Brush Up! 権利の変動篇
権利能力と成年後見の審判の請求
正解と解説
【正解】
1 | 2 |
○ | × |
1 市町村長の後見開始の審判
次の記述は○か、×か。
「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者につき、市町村長(特別区
の区長も含む)は、本人の申立がなくても、家庭裁判所に後見開始の請求をすることが
できる。」
【正解:○】 【解説】 精神上の障害により事理(ものごとのすじみち)を弁識する(わきまえ識る)能力を欠く 常況(つねのありさま)にある者で、家庭裁判所により審判を受けた者を成年被後見人 といいます。 今日において精神障害(アルツハイマー、老人性痴呆症等)に陥った、親族のいない 独居老人もマレではなく、その地域の民生委員や福祉事務所等、市町村の福祉関係 行政機関に後見開始請求権がないのは不都合なため、そこで特別法の整備法(老人 福祉法第32条、知的障害者福祉法第27条の2、精神保健及び精神障害者福祉法 第51条)により、市町村長及び特別区の区長(地方自治法第283条)は、本人の申立て がなくても、家庭裁判所に後見開始請求ができます。 ▼後見開始の請求をすることができる者
▼成年後見人は,家庭裁判所が職権で選任しますが(843条1項),必要に応じて複数人を選任でき,法人を選任することも可能です。(843条3項,4項) |
●参考問題 |
後見開始の審判の請求権者でない者は次のうちどれか。(昭和49年)
1.本人 |
【正解:4】
利害関係人は,請求できません。成年後見制度とは,本人のための制度であり,利害関係者のための制度ではないからです。 |
2 権利能力
次の記述は、民法の規定によると○か、×か。
「人は、出生することにより、初めて権利能力を取得することができ、満20歳になることに
より、初めて制限のない行為能力を取得することができる。」
【正解:×】 【解説】 「権利能力(私権の享有・権利義務の主体となれる資格)」は、出生(生まれたとき=0歳)に始まる(第3条1項)のを原則としますが、不法行為に基づく損害賠償の請求、相続、遺贈に関しては、出生前の胎児にも権利能力が認められます(第721条、第886条、第965条)。 また、行為能力は、満20歳から取得する(第4条)のが原則ですが、未成年者であっても、男18歳以上、女16歳以上になれば婚姻することができ(第731条)、婚姻すれば成年者とみなされ(第753条)、単独で有効な法律行為ができます。 逆に、満20歳になっても、成年被後見人、被保佐人及び被補助人(補助人に同意権を付与された場合)の場合は、制限のある行為能力となります(第9条以下)。 ▼「営業を許された未成年者」の規定について 民法6条は、「法定代理人から営業を許された未成年者は、『その営業に関しては』 成年者と同等の資格がある」としていますが、全てにおいて行為能力が認められている わけではなく,法定代理人から許された営業以外の点では、未成年者のままである ことに注意してください。 |