Brush Up! 権利の変動編
正解・解説
債権:債権者代位権に関する問題1
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
【ナビゲーション】 解答のポイント: 債権者代位権は、債権を保全するためにある。 債権者代位権は,裁判外でも裁判でも行使することができますが,判例によれば、債権者の権利行使が、“保全に適切でかつ必要である限りにおいて”、とされています。(最高裁・昭和44.6.24) 【債権者代位権の認められる要件】→肢1・肢2 1、債務者の権利を代わって行使することが債権の保全に必要だということ。 →債務者の無資力を要件とし,債務者の資力が債権者の債権を弁済するのに十分ではないときに代位行使が認められる。(民法423条1項本文参照) 2、債務者が未だその権利を行使していないこと。 3、債権が弁済期に達することは原則として必要だが、裁判上の代位は弁済期前でもすることができる。(民法423条2項参照) 4、債務者の一身専属権でないこと。(民法423条1項但書参照) 【債権者代位権の転用】→肢3・肢4 債権者代位する場合,被保全債権が金銭債権であることが必要ですが,例外として以下のもの〔金銭債権以外の債権〕は特定債権の保全のために債権者代位権を転用することが判例によって認められています。 ・所有権などの移転登記請求権を代位する(大審院・明治39.11.21) →肢3 ・賃借人が賃貸人の妨害排除請求権を代位する(最高裁・昭和29.9.24) →肢4 ・抵当権侵害に対して抵当権者が土地所有者の妨害排除請求権を代位する場合〔第三者が抵当不動産を不法占拠して交換価値の実現が妨げられ抵当権の実行が困難なとき〕(最高裁・平成11.11.24) |
債権者代位権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っている
ものはどれか。
1.「Aが妻Bに不動産を贈与した場合,Aの債権者Cは,Aの夫婦間の契約取消権
を代位行使することができる。」
【正解:×】 ◆一身専属権は債権者代位することができない C (Aの債権者) 債権者は、自らの債権を保全するために、その債務者が第三者に対して有する権利を、債務者に代わって行使することができます(民法第423条1項)。この行使できる権利を「債権者代位権」といいます。 ただし、債務者の一身に専属する権利(親族間の扶養請求権・相続人の遺留分減殺請求権など、その者にしか行使できない権利)は除外され(〃但書き)、これには夫婦間の契約の取消権も含まれます。 つまり、婚姻中の夫婦間においては、愛情と信頼の結びつきが基本となっている(あくまでもタテマエですよ!)ものであり、その間の契約を法律によって強制することは、婚姻の円満を損なうものであり、その契約はいつでも「当事者の一方」から取消しが可能という規定(第754条)はありますが、第三者の債権者が、その夫婦間の取消権を代位して行使することは、その夫婦間にキレツを生じさせることにもなるため、できないということです。 ●参考 : 債権者取消権(詐害行為取消権) なお、夫婦AB間に何らかの「タクラミ」があり、このことに関して債権者Cが悪意の場合、債権者Cには、詐害行為取消権(第424条)によって、裁判所に当該贈与契約の取消を請求できる余地があります。 |
2.「DのEに対する債権の弁済期が到来していない場合,自己の債権を保全するため,
Dは,裁判上の代位によりEのFに対する債権を行使することができる。」
【正解:○】 ◆債権者代位するには被保全債権が弁済期にあることが必要 D(債権者)→E(債務者) E(債権者)→F(債務者) 債権の弁済期が“到来していない”場合は、原則として取立て請求をすることができません(第423条2項)。→被保全債権が弁済期にあることが債権者代位の要件。 しかし、弁済期が到来していない場合であっても、債権の保全が不可能又は困難を生ずるおそれがある場合には、その者の保護の必要もあり、債権者は、正当性を担保するため、「裁判上」において、債権者代位権を行使することもできます(〃但書き)。 ●まとめ 被保全債権が弁済期にあることが債権者代位の要件 しかし,裁判上の代位や保存行為の場合は,被保全債権が弁済期になくてもよい。
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3.「土地がGからH,Hから I へと譲渡された場合において,登記がなおGにあるとき
は, I は,HのGに対する登記請求権を代位行使することができる。」
【正解:○】 ◆債権者代位権の転用・1 中間者の登記請求権を代位する G ― H ― I (登記) (未登記) 登記がGのところにあり,Iが自分に登記を移したいときは,2つの方法があります。 (1) Gの登記をI に移転登記せよという判決によって中間省略登記 〔裁判でG・H・I の合意が認定されることが必要。〕←中間者Hの合意があるとき。Hの同意なしにIが直接Gに移転登記の請求をすることはできない。 (2) Hの登記請求権を I が代位行使する 不動産の買主 I は、売主Hの現登記名義人Gに対する移転登記請求権を、代位行使することができます。(大審院・明治43.7.6) ●無資力要件の例外 肢3の登記請求権の代位,肢4の賃貸人の妨害排除請求権の代位のような特定の給付を求めるような特定債権の保全の場合の債権者代位権の転用では債務者の資力の有無は問われていません。 |
4.「J の所有地をKが賃借している場合において,Lが不法占拠したときは,Kは,
J の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することができる。」
【正解:○】 ◆債権者代位権の転用・2 賃貸人の妨害排除請求権を代位する J (賃貸人) これも債権者代位権の転用です。判例によれば、不動産の不法占拠者Lに対し、賃借人Kが所有者 J に代位して妨害排除請求権を行使できます。(大審院・昭和4.12.16) <参考> |