Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

占有権の基本問題2 占有訴権 (昭和60年・問6)


【正解】

×

 占有訴権に関する次の記述は,民法の規定によれば○か,×か。(昭和60年・問6)

1.「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより,その物の返還

及び損害賠償を請求することができる。」

【正解:

◆占有侵奪への回収の訴え

 占有の訴えは、占有者がどのような法律上の権原に基づいて占有しているのかには関係なく、提訴することができます。

 占有者の意思に反して所持が奪われたとき(詐取された場合は任意の引渡しとなるので侵奪にはならない)、占有者は占有を侵奪された時より一年内に有回収の訴え (返還および損害賠償の請求) を提起することができます。(民法200条1項、201条2項)

取得時効との関係

 占有者が所持を奪われても、占有回収の訴えを提起すると、法律的には占有は消滅せずに、取得時効の中断も生じません(民法203条但書)

強制執行との関係

 強制執行に対しては、占有回収の訴えを行使することはできません。(判例)

2.「占有回収の訴えは,占有を侵奪した者の特定承継人が占有侵奪の事実を

知っている場合に限り,当該特定承継人に対して提起することができる。」

【正解:

◆侵奪者の特定承継人が悪意であれば、回収の訴えを提起できる

 侵奪者の特定承継人が善意であれば、回収の訴えを提起することはできませんが、悪意であれば提起できます(民法200条2項)

3.「占有回収の訴えを提起している場合,同一の事実関係について,所有権に

基づく返還請求の訴えを併せて提起することはできない。」

【正解:×

◆『占有回収の訴え』と『所有権に基づく返還請求』

 占有を侵奪された者が、そのものの所有者であるときは、占有回収の訴えと所有権に基づく返還請求のうちの一方を提起するだけではなく、両方を同時に提起できるとされています。(通説)

4. 「占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは,占有保全の訴えにより,

妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。」

【正解:

◆占有保全の訴え

 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができます。(民法199条)

●占有訴権
 占有回収の訴え・・・占有を侵奪されたときに、返還・損害賠償の請求

 占有保持の訴え・・・占有を妨害されたときに、妨害停止・損害の賠償請求
             妨害停止→妨害を除去して原状回復

 占有保全の訴え・・・占有を妨害されるおそれがあるときに、
             妨害の予防・損害賠償の担保を請求


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