Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記 仮登記のアウトライン 仮登記の小問集合 改正対応
仮登記に関する次の記述は,○か,×か。 |
1.「仮登記は,本登記をするのに必要な手続上の要件又は実体法上の要件が完備しない場合に,将来その要件が備わったときになすべき本登記の登記上の順位を確保しておくために,あらかじめなされる予備的な登記である。」 |
2.「所有権移転請求権保全の仮登記を申請する場合は,所有権の移転がすでに行われているが,登記申請に必要な手続上の条件が整っていないときである。」 |
3.「申請書に仮登記義務者の承諾したことを証する情報を提供してする所有権移転請求権の仮登記の申請は,仮登記権利者及び仮登記義務者が共同してすることを要する。」 |
4.「所有権に関する仮登記は,登記記録中の権利部の乙区に記録され,その次に余白が設けられる。」 |
5.「土地の所有者は,いったん所有権移転の仮登記をした後は,他の者に対する所有権移転の登記をすることはできない。」 |
6.「所有権移転請求権保全のための仮登記をした場合,本登記の順位は,仮登記の順位による。」 |
7.「仮登記がされた所有権移転請求権と登記がされた抵当権の順位は,それらの登記の順位番号による。」 |
8.「A名義の所有権の登記がされている土地について,B名義への所有権移転の仮登記がされた後,A名義からC名義への売買による所有権移転登記がされている場合には,Bは,Cの登記が抹消されるまでは,仮登記に基づく本登記をすることはできない。」 |
9.「仮登記の抹消は,申請書に仮登記名義人の承諾書を添付した場合には,仮登記義務者が単独で申請することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
○ | × | × | × | × |
6 | 7 | 8 | 9 | ** |
○ | × | × | ○ | ** |
●予備登記 |
登記の効力による分類として,終局登記(本登記)と予備登記があります。仮登記は予備登記です。
┌ 終局登記(本登記) |
【関連条文】 |
不動産登記法・105条〜110条,登記令・8条1項8号,別表68項〜70項, 登記規則・178条〜180条,準則・116条(仮登記の抹消), |
●定義 (不動産登記法・2条10号〜13号) |
■表題部所有者 所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者をいう。 ■登記名義人 登記記録の権利部に、次条各号に掲げる権利について権利者として記録されている者をいう。 ■登記権利者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者をいい、間接に利益を受ける者を除く。 ■登記義務者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く。 |
【Part-1 仮登記とは何か】
1.「仮登記は,本登記をするのに必要な手続上の要件又は実体法上の要件が完備しない場合に,将来その要件が備わったときになすべき本登記の登記上の順位を確保しておくために,あらかじめなされる予備的な登記である。」(H4-15-2) |
【正解:○】 ◆仮登記とは何か (不動産登記法・105条) 仮登記とは (1) 物権変動(所有権の移転等)は生じているが,本登記に必要な添付情報など手続上の要件が揃わなかったとき〔本登記をするのに必要な手続上の要件が完備しない場合〕→条件不備の仮登記とか1号仮登記と呼ばれます。
(2) 物権変動(所有権の移転等)はまだ生じていないが,所有権移転請求権や停止条件付請求権などは発生しているのでこの請求権を保全するとき〔本登記をするのに必要な実体法上の要件が完備しない場合〕→請求権保全の仮登記,2号仮登記と呼ばれます。
(1)(2)のどちらも将来その要件が備わったときになすべき本登記の登記簿上の順位を確保しておくために,あらかじめなされる予備的な登記です。 仮登記には,それ自体には対抗力はありません。仮登記が本登記に改められたときに,仮登記の順位で対抗力を取得します。 |
●類題 |
1.「仮登記は,所有権の移転についてのみすることができる。」(S51-11-3) |
