Brush Up! 権利の変動編

正解・解説

債権譲渡の過去問アーカイブス 平成5年・問5


【正解】

×

AがBからBのCに対する貸金債権の譲渡を受けた。この場合、次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。(平成5年・問5)

1.「その債権の譲渡についてCの承諾がないときは、BからCに債権譲渡の通知をし

ないと、Aは、Cから債権の取立てをすることができない。」(頻出問題)

【正解:
               債権譲渡
 (債権者、譲渡人)―――――→(譲受人)  
  | BからCへ債権譲渡の通知
 (債務者)
  CがB or Aに、承諾する。

 指名債権の譲渡は、譲渡人(B)がこれを債務者(C)に“通知”をするか、債務者(C)がこれを“承諾”しなければ、譲受人(A)は、指名債権の譲渡を債務者(C)に対抗することはできません(民法第467条1項)。通知と承諾には、若干の法的効果の違いがありますが、譲受人の債務者への対抗要件としては、この二つのうちのどちらかが必要です。

 例えば、金を貸しているBが、金を借りているCに「Cさんへの貸金債権は、以降Aさんに譲ったからよろしくタノム」と“通知”をするか、Cが“承諾”すれば、BはCに対抗することができます。

 それらの通知または承諾がないのに、Aなる人物がCに、「Bから債権を譲り受けたので払ってください」といきなり請求してきても、Aのウソかも知れず、Cは拒絶できます。

<関連>

債権譲渡の“通知”または“譲渡”は、債務者以外の第三者に対しては、「確定日付のある証書」がなければ債権の譲渡を主張することができません(第467条2項)。

●債権譲渡について
 債権は原則として自由に譲渡できますが、次の場合は譲渡が制限されます。

譲渡禁止特約による制限(466条2項)

債権の性質により、債権譲渡が制限される、もしくはできないもの(委任者の債権、雇主の債権等、債権の同一性を維持させたままで移転できないもの)(466条1項但書)

法律により譲渡が禁止されているもの(民法の扶養請求権、労働基準法の災害補償請求権、健康保険法の保険給付請求権、恩給請求権など)

2.「CがBから債権譲渡の通知を受け、かつ、Aから支払の請求を受けた場合におい

ても、Cがその債権譲渡の通知を受けた時点においてBに対して既に弁済期の到来し

た債権を有しているときは、Cは、Aに対し相殺をもって対抗することができる。」(平成9年)

【正解:

◆債権譲渡の通知では、譲渡人に対して生じた事由を譲受人に主張できる

               債権譲渡
 (債権者、譲渡人)―――――→(譲受人)  
  | BからCへ債権譲渡の通知
 (債務者)

 債権の譲渡人(B)が債権譲渡の通知を出しただけで、まだ債務者(C)の手もとに届かない間に、債務者が譲渡人に対し、異議を申し立てる事情が生じた場合には、これらを債権の譲受人(A)に対して主張できます(第468条2項)。

 したがって、債務者(C)は、その通知のときにおいて既に相殺適状にある債権を譲渡人に対して有していれば、Cは譲受人Aに対して相殺をもって対抗することができます。(最高裁・昭和32.7.1)

●債権譲渡の通知と承諾の効力の整理
 通知 

 (異議をとどめる承諾)

 債務者は、『その通知を受けるまでに譲渡人に
 対して生じた事由』を、譲受人に主張できる

 異議を留める承諾では、承諾前に生じた事由

 異議をとどめない承諾  債務者は、『承諾前に譲渡人に対して生じた事由』
 を、善意の譲受人に主張できない

債務者が通知後に譲渡人に対する反対債権を取得しても、それをもって債務者が相殺することはできない(大審院・昭和9.9.10)

●関連問題
1.「債権が譲渡された場合において、債務者は、譲渡後であっても、その通知を受けるまでの間に譲渡人に弁済したときは、譲受人にその旨を対抗することができる。」
【正解:

               債権譲渡
 (債権者、譲渡人)―――――→(譲受人)  
  弁済↑↓BからCへ債権譲渡の通知
 (債務者)

