Brush Up! 権利の変動篇

制限行為能力者の過去問アーカイブス 制限行為能力者と追認・同意 (昭和49年) 


制限行為能力者に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和49年)

1.「制限行為能力者の行った行為は,追認が行われることにより,確定的に有効となる。」

2.「成年被後見人は,法定代理人の同意を得れば,その範囲内において,有効な取引をすることができる。」

3.「被保佐人が土地,建物の売買等重要な取引行為をする場合には,保佐人の同意が必要である。」

4.「成年後見開始の審判,保佐開始の審判,及び補助開始の審判は,家庭裁判所によって行われる。」

【正解】

×

1.「制限行為能力者の行った行為は,追認が行われることにより,確定的に有効となる。」

【正解:

◆追認の効果

 未成年者・被保佐人・被補助人が保護者の同意を得ないで行った行為や成年被後見人が行った行為〔日常生活に関する行為を除く〕は,追認権者によって追認が行われることにより,以後取り消されて無効になる余地がなくなり,確定的に有効になります。(122条)

 追認されるまで,取り消しうる法律行為は一応有効でしたが,いつ取り消されるかわからない不安定なものでした。取消権を持っている者は,当該法律行為を有効のままにしておくこともできますし,また取消によって初めから無効なものにすることもできました。

 追認されることによって,この不安定な状態が解消されることになります。

追認できるのはいつか

 追認権者  追認できる時期
 保護者  【親権者・未成年後見人・成年後見人・保佐人・
  同意権を付与された補助人】

 追認する時期には制限なし(124条3項)

 行為能力を回復した後の 

 制限行為能力者 

 行為能力を回復した後でなければ,単独で追認はできない。
 (124条1項)

 ただし,成年被後見人の場合は行為能力者となった後だけで
 なく,その法律行為が取り消しうるものであることを知った後で
 なければならない。

 被保佐人,

 被補助人

 能力を回復していない間(被保佐人,被補助人である間)

 追認するには,保佐人・補助人の同意を必要とする。

2.「成年被後見人は,法定代理人の同意を得れば,その範囲内において,有効な取引をすることができる。」

【正解:×

◆成年後見人の同意があっても,取り消しできる

 成年後見人には,同意権はなく,仮に成年後見人が同意していたとしても,成年被後見人本人・成年後見人は日常生活に関する行為を除き原則として,常に取り消すことができます(9条)

なぜ『原則として』なのか? → 制限行為能力者の詐術による取消権の剥奪

 いくら制限行為能力者でも,自分が能力者だと相手方をダマした場合には,制限行為能力者を保護する必要はなく,取引の安全と相手方の救済のために,取り消すことはできなくなります(21条)これは,成年被後見人にも適用されます。

 成年後見人が取り消しできない場合

・日用品の購入その他日常生活に関する行為(9条但書) 平成12年改正施行で追加

・制限行為能力者ではないと,相手方に詐術を用いたとき(21条)

3.「被保佐人が土地,建物の売買等重要な取引行為をする場合には,保佐人の同意が必要である。」

【正解:

◆保佐人の同意を要する行為
 
−不動産その他重要なる財産に関する権利の得喪を目的とする行為

 不動産・株式の売買や多額の債権の譲渡など,重要な財産の権利の得喪を目的とする行為には,保佐人の同意が必要です。(13条1項3号)

 保佐人の同意を得ないでなされた場合,被保佐人本人・保佐人とも,取り消すことができます。

4.「成年後見開始の審判,保佐開始の審判,及び補助開始の審判は,家庭裁判所によって行われる。」

【正解:

◆開始の審判

 家庭裁判所は,一定の者の請求により,成年後見開始の審判,保佐開始の審判,及び補助開始の審判をすることができます。(7条,11条,15条)

請求することができる者

 本人・配偶者・四親等内の親族・検察官など。

●本人以外が請求するとき
 後見開始の申立て  本人の同意は不要
 保佐開始の申立て
 補助開始の申立て  本人の同意が必要

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