Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
地上権の消滅の参考問題
※この参考問題は,民法の難化対策のため設けたもので,余力のある方対象です。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | × |
次のそれぞれの記述は、民法、借地借家法の規定および判例によれば○か、×か。
1.「地上権者が土地を使用していないときでも、その地上権に抵当権が設定されていれ
ば、地上権は、時効によって消滅することはない。」
【正解:×】 地上権は、権利を行使しない状態が20年間継続することにより消滅します。(167条2項) ▼用益物権の地上権・永小作権・地役権は、消滅時効の対象になります。 ▼留置権・先取特権・相隣権、所有権・占有権、共有物分割請求権は消滅時効の対象になりません。 |
2.「地上権者がその土地の上に有する建物を第三者に賃貸している場合、地上権者と
土地所有者が地上権を合意により消滅させても、これを建物の賃借人に対抗することは
できない。」(類題頻出)
【正解:○】 地上権設定者(土地の所有者) この関係を地上権ではなく土地の賃貸借に置き換えた類似のケースで、判例では、 「土地賃貸人と賃借人の合意で賃貸借契約を解除しても、特段の事情がない限り、その解除を、借地上の建物の賃借人に対抗できない」(最高裁・昭38.2.21) としています。 この判例の趣旨からすると、 「地上権者と土地所有者が地上権を合意により消滅させても、これを建物の賃借人に対抗することはできない」 と考えられます。 |
3.「Aの所有する土地に地上権を有するBが、その土地の所有権をAから譲り受けた
場合、地上権は原則として消滅する。」
【正解:○】 本設問のように、2つの法律上の地位が同一人に帰することを「混同」といいます。民法では、併存させておく実益がないかぎり、法律的地位の一方が消滅するとしています。所有権と制限物権が混同したときは制限物権が消滅します。(民法179条1項) 例・Xが所有する土地にYが抵当権を有していて、YがXからその土地を譲渡されると、Yは抵当権と所有権をもつことになり、制限物権である抵当権が消滅します。 本設問では、地上権者が譲渡によって所有権の地位も得ており、同一人物が地上権と所有権を持つことになりました。この場合、制限物権である地上権が消滅します。 |
4.「Aの所有する土地にBが地上権を有しており、そのBの地上権に対してCが抵当権
を有する場合に、Bがその土地の所有権をAから譲り受けると、地上権は原則として
消滅する。」
【正解:×】 所有権と制限物権が混同したときは制限物権が消滅します。 しかし、その物またはその制限物権が第三者の権利の目的である場合は、混同による制限物権の消滅はないとされています。(民法179条1項但し書) Bの地上権にCの抵当権が設定されている場合では、Bが所有権を取得しても、地上権は混同によって消滅しません。(Bの地上権が消滅すると抵当権者Cの利益を害することになるからです。) |
●地上権の消滅と抵当権 |
0) 地上権に抵当権が設定されていて、地上権が地代不払いで消滅したとき →抵当権は消滅する 1) 地上権に抵当権が設定されていて、地上権が放棄・合意解除されたとき →398条 放棄・合意解除を抵当権者には、対抗できない 2) 借地上の建物に抵当権が設定されていて、借地権が放棄・合意解除されたとき →大審院・大正11.11.24 放棄・合意解除を抵当権者には、対抗できない 3) 地上権者が所有する借地上の建物に抵当権が設定されていて、地上権者がその建物を滅失したとき →抵当権は消滅する |