Brush Up! 権利の変動編

正解・解説

相隣関係の基本問題


【正解】

× × ×

1.「土地の所有者は,境界線付近で建物の建築等に必要あるときは,隣家に隣地の

使用を請求することができるが,その家屋内に立ち入るには,隣家の承諾が必要で

ある。」(類・H11-2-1,昭和62-2-9-3,昭和38)

【正解:

隣の土地の使用は、隣家が拒否しても裁判所に請求の申立てができますが(209条)

隣の家屋内に立ち入るには、プライバシー保護の見地から、隣家が拒否したときはでき

ません。(209条但書)

2.「ある土地が,他の土地に囲まれて公路に出られぬとき,その土地の所有者は,

他の土地を通行することができ,また必要あれば,通路も開設することができる。」(H13-3-1, 関連・昭和62-9-4)

【正解:

設問の記述の通りです。(袋地所有者の囲繞地通行権、210条、211条2項)

なお、通行方法は、隣家にとってもっとも損害の少ない方法により(211条1項)、また、

その通行により隣家に損害が発生したら、償金(損害賠償金)の支払義務も生じま

す。(212条)

【知っておくと便利な豆知識】

袋地所有者は、囲繞地の所有者に対して、囲繞地通行権を、袋地の所有権取得の

登記がなくても主張できる。(最高裁・判例)

3.「土地の分割によって公路に通じない土地が生じたとき,その土地の所有者は,

他の分割者の土地を,償金を支払うことにより通行できる。」(H13-3-3, 昭和42,62-9-2)

【正解:×

元々一つの土地であったのが、分割によって公路に出られなくなった土地の所有者

は、前問の場合と異なり、償金を支払わずに分割された土地を通行できます。 (213条)

※この袋地について特定承継が生じた場合、囲繞地の無償通行の権利は特定承継人

にも及びます。

4. 「土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用で境界標(境界を標示する物)を設置

することができるが,その設置工事の費用は両地の広さに応じて分担しなければなら

ない。」(H11-2-2,昭和38)

【正解:×

 土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用で境界標を設置することができます。(223条)その設置工事や保存にかかる費用は相隣者どおしで平分して負担します。平分=折半。(224条本文)

 境界線上に設けた界標囲障 (いしょう)などは,相隣者の共有と推定されます。(229条)

 また,囲障 (いしょう)の設置・保存の費用も,原則として,相隣者どおしで平分して負担します。(226条)

両地の広さに応じて分担しなければならないのは、測量費用です。(224条但書)

5. 「他人の宅地を観望できる窓又は縁側を境界線から 1 m 未満の距離に設ける

場合は,目隠しをしなければならない。」(H11-2-4)

【正解:

 235条1項そのままの出題です。本試験に出題されたときに「民法の規定と異なる慣習については考慮しない」とあったのは、236条で「前2条の規定に異なりたる慣習あるときは其慣習に従う」とあるためと思われます。このように、民法の規定と異なる慣習が優先される場合があります。(ほかには、263,269条など)

このほか民法と異なる規定を法律が定める場合があります。有名なのは,建築基準法65条の隣地境界線に接する外壁の規定です。〔防火地域又は準防火地域内にある建築物で,外壁が耐火構造のものについては,その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。この規定は,民法234条1項の特則だとされています。(最高裁・平成元.9.19)

民法234条1項・・・建物を築造するには境界線より50センチメートル以上の距離を空けなければならない。

6. 「隣地の竹木の根が境界線を越えて侵入している場合は,これを竹木の所有者

に切り取るように請求することができるが,自分で切り取ることはできない。」(H11-2-3)

【正解:×

 隣地の竹木の根が境界線を越えて侵入している場合は、自分で切り取ることができます。(233条2項)←平成11年出題

 隣地の竹木の枝が境界線を越えて侵入している場合は、その所有者に切り取るように請求することができます。(233条1項)←昭和62年出題

    → 竹木の所有者に切らせることができる

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    → 自分で切り取ることができる

ここは、根ではなく茎ではどうだろうか、果実が落ちていたらどうだろうかと疑問が出てくるのは当然ですが、専門的な議論になってしまうので、条文のみに留めておきましょう。


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