Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記 管轄登記所 改正対応
●メッセージ |
管轄登記所に関する問題は,これまでに何問か出題歴があります。ここでは過去問から予想される出題項目をまとめました。(宅建試験に近いヒッカケ問題を土地家屋調査士の問題からも収録。) |
管轄登記所に関する次の記述は,○か,×か。 |
1.「登記所の管轄区域は行政区画を基準として法務大臣が定めているので,その管轄の定めが変更されない限り,特定の土地の管轄登記所が変更されることはない。」 |
2.「二つの登記所の管轄区域にまたがって建っている建物の表題登記の申請は,双方の登記所にそれぞれ申請しなければならない。」 |
3.「建物が二つの登記所の管轄区域にまたがっている場合には,いずれか先にその建物の表題登記の申請がされた登記所が管轄登記所になる。」 |
4.「A登記所の管轄区域に所在する建物の増築によりB登記所の管轄区域にまたがることとなった場合における建物の表題部の変更の登記の申請は,いずれの登記所にもすることができる。」 |
5.「A登記所の管轄区域に存する建物の表示に関する登記の申請がB登記所にされたときは,B登記所は,その事件をA登記所に移送しなければならない 。なお,管轄登記所の転属等はないものとする。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | × | × | × |
× |
1.「登記所の管轄区域は行政区画を基準として法務大臣が定めているので,その管轄の定めが変更されない限り,特定の土地の管轄登記所が変更されることはない。」(土地家屋調査士・平成4年) |
【正解:×】 ◆管轄区域の変更 特定の土地の管轄登記所が変更になることがあります。理由としては ・法務大臣による管轄の定めの変更 (行政区画に変更はないが,登記所の統廃合・新設等により,登記所の管轄区域が変わる場合) ・境界の変更等で行政区画に変更があって管轄登記所も変更 (行政区画の変更により,ある登記所の管轄区域にあった行政区画の全部または一部が別の登記所の管轄する行政区画に合併される場合) などのためです。 〔例〕 法務大臣による管轄の定めの変更 A市は登記所・甲の管轄だったが, 行政区画に変更 その土地はA市に属していたが |
2.「二つの登記所の管轄区域にまたがって建っている建物の表題登記の申請は,双方の登記所にそれぞれ申請しなければならない。」(宅建・平成3年-問16-肢3) |
【正解:×】 ◆管轄区域がまたがっている場合の申請 建物が二つの登記所の管轄区域にまたがって建築された場合において,法務大臣,法務局の長,又は地方法務局の長によって管轄登記所が指定されているときはその管轄登記所に申請します(不動産登記法・6条2項)。 また、建物が二つの登記所の管轄区域にまたがって建築された場合に管轄登記所が指定されていないときは、建物の表題登記の申請は,いずれか一つの登記所にすることができます(不動産登記法・6条3項)。 どちらにも申請しなければいけないというのではありません。 |
●類題 |
「二つの登記所の管轄区域にまたがって新築された建物の表題登記の申請は,床面積の占める割合の多い部分の存在する土地を管轄する登記所にしなければならない。」(土地家屋調査士・昭和63年) |
【正解:×】
妙に説得力のある表現だが,×。下記は同工異曲の問題例。 数個の登記所の管轄区域にまたがって建築された建物の表題登記は,建物の主要な部分が存する土地を管轄する登記所に申請しなければならない。(土地家屋調査士・昭和50年) |
「建物が二つの登記所の管轄区域にまたがって建築された場合における建物の表題登記の申請は,いずれの登記所にもすることができる。」(土地家屋調査士・平成9年) |
【正解:○】 |
3.「建物が二つの登記所の管轄区域にまたがっている場合には,いずれか先にその建物の表題登記の申請がされた登記所が管轄登記所になる。」(土地家屋調査士・昭和56年) |
【正解:×】 ◆管轄登記所の確定 先に申請を受けた登記所が管轄登記所になるのではありません。 建物が数個の登記所の管轄区域にまたがって存在する場合には,それらの登記所を監督する法務局長または地方法務局長もしくは法務大臣の指定を受けて初めて管轄登記所が確定します(不動産登記法・6条2項)。 また、管轄登記所が指定されていないときは、建物の表示の登記の申請は,いずれか一つの登記所にすることができます(不動産登記法・6条3項)。 |
●類題 |
「二つの登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記記録は,どちらの登記所においても備えられている。」(宅建・昭和63年・問15) |
【正解:×】 |
4.「A登記所の管轄区域に所在する建物の増築によりB登記所の管轄区域にまたがることとなった場合における建物の表題部の変更の登記の申請は,いずれの登記所にもすることができる。」(土地家屋調査士・平成9年) |
【正解:×】 ◆増築後の管轄登記所 増築後の建物も,もともとの登記所の管轄区域にあるとされています。 したがって,本肢では,A登記所に,増築による建物の表示の変更の登記を申請します。 |
5.「A登記所の管轄区域に存する建物の表示に関する登記の申請がB登記所にされたときは,B登記所は,その事件をA登記所に移送しなければならない 。なお,管轄登記所の転属等はないものとする。」(土地家屋調査士・昭和56年) |
【正解:×】 ◆管轄を誤って申請を受けたとき → 却下 管轄に属さない不動産の登記の申請は却下しなければならず(不動産登記法・25条1号),本肢のB登記所は,却下するだけでその申請事件を管轄登記所に移送することはできません。 |
●関連問題 |
「建物の新築による建物の表題登記は,管轄を誤って登記されたものであっても,登記が完了すれば,職権によって抹消されることはない。」(宅建・平成5年・問16・肢1) |
【正解:×】
◆管轄を誤って登記されたとき 管轄に属さない不動産の登記の申請は“却下”されることになっていますが(不動産登記・25条1項),不動産の表示に関する登記は,登記官が職権ですることができるので,それによって処理されることになります(不動産登記法・28条)。 <参考>権利に関する登記での職権による抹消 登記官は,登記を完了した後に登記が管轄違いの登記であることを発見したとき,管轄違いに間違いがないかどうかを,登記権利者(登記をして「得」する人),登記義務者(登記をして「損」する人)及び登記上利害関係を有する第三者に対して,「1カ月を超えない期間」を定め,その期間内に異議を述べないときは登記を抹消する旨を通知しなければなりません(不動産登記法・71条1項,登記規則・153条〜154条,準則107条〜110条)。)。 |
●不動産登記規則−移送− |
(管轄転属による登記記録等の移送) 第32条 不動産の所在地が甲登記所の管轄から乙登記所の管轄に転属したときは、甲登記所の登記官は、当該不動産の登記記録(共同担保目録及び信託目録を含む。次項において同じ。)並びに地図等及び登記簿の附属書類(電磁的記録に記録されている地図等及び登記簿の附属書類を含む。)を乙登記所に移送するものとする。 2 前項の場合において、甲登記所の登記官は、移送した登記記録並びに電磁的記録に記録されている地図等及び土地所在図等を閉鎖するものとする。 (管轄区域がまたがる場合の移送等) 2 登記官は、前項の規定により事件を移送したときは、申請人に対し、その旨を通知するものとする。 3 法第6条第2項 の登記所に指定された登記所の登記官は、当該指定に係る不動産について登記を完了したときは、速やかに、その旨を他の登記所に通知するものとする。 4 前項の通知を受けた登記所の登記官は、適宜の様式の帳簿にその通知事項を記入するものとする。 |