  債務者が異議を留めない承諾をした場合は、その債務が弁済されていても、その弁済を債務者は譲受人に主張できませんでした。

 しかし、譲渡人が債務者に譲渡の通知をしただけのときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に弁済したときは、その弁済によって債務が消滅していることを譲受人に主張でき、譲受人に対抗することができます。

 弁済で譲受人に対抗できる          弁済   通知

      ―――――――――→ 時間軸

  弁済した後に、通知が到達。

 弁済で譲受人に対抗できない           通知   弁済

      ―――――――――→ 時間軸

  通知の到達の後に、弁済した。

3.「CがBの債権者Dの申立てによる差押命令の送達を受けたときは、その送達前に

Bから確定日付のある債権譲渡通知が届いていても、Cは、Dの取立てに応じなければ

ならない。」(関連 : 平成9年、12年)

【正解:×

◆債権譲渡の通知と差押命令の優劣

  D(差押債権者)
  |              債権譲渡
   B(債権者、譲渡人)―――――→A(譲受人)  
   | BからCへ債権譲渡の通知
   C(債務者)
     差押命令がCに到達

 Bから債権を譲り受けたAと、(Bの債権者Dの申立により)裁判所が発した差押命令との優劣の関係は、確定日付のある債権譲渡の到達と、差押命令の送達の日時の先か後(先後)によって決まり(第467条2項に関する判例)、この場合は債権譲渡の通知が先なので、債権譲渡が優先します。

     債権譲渡の通知   差押命令の送達

      ―――――――――――――――→ 時間軸

  債権譲渡の通知が、差押命令よりも早くCに到達した。

債権の差押えをした者とその同一債権の譲受人との間の優劣

 債権の差押通知が債務者に到達した日時と、確定日付のある債権譲渡通知が債務者に到達した日時の先後によって決する。(最高裁・平成5.3.30)

●差押について

  (差押債権者)
                
  (債権者) 裁判所から差押命令がBに送達  
   |
  (債務者) 裁判所から差押命令がCに送達。  

 差押は、差押債権者Dが裁判所に債権執行の差押命令の申立をして、裁判所は適法かどうか審査して、差押命令をB、Cに送達します。(民事執行法)

 差押命令が発せられると、差押の効力として、その債権の処分は禁止され、債権者Bは債務者Cからの弁済を受領する権限はなくなります。(債権の譲渡や免除もできなくなります。) もし、差し押さえられた債権に抵当権などの担保がついていれば、担保権も差し押さえられます。

 また、債務者Cも債権者Bへの弁済を禁じられます

差押の効力は、差押命令がCに送達された時に生じます。(民事執行法)

4.「CがB名義の債権譲渡通知を受領し、かつ、Aから支払の請求を受けた場合に

いて、Bが譲渡の事実を否認するときは、Cは、供託により、免責を受けることができる。」

【正解:

◆債権者が債権譲渡の事実を否定 → 供託       

               債権譲渡
 (債権者、譲渡人)―――――→(譲受人)  
  | B名義でCへ債権譲渡の通知
 (債務者)

 AがB名義の債権を譲り受けたと主張し、Bがその事実を否定するとき、債務者Cは、その受領した債権譲渡通知書はニセものかも知れないと疑うことになりますが、AまたはBに弁済しなければ、Cは債務不履行の責任を問われることにもなり、その場合のCは、法務局に所属する供託所に供託(弁済供託)する方法があります(第494条)。

<関連>

 債権者にとって受け取ることができない事情があるときや、弁済者に何の過失もないのに債権者がわからないときにも供託できます。

◎「債権者が受け取ることができない事情」とは

例)債権者が死亡して、未成年者(制限行為能力者)が相続をしたけれども、法定代理人がまだつけられていない。

◎「債権者が誰であるのかわからない」というのは

例1)債権者が死亡し、相続が起きたのだが、相続人が誰であるかはっきりわからない。

例2)債権者だと名乗るものが2人現れた。


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