【正解:×】 仮登記とは,実体法上または手続法上の要件が具備していない場合に,将来の本登記の順位保全のためにあらかじめしておく登記です。 仮登記できるのは,所有権や所有権の移転だけのことではなく,所有権以外の権利や権利の移転以外のものでもできます。 ▼不動産登記法では,権利に関する登記事項として以下のものを規定しています。 ・登記できる権利の種類 所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・採石権(全ての物権ではない・留置権がない・債権である賃借権も登記できる) ・登記できる権利の 不動産に関する権利の設定,移転,保存,変更,処分の制限,消滅 このうち,仮登記できない場合もありますが,「所有権」の「移転」のみ仮登記できるというわけではありません。細かいものにまで何が仮登記できるかというのは宅建の出題レベルを超えるので出題されたことのある仮登記を見ていくだけで十分です。 |
●類題 |
2.「仮登記には,本登記と同様の対抗力がある。」(S51-11-2) |
【正解:×】
仮登記には,原則として,それ自体には対抗力はありません。仮登記が本登記に改められたときに,仮登記の順位で対抗力を取得します。 ▼例外・仮登記担保 『仮登記担保契約に関する法律』に規定する仮登記担保に該当するものは競売等のときに仮登記のままで優先的に債権の弁済を受けることができます。→仮登記担保は昭和54年,昭和63年に出題されていますがこの後には出題されていません。 |
2.「所有権移転請求権保全の仮登記を申請する場合は,所有権の移転がすでに行われているが,登記申請に必要な手続上の条件が整っていないときである。」(S54-13-1) |
【正解:×】 ◆所有権は移転しているが手続上の条件が整っていない→1号仮登記 本肢は,1号仮登記と2号仮登記を混同している人を引っ掛ける問題です。 所有権移転請求権保全の仮登記とは,2号仮登記ですが,『所有権の移転がすでに行われているが,登記申請に必要な手続上の条件が整っていないとき』に申請するのは1号仮登記です。
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●類題 |
所有権移転の仮登記は,実体上すでに所有権が移転している場合には,することができない。(平成2年・問16-1) |
【正解:×】
実体上すでに所有権が移転している場合で本登記に必要な添付情報などの手続上の要件が揃わなかったときには1号仮登記を申請できるので誤りの記述です。 |
【Part-2 仮登記はどのように申請するか】
3.「申請書に仮登記義務者の承諾したことを証する情報を提供してする所有権移転請求権の仮登記の申請は,仮登記権利者及び仮登記義務者が共同してすることを要する。」(H5-15-3) |
【正解:×】 ◆原則は共同申請 「仮登記義務者の承諾を証する情報」を提供する場合は,仮登記権利者は単独で申請できるので,本肢は×です。 ―*――*――*――*――*― 仮登記も共同申請するのが原則ですが,仮登記権利者が単独でできる場合があります。 仮登記権利者(仮登記によって「得」する人)が単独で仮登記をすることができるのは,申請情報と併せて,添付情報として, 1) 仮登記の登記義務者(仮登記によって「損」する人)の承諾を証する情報を提供したとき(このほかに,登記原因証明情報が必要),(不動産登記法・107条1項,登記令7条1項5号ハ)。 2) 裁判所の仮登記を命ずる処分の決定書正本を提供したとき(決定書の正本が登記原因証明情報になる。登記令・7条1項5号ロ), この2つの場合です(不動産登記法・107条1項)。
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●仮登記申請で添付を要しないもの |
先例(通達等)により,仮登記を共同申請する場合には,次の情報は提供を要しないとされています。 ・登記識別情報 ⇒ ただし,仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消の場合は必要(登記令・8条1項8号)。 ・登記原因についての第三者の許可・同意・承諾を証する書面→昭和39.3.3民事甲291号民事局長通達 ⇒ただし,仮登記の登記権利者が単独申請のときは必要(不動産登記法・107条1項,登記令7条1項5号ハ)。 ・住所を証する情報→昭和39.7.27民事甲143号民事局長通達 |
●類題 |
1.「仮登記は,登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合に限り,仮登記権利者が単独で申請することができる。」(H10-15-1) |
【正解:×】
仮登記は共同申請が原則ですが,単独申請できる場合もあります。しかし,『登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合』に限るわけではありません。 |
2.「仮登記権利者は,裁判所の仮登記を命じる処分の決定書正本を提供するときでなければ,単独で仮登記の申請をすることができない。」(H10-15-2) |
