承継人だけではなく、相続人のような包括承継人も含むは、自己の占有のみを主張するか、またはと前主(直前の前主とは限らず現在の占有者に先立つ全ての前主)の占有を合わせて主張することができます。(民法187条) つまり、承継した日から占有を開始したと主張するだけでなく、選択により、前主(前に占有していた者)の占有期間も併せて主張することもできるので、本肢は×になります。 ▼取得時効が完成するのに必要な期間では、前の占有者の占有期間も含めることができます。 |
4.「占有権は,自己のためにする意思をもって,物を所持することによって取得される。」
【正解:○】
◆占有権の取得 占有権は、自己のためにする意思をもって、物を所持することによって取得されます。(民法180条) ▼原問題では「正しいものはどれか」という設定で、この肢問が正解肢でした。初めのほうに当惑問題を置いて最後に解くのが容易な正解肢を置くイジワルな出題手法ですが、宅建試験にはよくあることです。 |
●参考問題 | |
1.「不動産の占有権は,占有代理人によってこれを取得することができる。」(昭和51) | |
【正解:○】 ◆代理占有 民法181条 占有権は代理人に依りて之を取得することを得。 例 : 不動産の賃貸人 賃貸人は賃借人に目的物を引き渡した後も、賃借人を介して代理占有をしています。(大審院・大正11.11.27) |
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2.「占有権は,自己のためにする意思をもって物を所持する場合のほか,他人のためにする意思をもって物を所持する場合にも,取得することができる。」(昭和49) | |
【正解:×】ヒッカケ問題 ◆占有権の取得 民法180条 占有権は自己のためにする意思をもって物を所持するに因りてこれを取得す。
占有権取得のこの二つの要件を考えると、『他人のためにする意思をもって物を所持する場合』は含まれないことがわかります。 ■『他人を介して』≠『他人のためにする意思をもって』 本肢では,この微妙な違いを問うています。以下は「他人を介して所持すること」に含まれます。 ・賃借人が賃貸人のために賃借物を所持する→賃貸人が賃借人を介して占有している |