Brush Up! 権利の変動篇

制限行為能力者の過去問アーカイブス 被保佐人と連帯債務・保証債務 (昭和54年) 


A及びBは共同で別荘を購入することになり,分譲業者であるCと土地付建物の売買契約を締結し連帯債務を負うこととなった。ところがAは被保佐人であった。次の記述のうち誤りはどれか。(昭和54年)

1.「Aの売買契約締結行為について保佐人の同意を得ていないときは,AはCとの売買契約を取り消すことができ,この場合AC間の売買契約は初めから無効なものになる。」

2.「保佐人の同意を得ていないことを理由にAC間の売買契約が取り消された場合であっても,BC間の売買契約は有効であり,Bは単独で代金の全額について債務を負うことになる。」

3.「保佐人の同意を得ていないことを理由にAC間の売買契約が取り消されたので,AはBC間の売買契約について保証人となることとなった。Aが保証人となることについては,保佐人の同意を要せず有効に保証契約を締結することができる。」

■設問4.は法改正により出題当時と事情が異なるため,収録を見合わせました。

【正解】

1 2 3 4
○ ○ × *

1.「Aの売買契約締結行為について保佐人の同意を得ていないときは,AはCとの売買契約を取り消すことができ,この場合AC間の売買契約は初めから無効なものになる。」

【正解:○】

◆行為能力の制限による取消の遡及効

        ┌A (連帯債務者,被保佐人) ⇒ 保佐人の同意なく契約は不可。 
 C(債権者)┤                           
        └B (連帯債務者) 

 被保佐人が,民法(13条1項)または審判に(13条2項)より定められた保佐人の同意またはこれに代わる裁判所の許可(13条3項)を得ないで法律行為をした場合は取り消すことができます。(13条4項)

 行為能力の制限による取消は,被保佐人本人(その代理人,承継人を含む)・保佐人のどちらもできます。(120条1項)

 取消の意思表示がなされると,その法律行為は初めから無効であったことになります。(121条)

2.「保佐人の同意を得ていないことを理由にAC間の売買契約が取り消された場合であっても,BC間の売買契約は有効であり,Bは単独で代金の全額について債務を負うことになる。」

【正解:○】

◆連帯債務

        ┌A (連帯債務者,被保佐人)   AC間の売買契約が取消
 C(債権者)┤                          ↓ 
        └B (連帯債務者)     Bは,単独で代金全額について債務を負う

 連帯債務では,複数の債務者がそれぞれ独立に,債権者に対して全額支払う義務があり,連帯債務者の一人に生じた事由は,原則として他の連帯債務者に影響を与えません。(440条)

 したがって,AC間の売買契約が保佐人の同意を得ていないことを理由に取り消された場合でも,BC間の売買契約は有効であり,Bは単独で代金の全額について債務を負うことになります。

3.「保佐人の同意を得ていないことを理由にAC間の売買契約が取り消されたので,AはBC間の売買契約について保証人となることとなった。Aが保証人となることについては,保佐人の同意を要せず有効に保証契約を締結することができる。」

【正解:×】

◆保証−保佐人の同意を必要とする

        ┌A (連帯債務者,被保佐人)⇒Aは,保佐人の同意なく保証は不可。 
 C(債権者)┤                           
        └B (連帯債務者) 

 他人の債務を保証することは、保佐人の同意を必要とする行為です。(13条1項2号)
したがって,Aは保佐人の同意を得ずに,Bの債務の保証をしているので,Aの保佐人はこれを取り消すことができます。

●参考問題
 被保佐人Pは,第三者Qが銀行から融資を受けるにあたり,自己が被保佐人であることを単に告げないでその債務を保証した。この場合,Pは当該保証契約を取り消すことができない。
【正解:×】

◆単純な黙秘は,制限行為能力者の詐術にはならない

 民法21条 制限行為能力者の詐術

 制限行為能力者が,自分を能力者だと相手方に信じさせるため詐術を用いたときは,その行為を取り消すことができない。

  制限能力者であることを黙秘していた場合は二つに分かれます。

 黙秘についての判例の見解 (最高裁・昭和44.2.13)

 1) 単に告げなかっただけのときは,詐術には当たらない。⇒取り消すことができる

 2) 黙秘が他の言動と相俟って相手方の誤信を強めたときは詐術があったといえる。

                                   ⇒取り消せない

 本肢の場合,Pは『単に告げないでその債務を保証した』となっているため,単純な黙秘であり詐術にはあたらないので,Pは当該保証契約を取り消すことができます。

●収録を見合わせた設問

4.「BがAの保佐人である場合には,Bも契約の当事者であるので,Aの行為についてBの同意が特別にされていなくてもBはこれを理由にAC間の契約を取り消すことはできない。」

→ 法改正で,保佐人に取消権が与えられたことにより,問題を解くKEYが変わったと判断し,収録を見合わせました。(平成12年の法改正前は,民法の条文・判例とも,保佐人には取消権が与えられていなかったので、出題者は『この反射神経的な知識を知っているかどうか』をタメすために作問したと考えられ,出題当時も,『取り消すことはできない』のは○でした。)

【解説】 閲覧者の方よりご要望がありましたので,解説します。

 平成12年の法改正により,保佐人に取消権が与えられたので,それを踏まえて解説すると,以下のようになります。しかしながら,以下は「法的な解釈」にまで踏み込んでいるため,このようなデリケートなものまで現行の試験が受験者に要求しているかどうかは疑問とするところです。

【正解:○】

        ┌A (連帯債務者,被保佐人)   
 C(債権者)┤                           
        └B (連帯債務者,保佐人) ⇒ Bは,黙示の同意をしている

 もともと保佐人の同意の方法には,明文上の制約がなく,何らかの形で同意していたと認められる行為があればよい。

 つまり,その同意が明示であれ黙示であれ,同意の意思表示は,被保佐人またはその取引相手のいずれに為されても構わない性質のものである。

 本肢で考えてみると,保佐人Bが被保佐人Aと共同して売買契約を締結しているのであるから,保佐人Bは,同意しているものとしか考えられない。

 また,保佐人に取消権があるにしても,それは被保佐人Aが保佐人Bの同意なく,単独で法律行為をした場合にのみ,取消権を行使できるものである。

 したがって,本肢の保佐人Bは,黙示で,同意を与えている以上,明示の同意がなかったことを理由にして,AC間の契約を取り消すことはできないと考えられる。


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