Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
制限行為能力者の取消の基本問題 昭和59年・問2
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
【ナビゲーション】 制限行為能力者がした契約そのものは意思の欠缺はないので有効ですが、ひとりで有効な法律行為ができない制限行為能力者の立場を守るため、いったん成立した契約を取り消したり、保護者がそのまま有効に確定させる(=追認)ことができます。 |
●類題 |
制限行為能力者が,独断で行った法律行為であっても,すべてがただちに無効になるのではない。(昭和50年) |
【正解 : ○】
意思能力を欠く状態〔幼児,泥酔,痴呆症〕で締結された契約は無効ですが,意思能力がなかったことを立証するのは裁判でも大変であり,意思能力があっても取引などの財産処理は難しい人々がいます。 このため,民法では,未成年者・成年被後見人・被保佐人・同意権付与の審判を受けた被補助人の四つの類型から成る制限行為能力制度を設けています。〔同意権付与のない被補助人は,制限行為能力者ではないことに注意。平成12年に120条1項の改正が施行され,取消権者に,同意を為す者が加えられ,また124条3項の改正で,追認の規定に,補佐人と補助人が加えられた。〕 成年被後見人以外の制限行為能力者が同意を要する行為を同意なしに行った場合は,本人及び未成年者の法定代理人・その保佐人・同意権を与えられた補助人は,原則として,『行為能力の制限によって』取り消すことができます。(120条1項)(5条2項),(13条4項),(17条4項) 成年被後見人の行った行為は,日常生活に関する行為を除き,成年後見人の同意のあるなしにかかわらず,成年被後見人本人及び成年後見人とも,原則として取り消すことができます。(9条),(120条1項) 制限行為能力者側で取り消すことによって,取り消した法律行為は遡及効によって,初めから無効だったものになります。〔法律行為の効力が初めからなかったものとみなされる。〕(121条) したがって,『制限行為能力者が,独断で行った法律行為であっても,すべてがただちに無効になるのではない』という本肢は正しい記述になります。 |
次のそれぞれの記述は、民法の規定によれば○か、×か。(昭和59年・問2)改題
1.「未成年者が、法定代理人の同意を得ずに、アパートを賃借する契約を締結した
場合、この賃貸借契約は無効である。」
【正解:×】 単に権利を得る(贈与を受ける行為)、義務を免れる(借金の免除)行為など、一定の(未成年者に利益をもたらす)行為を除き、未成年者が法律行為(契約等をすること)をするには、その法定代理人の同意を要し(民法第5条1項)、その同意のない行為、この場合のアパートを借りる契約などは、取消すことができます(〃2項)。 しかし、この設問文のように、最初から無効ではなく、「取り消されてはじめて“無効”」となります。つまり、未成年者でも、基本的人権は保障されており、取り消されるまでは、当該契約は有効に成立しています(第121条)。 |
2.「被補助人が、補助人の同意を必要とするのに、補助人の同意を得ずに、建物の
増築工事を請け負わせた場合、この請負契約は無効である。」
【正解:×】 「被補助人」は、事理を弁識する(物事を判断する)能力が「不十分」な者をいい、被補助人が特定の法律行為をするには、その補助人の同意を要し、その同意のない行為は取消すことができます(第17条4項)が、最初から無効ではありません。 ▼補助人の同意を必要とする行為は、法律の規定で定まっているのではなく、補助人に同意権を付与する審判(補助開始の審判とは別に行います)で特定された行為に限定されます。(17条1項) この特定の法律行為は、被保佐人が保佐人の同意を必要とすると定められたもの(13条1項の中の一部に限られます。この同意権の対象となる法律行為は、被補助人の事情の変化に応じて範囲を拡張したり、縮小したりできます。 → 補助開始の審判だけでは,つまり,同意権付与の審判を受けていない場合は被補助人の行為能力は制限されないこと(=特定の法律行為に補助人の同意を必要としないに注意してください。)
▼補助人に同意権が付与されている場合は、追認権・取消権も与えられます。(120条・122条) 補助人の同意を要する法律行為について、被補助人が、補助人の同意を得ずにした場合は、補助人は当該法律行為を取消、または追認することができます。 ▼補助人に代理権が付与されている場合 家庭裁判所の審判で、補助人に特定の法律行為について『代理権』が与えられる場合があります。(876条の9第1項、同第2項、876条の4第2項) ▼各審判の関係 補助開始の審判(15条),同意権付与の審判(17条),代理権付与の審判(876条の9)はそれぞれ別個で独立した審判ですが,補助開始の審判は他の審判のどちらかと共にすることを要します。(15条3項) → 『補助開始の審判+代理権付与の審判』では,つまり,同意権付与の審判を受けていない場合は被補助人の行為能力は制限されないことに注意してください。 |
3.「被保佐人が、保佐人の同意を得ずに、宅地を5年間賃貸する契約を締結した場合
、この賃貸借契約は取消すことができる」
【正解:×】 「被保佐人」とは、事理を弁識する(物事を判断する)能力が「著しく不十分」な者をいい、その者が短期賃貸借(山林10年、宅地5年、建物3年、動産6ヵ月:第602条)を超える契約をするには、その保佐人の同意を要します(13条1項9号)が、宅地を5年間賃貸するには、5年を超えていないので、保佐人の同意は不要です。 |
4.「成年被後見人が、成年後見人の同意を得ずに、別荘の贈与を受諾する意思表示
をした場合、この意思表示は取消すことができる。」
【正解:○】 「成年被後見人」とは、事理を弁識する能力を「欠く」者をいい、成年被後見人が法律行為をするには、日用品の購入など日常生活に関する行為を除き、単に贈与を受諾する意思表示をした場合であっても、この意思表示は取消すことができます。 問題文では、『成年後見人の同意を得ずに』となっていますが、成年後見人の同意の有無にかからず、取り消すことができます。 |
●関連問題 |
成年被後見人は,成年後見人の同意を得てした行為(日常生活に関する行為を除く)も取り消すことができるが,被保佐人は,保佐人の同意を得てした行為について,行為能力の制限を理由に取り消すことができない。(司法書士・平成9年・問1・肢1・一部改) |
【正解:○】
成年被後見人 = 成年後見人の同意を得た行為でも取り消すことができる。 被保佐人 = 保佐人の同意を得てした行為は,能力の制限を理由に ※一定の重要な財産上の行為については保佐人の同意または |