Brush Up! 権利の変動篇
地役権の過去問アーカイブス 昭和54年
観光旅館を経営しているAは,旅館からの眺望を確保するため,B及びCの土地について3階以上の建築物を建てさせない旨の地役権を設定したいと思っている。次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和54年) |
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1.「Cの土地はAの旅館の敷地と隣接していないのでCの土地を承役地とする地役権は設定できない。」 |
2.「Cの土地を要役地,Bの土地を承役地とする通行地役権が設定されている場合には,重ねてBの土地を承役地とする地役権は設定できない。」 |
3.「眺望を目的とする地役権は設定できない。」 |
4.「B及びCの土地に地役権を設定するについて,地役権の対価を無償とする内容のものであっても有効である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「Cの土地はAの旅館の敷地と隣接していないのでCの土地を承役地とする地役権は設定できない。」 |
【正解:×】 ◆隣接している必要はない 地役権は,当事者の合意で設定されるものなので,当事者の合意があれば,利用する側の土地(要役地)と利用される側の土地(承役地)が隣接していなくても,設定することができます。 ▼要役地の一部には地役権を設定することはできないが,承役地の一部に地役権を設定することはできる。(282条2項)例えば,通行地役権は通常は土地の一部の上に成立している。 |
2.「Cの土地を要役地,Bの土地を承役地とする通行地役権が設定されている場合には,重ねてBの土地を承役地とする地役権は設定できない。」 |
【正解:×】 ◆併存可能
地役権は,承役地を排他的に占有する権原ではないので,同一の土地を承役地とする複数の地役権が併存することは可能です。 したがって,「Cの土地を要役地,Bの土地を承役地とする通行地役権」が設定されていても,重ねて「Aの土地を要役地,Bの土地を承役地とする眺望地役権」を設定することができます。 |
3.「眺望を目的とする地役権は設定できない。」 |
【正解:×】 ◆眺望のための地役権 地役権は,『設定行為をもって定めた目的に従って他人の土地を自己の便益に供する権利』であり,公の秩序に関する規定〔相隣関係〕に違反しないかぎり,土地の使用目的に制限はありません。(280条) 承役地に,要役地の眺望や日照を妨げる建物を建築しないことを目的とする地役権も設定することができます。(この場合は承役地側の不作為が地役権の内容となる。) |
4.「B及びCの土地に地役権を設定するについて,地役権の対価を無償とする内容のものであっても有効である。」 |
【正解:○】 ◆対価を無償とする地役権 地役権の対価や存続期間については民法上規定がないので,当事者の合意によって自由に定めることができます。〔地役権の登記でも,対価や存続期間は登記事項にはなっていない。地上権の登記では,対価や存続期間の定めがあれば登記しなくてはならない。〕 したがって,地役権の対価を無償とする内容のものであっても有効です。 |
●通行地役権と囲繞地通行権の違い | ||||||||||||||||||||||||
第三者が承役地を時効取得したとき,通行地役権は原則として消滅しますが, 囲繞地通行権は袋地の所有ということから発生し契約を要しないため,この違いが生まれます。通行地役権は当事者の合意で成立しますが,時効取得は原始取得なので前の権利者が設定した権利は引き継がれないからです。 ※通行地役権を約定通行権,囲繞地通行権を法定通行権ということがあります。囲繞地通行権がありながら,通行地役権を設定している場合がありますが,囲繞地通行権では最低限度〔必要最小限〕のものしか認められないのに対し,通行地役権では当事者の合意で自由に通行の場所&方法を決めることができるためです。 |