【正解:×】 単独で申請できる仮登記は,仮登記を命じる決定書正本を提供してのものだけに限りません。 単独申請できる基本的なケースは以下の二つの場合です。 ・仮登記義務者の承諾を証する情報を提供 ・裁判所の仮登記を命じる処分の決定書正本を提供 |
【Part-3 仮登記はどのように記載されるか】
4.「所有権に関する仮登記は,登記記録中の権利部の乙区に記録され,その次に余白が設けられる。」(S62-16-3) |
【正解:×】 ◆仮登記の次の余白は将来の本登記のため 仮登記は,相当区〔所有権の仮登記ならば甲区,所有権以外の権利の仮登記ならば乙区〕になされ,その次に余白が設けられます(登記規則・179条1項)。その余白は,当該仮登記に基づいて将来本登記をするためのものです。 仮登記に基づく本登記の順位は仮登記の順位とされているので,そのためにこのような措置がとられています。 所有権に関する仮登記では,記載される相当区は甲区です。本肢は『乙区に記録』とあるので誤りの記述です。 |
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 織田信長 |
2 | 所有権移転 請求権仮登記 |
・・ | 年月日 売買予約 |
権利者 徳川家康 |
余白 | 余白 | 余白 | 余白 |
●類題 |
2.「仮登記に基づく本登記は,登記用紙中あらかじめ設けられている仮登記の次に設けられている余白に記録される。」(平成2年・問16-2) |
【正解:○】 |
【Part-4 仮登記をした後,他の者に対する所有権移転登記はできるか】
5.「土地の所有者は,いったん所有権移転の仮登記をした後は,他の者に対する所有権移転の登記をすることはできない。」(S63-16-4) |
【正解:×】 ◆所有権移転の仮登記をした後でも他の者に対する所有権移転登記は可能 仮登記は,将来必要な要件が具備されたときになされる本登記のために,あらかじめ順位を保全するためのもので,仮登記に基づく本登記がされると,仮登記後にほかの登記がなされてもそれに優先します。 したがって,所有権移転の仮登記がされていても,土地の所有者が他の者に対して所有権移転登記をすることは可能です。 ▼補足 たとえば,いったんAがBへの所有権移転の仮登記をした後に,AがCへの所有権移転の仮登記をすることも可能です。(明治33.2.2民刑局長回答) |
●類題 |
いったん所有権移転の仮登記がなされると,その物件については他に所有権移転の本登記をすることはできない。(S45) |
【正解:×】 |
▼所有権移転の仮登記の後に第三者の所有権移転登記がなされた場合
(徳川家康の仮登記の後に豊臣秀吉が所有権移転登記をしています。)
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 織田信長 |
2 | 所有権移転 仮登記 |
・・ | 年月日 売買 |
権利者 徳川家康 |
余白 | 余白 | 余白 | 余白 | |
3 | 所有権移転 | ・・ | 年月日 売買 |
所有者 豊臣秀吉 |
【Part-5 順位の保全の意味】
6.「所有権移転請求権保全のための仮登記をした場合,本登記の順位は,仮登記の順位による。」(S58-16-3) |
【正解:○】 ◆仮登記による順位保全 仮登記には,原則として,登記本来の効力である対抗力はありませんが,仮登記に基づく本登記のために順位を保全する効力があります(不動産登記法・106条,登記規則179条2項)。 仮登記に基づく本登記がなされると,「仮登記後になされて,仮登記に基づく本登記と抵触する登記」は抹消されたり(所有権),後順位(抵当権など)になります。 |
▼仮登記に基づく本登記がなされたことによって,それに抵触する登記が抹消された例。
(徳川家康が仮登記に基づく本登記をしたことにより豊臣秀吉の移転登記が抹消されて
います。)
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 織田信長 |
2 | 所有権移転 請求権仮登記 |
・・ | 年月日 売買予約 |
権利者 徳川家康 |
所有権移転 | ・・ | 年月日 売買 |
所有者 徳川家康 |
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3 - |
所有権移転 ---------- |
・・ --- |
年月日 売買 ---- |
所有者 豊臣秀吉 -------------- |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す。
7.「仮登記がされた所有権移転請求権と登記がされた抵当権の順位は,それらの登記の順位番号による。」(S58-16-1) |
