Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記 賃借権・地上権・地役権と登記 改正対応
賃借権・地上権・地役権と登記に関する次の記述は,○か,×か。 |
1.「賃借権設定の仮登記は,登記記録中権利部の甲区に記載される。」 |
2.「地上権の設定の登記がされている土地の分筆の登記は,所有権の登記名義人又は地上権者が申請することができる。」 |
3.「地役権設定の登記の申請は,要役地及び承役地の双方に所有権の登記がされている場合でなければ,することができない。」 |
4.「承役地である地役権の登記がある土地と地役権の登記がない土地を合併する合筆の登記をすることはできない。」 |
5.「承役地についてする地役権の登記がある土地の分筆の登記を申請する場合において,分筆後の土地の一部に地役権が存続するときは,申請情報と併せて,当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報及び地役権図面を添付情報として提供しなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | × | ○ | × | ○ |
1.「賃借権設定の仮登記は,登記記録中権利部の甲区に記載される。」(平成2年・問16) |
【正解:×】 ◆相当区の区別 賃借権設定の仮登記は,所有権以外の権利に関するものなので,相当区は乙区です(不動産登記規則・4条4項)。 |
●類題 |
1.「賃借権に関する登記事項は,登記記録中権利部の甲区に記録される。」(昭和58年・問15) |
【正解:×】
◆賃借権の登記 賃借権の登記事項は乙区に記載されます。 ▼賃借権設定の登記は,賃借人を登記権利者,賃貸人を登記義務者として共同申請します。ただし,賃貸人は,特約がない限り,賃借権の登記をする義務を負うものではありません。(判例) ▼土地の賃借権,地上権,永小作権の区別をして基本書で調べておきましょう。 <Hint> 借地借家法の「借地権」は,建物の所有を目的とする「地上権または土地の賃借権」と定義されています。 |
2.「地上権にかかる登記名義人の氏名等の変更の登記は,甲区に記録されている。」(昭和56年・問16) |
【正解:×】
◆地上権の登記 地上権の登記事項は乙区に記録されます。「地上権にかかる登記名義人の氏名等の変更の登記」も乙区で,地上権設定の主登記に付記登記されます。 |
【賃借権の登記の記載例】
【権利部 (乙区)】 (所有権以外の権利に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・ 受付番号】 |
【原因】 | 【権利者 その他の事項】 |
1 | 抵当権設定 | 平成16年1月26日
第○号 |
平成16年1月23日 金銭消費貸借 同日設定 |
債権額 利息 損害金 債務者 抵当権者 |
2 | 賃借権設定 | 平成16年5月13日
第△号 |
平成16年5月12日 設定 |
借賃 支払期日 存続期間 敷金 特約 賃借権者 |
3 | 2番賃借権 の先順位 抵当権に 優先する 同意 |
平成16年5月18日
第□号 |
平成16年5月14日 同意 |
【地上権の登記の記載例】
【権利部 (乙区)】 (所有権以外の権利に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・ 受付番号】 |
【原因】 | 【権利者 その他の事項】 |
1 | 地上権設定 | 平成16年2月13日
第△号 |
平成16年2月6日 設定 |
目的 建物所有 存続期間 地代 支払期 特約 地上権者 |
2.「地上権の設定の登記がされている土地の分筆の登記は,所有権の登記名義人又は地上権者が申請することができる。」(平成8年・問15) |
【正解:×】 ◆地上権設定登記のある土地の分筆 土地の分筆の登記申請は,当然のことながら,その土地の登記記録の表題部所有者または所有権の登記名義人でなければできません(不動産登記法・39条1項)。 本肢は,<所有権の登記名義人又は地上権者が申請することができる>としているので,誤りです。 こんな見かけ倒しのオドシとスカシの問題で引っかからないようにしましょう。
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●賃借権と地上権の設定登記 |
賃借権の設定登記と地上権の設定登記の申請において,必ず申請書に記載しなければいけないものがあります。
賃借権の設定登記の申請 → 借賃 地上権の設定登記の申請 → 地上権設定の目的 |
3.「地役権設定の登記の申請は,要役地及び承役地の双方に所有権の登記がされている場合でなければ,することができない。」(平成9年・問15) |
【正解:○】 ◆地役権の登記 地役権(民法第280条)とは,他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利のことで,具体的には公道へ出る近道のため他人の土地を通行する通行地役権などがあります。 また,地役権とは所有権以外の権利であるため,承役地および要役地の乙区に記載されるものです(不動産登記規則4条4項)。 しかし,乙区欄への記載は,甲区に所有権の登記があってはじめてできるものであり,したがって,地役権の登記は,承役地および要役地の双方に所有権の登記がなければできません(不動産登記法第80条3項,1項,4項)。 |
【承役地の登記例】
【権利部 (乙区)】 (所有権以外の権利に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 地役権設定 | 年月日
第○○号 |
年月日
設定 |
目的 通行 範囲 北側15m 要役地 港区赤坂・・ 地役権図面 第○号 |
* 地役権の範囲が承役地全部のときは,「範囲 全部」と記載し,地役権図面はない。
【要役地の登記例】
【権利部 (乙区)】 (所有権以外の権利に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 要役地
地役権 |
余白 | 余白 | 承役地 港区赤坂・・ 目的 通行 範囲 北側15m 年月日 登記 |
4.「承役地である地役権の登記がある土地と地役権の登記がない土地を合併する合筆の登記をすることはできない。」(平成11年・問11) |
【正解:×】 ◆合筆できる−承役地の登記がある土地 『承役地である地役権の登記がある土地』と『地役権の登記がない土地』は,合筆の登記をすることができます。 「所有権の登記」以外の「権利の登記」がある土地を合併(合筆)することは原則としてできませんが,次の場合は例外として合併できます。 ・承役地の登記がある場合 (要役地の登記があるときは合併できない。) ・抵当権設定登記の登記原因と登記原因の日付,登記の目的,受付番号が同じ場合 |
●類題 | ||||
「要役地についてする地役権の登記のある甲地と所有権の登記以外の権利に関する登記のない乙地との合筆の登記の申請は,することはできない。」(土地家屋調査士・平成8年) |
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【正解:○】
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5.「承役地についてする地役権の登記がある土地の分筆の登記を申請する場合において,分筆後の土地の一部に地役権が存続するときは,申請情報と併せて,当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報及び地役権図面を添付情報として提供しなければならない。」(平成12年・問15) |
【正解:○】 ◆承役地についての地役権が分筆後の土地の一部に残るとき 承役地についてする地役権の登記がある土地の分筆または合筆の登記を申請するときには,土地の分割後または合併後に,土地の一部に地役権が存続するときは,所定の申請情報と併せて,添付情報として,当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報又は当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報及び地役権図面を提供しなければいけません。(不動産登記令・3条13号,7条1項6号,別表8項)
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●類題 |
「一筆の土地の一部に地役権の存する土地を,地役権の存する部分と存しない部分とに分割する分筆の登記の申請書には,地役権図面を添付することを要する。」(土地家屋調査士・平成2年) |
【正解:×】 ヒッカケ問題
分割後の土地の一部に地役権が存在する場合には,申請情報で当該地役権設定の範囲を提供し,当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報及び地役権図面を提供する必要がありますが,本肢のように「分割後の土地の全部に地役権が存在するところ」と「存在しないところ」に分ける場合では『当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報及び地役権図面は不要』です。 |