Brush Up! 権利の変動篇
制限行為能力者の過去問アーカイブス
制限行為能力者と法定追認 (昭和62年・問2)
14才の子供Aが,自己保有の土地をBに譲渡する契約を締結した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(昭和62年・問2) |
1.「Aの法定代理人がその土地の登記の移転に協力したときは,当該契約を追認したものとみなされる。」 |
2.「Aの法定代理人がその代金債権を第三者Cに譲渡しても,当該契約を追認したものとはみなされない。」 |
3.「Aが一年後にBに対し売買代金を請求しても,当該契約を追認したものとはみなされない。」 |
4.「Aの法定代理人がBに対し売買代金を請求したときは,当該契約を追認したものとみなされる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「Aの法定代理人がその土地の登記の移転に協力したときは,当該契約を追認したものとみなされる。」 |
【正解:○】 ◆法定追認 追認権者(Aの法定代理人,成年になった後のA)がその契約を追認すれば,追認の効力が生じます。(124条1項,3項) 民法では,この意思表示による追認のほかに,法定追認という制度を設けています。(125条) これは,追認権者に取消の意思と矛盾するような一定の事実がある場合に,特に反対の意思を示さない限り,黙示の追認があったとみなす制度です。
本肢では、法定代理人が、所有権移転登記に協力しており、これは下表の『全部または一部の履行』に該当し,法定追認とみなされます。(125条1号〜6号) 注意 ⇒ 制限行為能力者本人が,行っても法定追認にはなりません。
※この表は,無権代理やこのほかの取消などでもまた出てきますから,今のうちは「フーン」と思う程度で十分です。 |
追認権者 | 追認できる時期 |
保護者 | 【親権者・未成年後見人・成年後見人・保佐人・ 同意権を付与された補助人】 追認する時期には制限なし。(124条3項) |
行為能力を回復した後の
制限行為能力者 |
行為能力を回復した後でなければ,単独で追認はできない。 (124条1項) ただし,成年被後見人の場合は行為能力者となった後だけで |
被保佐人,
被補助人 |
能力を回復していない間(被保佐人,被補助人である間) 追認するには,保佐人・補助人の同意を必要とする。 |
2.「Aの法定代理人がその代金債権を第三者Cに譲渡しても,当該契約を追認したものとはみなされない。」 |
【正解:×】 ◆法定追認 : 債権譲渡 『代金債権を第三者Cに譲渡』というのは、『取り消し得べき行為によって取得した権利の全部または一部の譲渡』に該当し,『法定追認』とみなされるので、×になります。(125条5号) |
3.「Aが一年後にBに対し売買代金を請求しても,当該契約を追認したものとはみなされない。」 |
【正解:○】 ◆法定追認 : 代金請求−Aが未成年者のうちは法定追認にはならない Aが一年後 ⇒ 14才+1年後 = 15才,したがって,Aは追認権者にはなっていないので,そもそも『法定追認』の問題にはならない。 Aの法定代理人が売買代金を請求すれば、『法定追認』とみなされますが,未成年者が代金請求しても『法定追認』にはなりません。(125条2号) |
●関連問題 |
1.「Aが成年に達した後に未成年のときにした売買が取り消し得るものであることを知らないでBに代金の支払を請求した場合には追認したことになる。」 |
【正解:○】
法定追認とは,追認権者が取消の意思と矛盾する行為をしたときに,追認したものと扱う制度です。 Aが未成年のときの追認権者はAの法定代理人ですが,Aが成年に達するとA自身が追認権者になります。 したがって,Aが未成年者であるときにAがBに代金請求しても法定追認したことにはなりませんが,成年者になったときに,AがBに代金請求すれば,法定追認したことになります。 判例では,取消可能であることを知らなかった場合でも、追認権者に,法定追認に該当する事実があれば,法定追認が成り立つとしています。(大審院・大正12.6.11) ※成年被後見人が行為能力を回復しても,取り消すことができる行為であることを知った後でないと追認することはできない。(124条2項) |
4.「Aの法定代理人がBに対し売買代金を請求したときは,当該契約を追認したものとみなされる。」 |
【正解:○】 ◆法定追認 : 売買代金の請求 法定代理人が代金請求した場合は、『法定追認』とみなされる。(125条2号) |