【正解:×】 ◆相当区事項欄が異なる場合は受付番号で順位が決まる 所有権移転請求権の仮登記は甲区に記載され,抵当権設定は乙区に記載されます(登記規則・4条4項)。 同区になされた登記は順位番号によりますが,相当区が異なる場合は,その登記の優劣は順位番号ではなく受付番号で決まることになっていましたね(登記規則・2条1項)。 |
●受付番号 |
登記の申請情報が提供されたときは,登記官は必ず「登記申請書」を受け取り,直ちに「受付帳」に所定の事項を記載しなければならず,受領を拒否することはできません。(不動産登記法19条1項,登記規則56条1項・2項) 受付帳には以下のものが記載されます。 ・その登記の目的 ・受付年月日,受付番号〔一年ごと又は一月ごとに更新〕,不動産所在事項 申請書にも受付帳と同じ受付年月日受付番号が記載されます。〔同一の不動産について2以上の申請があったときは,受付番号の順序によってしなければなりません。〕 ※受付番号は,原則として1年ごとに更新します。ただし,法務局又は地方法務局の長の許可を得て,1月ごとに更新することができます(登記規則・56条3項)。 |
【Part-6 仮登記に基づく本登記】
8.「A名義の所有権の登記がされている土地について,B名義への所有権移転の仮登記がされた後,A名義からC名義への売買による所有権移転登記がされている場合には,Bは,Cの登記が抹消されるまでは,仮登記に基づく本登記をすることはできない。」(H6-16-3) |
【正解:×】 ◆所有権の仮登記に基づく本登記 A ⇒ B (所有権移転の仮登記) B名義への A名義からC名義への B名義への ――●――――――――●――――――――――――――●――――→ 本登記がされれば,Cの登記は抹消されるので誤り。Cの登記が抹消されて初めて,Bの本登記ができるのではない。 所有権に関する仮登記に基づく本登記は,利害関係者Cの承諾を証するC自身が作成した情報かCに対抗できる裁判があったことを証する情報を提供すれば,申請できます。この本登記によりCの登記は登記官の職権で抹消されます(不動産登記法・109条,登記規則・179条,同180条)。 所有権に関する仮登記に基づく本登記の申請は,登記権利者Bと登記義務者(仮登記義務者)Aの共同申請になります。これは,仮登記義務者Aは,第三者Cに処分してCへの所有権移転登記を済ませていても,仮登記を本登記にする関係では,依然として登記義務者たる登記名義人であるためです。 本肢は,このため誤りの記述です。 ▼所有権以外の仮登記(例えば,抵当権設定の仮登記)に基づく本登記については,このような規定がないため,利害関係者の承諾を証する情報,利害関係者に対抗できる裁判があったことを証する情報を提供する必要はありません。
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●甲区と乙区の場合で比較してみましょう
▼甲区に所有権に関する仮登記に基づく本登記がなされた場合
Bが仮登記に基づく本登記をしたことにより,Cの移転登記が抹消されています。
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 A |
2 | 所有権移転 仮登記 |
・・ | 年月日 売買 |
権利者 B |
所有権移転 | ・・ | 年月日 売買 |
所有者 B | |
3 - |
所有権移転 ---------- |
・・ -- |
年月日 売買 ---- |
所有者 C --------- |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す
▼乙区に抵当権設定の仮登記に基づく本登記がなされた場合
仮登記に基づく本登記がなされたことにより,
徳川家康が第一抵当権者,豊臣秀吉が第二抵当権者になります。
【権利部 (乙区)】 (所有権以外の権利に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 抵当権設定 仮登記 |
・・ | 年月日 設定 |
権利者 徳川家康 |
抵当権設定 | ・・ | 年月日 設定 |
抵当権者 徳川家康 |
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2 | 抵当権設定 | ・・ | 年月日 設定 |
抵当権者 豊臣秀吉 |
●類題 |
1.「所有権に関する仮登記をした後,本登記を申請する場合においては,その仮登記後第三者に所有権移転の登記がされているときでも,申請書に,その者の承諾書又はこれに対抗することのできる裁判の謄本の添付を要しない。」(H2-16-4) |
【正解:×】
所有権に関する仮登記をした後,本登記を申請する場合には,その仮登記後第三者に所有権移転の登記がされているとき,申請情報・登記原因証明情報とともに,利害関係者の承諾を証する利害関係者自身が作成した情報かC利害関係者に対抗できる裁判があったことを証する情報の提供を要します。 |
