Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記 登記申請に必要な添付情報 改正対応
登記申請の添付情報に関する次の記述は,○か,×か。 |
1.「同一の登記所の管轄に属する数個の不動産に関する登記を申請する場合,登記原因および登記の目的が同一であるときに限り,同一の申請情報で登記を申請することができる。」 |
2.「登記原因について第三者の許可を要するときは,原則として,登記申請にあたって当該第三者の許可書の添付が必要である。」 |
3.「所有権の登記名義人が登記義務者として登記を書面申請する場合に提出する印鑑証明書は,その作成後6カ月以内のものでなければならない。」 |
4.「権利に関する登記を申請する場合には,申請人は,法令に別段の定めがある場合を除き,その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。」 |
5.「売買の目的たる土地の所在及び地番の表示がされていない売買契約証書は,登記原因を証する書面とはならない。」(昭和54年・問13) |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
○ | ○ | × | ○ | ○ |
●定義 (不動産登記法・2条10号〜13号) |
■表題部所有者 所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者をいう。 ■登記名義人 登記記録の権利部に、次条各号に掲げる権利について権利者として記録されている者をいう。 ■登記権利者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者をいい、間接に利益を受ける者を除く。 ■登記義務者 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く。 |
1.「同一の登記所の管轄に属する数個の不動産に関する登記を申請する場合,登記原因および登記の目的が同一であるときに限り,同一の申請情報で登記を申請することができる。」(平成元年・問15) |
【正解:○】 ◆『権利ごとに申請』(一件一申請主義)の例外 登記の申請は,登記の目的及び登記原因に応じ,1不動産に関する1個の権利ごとにするのが原則です(登記令・4条1項本文)。 しかし原則に従えば,例えば,AがBから同一の登記所の管轄内にある10筆の土地を取得して登記の申請をするとき,土地の表示以外はまったく同一内容の申請書を10通作成しなければならないことになります。 このような場合,申請者及び登記官の事務処理上の要請により,同一の登記所の管轄内にある数個の不動産に関する登記を申請する場合,“登記原因及び登記の目的が同一のときに限り”,同一の申請情報をもって登記の申請ができます(登記令・4条1項但書)。
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2.「登記原因について第三者の許可を要するときは,原則として,登記申請にあたって当該第三者の許可書の添付が必要である。」(昭和59年・問15,類・昭和63年・問16) |
【正解:○】 ◆第三者の許可書 登記を申請するときに,登記原因について第三者の許可・同意・承諾を要するときは,当該第三者から許可等があったことを証する情報を提供することが必要です。(登記令7条1項5号ハ) |
3.「所有権の登記名義人が登記義務者として登記を書面申請する場合に提出する印鑑証明書は,その作成後6カ月以内のものでなければならない。」(平成元年・問15) |
【正解:×】 ◆登記義務者が提出する印鑑証明書は作成後3ヵ月以内 書面申請(磁気ディスクをもって申請書を提出する場合を除く。)では,申請人(又は,その代表者・代理人)は,申請情報を記載した書面に記名押印して,法務省令で定める場合を除いて,記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(作成後3月以内)を添付しなければなりません(登記令・16条2項)。
なお,印鑑証明書が作成後「3ヵ月以内」のものに限られているのは,印鑑証明書が作成されてから長期間経過している場合,印鑑の紛失事故その他によって改印されることもあるからです。
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●不動産登記令 −書面申請− |
(申請情報を記載した書面への記名押印等) 第16条 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。 2 前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第252条の19第1項 の指定都市にあっては、市長又は区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。 3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。 4 官庁又は公署が登記の嘱託をする場合における嘱託情報を記載した書面については、第二項の規定は、適用しない。 5 第12条第1項及び第14条の規定は、法務省令で定めるところにより申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出する方法により登記を申請する場合について準用する。 (電子署名) 2 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。 (電子証明書の送信) |
●ヒッカケ問題 |
「不動産に関する権利を取得した者が登記権利者として登記を書面申請するとき,その住所地の市町村長または区長の作成した印鑑証明書を提出しなければならないが,当該印鑑証明書は作成後3ヵ月以内のものに限られる。」 |
【正解:×】 登記名義人が「登記義務者」として書面申請するとき,その住所地の市町村長又は区長の作成した印鑑証明書を提出します。 しかし,登記“権利”者の印鑑証明書は不要です。 つまり,印鑑証明書を提出させる趣旨は,登記されることにより利益が失われる「登記義務者」本人の申請意思等を形式的に確認する(ウラヅケが欲しい)ためであり,登記によって対抗力を取得して利益を得る登記権利者の登記意思を,ワザワザ印鑑証明書を提出させてウラを取っても何の意味もありません。 なお,印鑑証明書は,作成してから長期間経過している場合,印鑑の紛失事故その他によって改印されることもあり,登記義務者が提出する印鑑証明書は作成後「3ヵ月以内」のものに限られています(〃第44条)。設問文のここの部分だけ読んで「アッ、○だ!」などど早トチリしないように気をつけましょう。 |
4.「権利に関する登記を申請する場合には,申請人は,法令に別段の定めがある場合を除き,その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。」(平成4年・問14) |
【正解:○】 ◆登記原因証明情報の提供 「登記原因を証する情報(不動産登記法・61条)」とは,登記すべき物権変動の法律行為の成立を証明する情報のことで,具体的には「売買契約書」などが該当します。 登記原因証明情報が提供されることにより,登記官は,登記原因を確認して登記することができます。 |
5.「売買の目的たる土地の所在及び地番の表示がされていない売買契約証書は,登記原因を証する書面とはならない。」(昭和54年・問13・肢2) |
【正解:○】 ◆登記原因を証する書面−売買契約書に所在や地番が表示されていないとき
登記原因証明情報(登記原因を証する書面等)とは,売買契約書・贈与契約書・抵当権設定契約書・判決書正本など,登記する物権変動を証する書面です。 この登記原因証明情報は,申請書に記載されている登記事項と不動産の表示が一致していなければなりません。 したがって,『売買の目的たる土地の所在及び地番の表示がされていない』売買契約証書は,売買の目的が確定されているとは言えず,登記原因を証する書面とはなりません。 |
●権利に関する登記申請で,登記識別情報が必要な場合 |
権利に関する登記で,共同申請により登記申請する場合のほかに,政令で定める登記申請として,登記識別情報が必要なのは,以下の五つです(登記令・8条1項4号〜8号)。
・仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消 ・所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消 ・質権または抵当権の順位の変更の登記 −以下は覚える必要なし。− ・共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記 ・根抵当権の共有者が民法394条1項の但書の定めを登記するとき <以上の五つに該当するものでも,確定判決による登記では,登記識別情報は不要です。> |