Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記の過去問アーカイブス 登記簿・管轄 昭和55年 改正対応


不動産登記法上,登記簿に関する次の記述中,誤っているものはどれか。(昭和55年)

1.「登記記録は,一筆の土地又は一個の建物ごとに作成されるが,区分建物の登記でも,各区分建物ごとに登記記録が作成される。」

2.「登記記録は,表題部,権利部の甲区及び乙区に分けられるが,表題部には不動産の表示に関する事項,権利部の甲区には所有権に関する事項,権利部の乙区には所有権以外の権利に関する事項が記載される。」

3.「二個の登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記記録は,どちらの登記所でも備え付けてある。」

4.「登記記録は永久保存であるが,建物に関する閉鎖登記記録の保存期間は,閉鎖の日より30年間である。」

【正解】

×

1.「登記記録は,一筆の土地又は一個の建物ごとに作成されるが,区分建物の登記でも,各区分建物ごとに登記記録が作成される。」

【正解:

区分建物の登記記録

 登記記録は一筆の土地または一個の建物ごとに作成されます(不動産登記法・2条5号)。つまり,1つの不動産(土地・建物)について,1つの登記記録が作成されるわけです。⇒ そうでなければ,不動産番号を割り振ることができません。

 区分建物の登記でも,各区分建物ごとに登記記録が作成されます(登記規則・4条3項,別表三・区分建物である建物の登記記録,197条2項3号,別記9号)

2.「登記記録は,表題部,権利部の甲区及び乙区に分けられるが,表題部には不動産の表示に関する事項,権利部の甲区には所有権に関する事項,権利部の乙区には所有権以外の権利に関する事項が記載される。」

【正解:

◆登記記録の編成

 登記記録は,表題部,権利部に区分して作成され,権利部はさらに甲区及び乙区に分けられる(不動産登記法・12条,登記規則・4条4項)

 表題部…不動産の表示に関する事項,

 権利部の甲 区…所有権に関する事項,

 権利部の乙 区…所有権以外の権利に関する事項

3.「二個の登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記記録は,どちらの登記所でも備え付けてある。」

【正解:×

管轄登記所

 登記記録は管轄する登記所に備えられています。各登記所の管轄区域は,行政区画を基準に法務大臣が定め,原則として管轄区域に存在するものの登記事務を扱います。(法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則・昭和24年法務府令12号)

 そのため,管轄区域ではない登記所になされた登記申請は却下され,万一登記がなされたとしても,その登記は一定の手続を経て無効な登記として登記官の職権によって抹消されます。(不動産登記法25条1項,71条1項) → 出題・平成5年

 建物が数個の登記所の管轄区域にまたがって存在する場合には,それらの登記所を監督する法務局長または地方法務局長もしくは法務大臣の指定を受けて初めて管轄登記所が確定します(不動産登記法・6条2項)

 したがって,二個の登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記簿は,指定された登記所においてのみ備え付けてあるので,本肢は×です。

  関連・平成3年・問16・肢3

4.「登記記録は永久保存であるが,建物に関する閉鎖登記記録の保存期間は,閉鎖の日より30年間である。」

【正解:

◆閉鎖登記簿

 登記記録は,閉鎖登記記録を除いて,永久保存です(登記規則・28条1号)

 土地または建物の滅失の登記,合筆・合併の登記などで登記記録としての存在理由を失った登記記録は,表題部に閉鎖の事由・年月日・閉鎖した登記官の識別番号を記録し,閉鎖する登記記録の不動産の表示を抹消する記号を記録します(登記規則・108条)

 閉鎖された登記記録は効力をもつものではありませんが,過去の権利関係や経緯を知る上で必要なものです。〔附則3条の指定の際,現に登記所に備え付けてある閉鎖登記簿についても閲覧や謄本等の交付の請求ができます。〕(不動産登記法・附則4条,登記規則・附則5条)

 閉鎖された登記記録の保存期間は,閉鎖の日より土地登記簿は50年建物登記簿は30年です(登記規則・28条4号,同5号)


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