●類題 |
2.「Bを権利者とする抵当権設定の仮登記後Cを権利者とする抵当権設定登記がなされたA所有の土地について,Bの仮登記の本登記をなす場合には,Cの承諾を得る必要はない。」(S52-12-4) |
【正解:○】
所有権以外の仮登記に基づく本登記の申請には,利害関係者の承諾を証する情報又はこれに対抗することのできる裁判があったことを証する情報の提供は必要ではありません。(109条は所有権に基づく本登記についての規定です。) 下の(1)と(2)で例をとってみてみます。(1)(2)とも,Bの抵当権設定の仮登記に基づく本登記の前にCを権利者とする抵当権設定登記,D名義への売買による所有権移転登記がなされていますが,どちらの場合もBが仮登記に基づく本登記をするときにはC,Dの承諾を証する情報又はこれに対抗することのできる裁判があったことを証する情報を提供しなくてもよいのです。 (1) Cを権利者とする抵当権設定登記 Bを権利者とする Cを権利者とする Bの抵当権設定の ――●――――――――●――――――――――――――●――――→ (1)の場合,Bの仮登記に基づく本登記がなされても,Cの抵当権設定の登記は抹消されません。Bの仮登記に基づく本登記がなされたことによって,第一順位=B,第二順位=Cとなるだけで,Cの抵当権が否定されるわけではありません。そのためCの承諾を証する情報は不要になっています。 (2) D名義への売買による所有権移転登記 Bを権利者とする A名義からD名義への Bの抵当権設定の ――●――――――――●――――――――――――――●――――→ (2)の場合,Bの抵当権設定の仮登記に基づく本登記がなされても,D名義への売買による所有権移転登記は抹消されません。Dは抵当権のついた不動産を買ったということになるだけでDの所有権が否定されるわけではありません。そのためDの承諾を証する情報は不要になっています。 |
【Part-6 仮登記の抹消】
9.「仮登記の抹消は,申請書に仮登記名義人の承諾書を添付した場合には,仮登記義務者が単独で申請することができる。」(H10-15-4) |
【正解:○】 ◆仮登記の抹消の登記申請 ほかの権利の登記と同じように,仮登記された権利が消滅した場合や当初から存在していなかった場合は,仮登記の抹消の登記をすることができます。(不存在・無効・取消・解除・権利放棄・消滅時効・混同・条件不成就など) 仮登記の抹消の登記申請の場合でも,共同申請が原則です。(本肢では,仮登記義務者が登記権利者,仮登記名義人が登記義務者になります。) しかし,以下の場合は単独申請することができます(不動産登記法・110条,登記令・8条1項8号,)。
ここでの『登記上の利害関係人』とは,仮登記が本登記されると自己の権利が否定されたり不利益を受ける者をいい,仮登記義務者もこの中に含まれています。仮登記義務者も「仮登記名義人の承諾を証する情報または登記名義人に対抗できる裁判があったことを証する情報」を添付すれば,仮登記抹消の登記を単独申請できます。 したがって本肢は○です |
▼仮登記の抹消登記は主登記でなされ,徳川家康の仮登記は下線によって抹消され,
仮登記の余白も抹消されます。
【権利部 (甲区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 織田信長 |
2 - |
所有権移転 請求権仮登記 ------------ |
・・ | 年月日 売買予約 -------- |
権利者 徳川家康 -------- |
余白抹消 | 余白抹消 | 余白抹消 | 余白抹消 | |
3 | 2番仮登記抹消 | ・・ | 年月日 合意解除 |
余白 |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す。
●権利に関する登記申請で,登記識別情報が必要な場合 |
権利に関する登記で,共同申請により登記申請する場合のほかに,政令で定める登記申請として,登記識別情報が必要なのは,以下の五つです(登記令・8条1項4号〜8号)。
・仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消 ・所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消 ・質権または抵当権の順位の変更の登記 −以下は覚える必要なし。− ・共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記 ・根抵当権の共有者が民法394条1項の但書の定めを登記するとき <以上の五つに該当するものでも,確定判決による登記では,登記識別情報は不要です。> |