Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
抵当権の基本問題2
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | × |
Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に 抵当権を設定した。 この場合、次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。 |
1.「Bの抵当権の実行により、Cが建物、Dが土地を競落した場合、Dは、Cに対して
土地の明渡しを請求することはできない。」
【正解:○】 ◆法定地上権 Bの抵当権の実行→ 建物…C 土地…D 条文規定では、土地と建物が同一の所有者に属する場合、土地又は建物のみに抵当 権を設定したものは、競売のとき、地上権を設定したものとみなされます(民法第388条)。 しかし、土地とその上の建物の双方に抵当権を設定した場合であっても、抵当権が 実行されて、土地と建物が別々の者に競落されたときであっても、地上権を設定された ものとみなされます(判例:最判昭37.9.4)。 したがって、この場合の土地を競落したDは、建物の競落者Cに対して、土地の明渡し を請求できません。 <関連> 「法定地上権」という今までになかった権利が忽然と現れたのですから、当然「期間」や「地代」などは定まっていません。土地・建物の所有者当事者同士で話し合い、協議が不調であれば、裁判所へ持ち込むことになります。 ・法定地上権も借地借家法の適用を受けるため、存続期間は当事者の合意がなければ30年になります。(借地借家法3条) ・地代は、当事者の協議で定まらないときは裁判所が決定します。(388条但書) また、第三者にまで地上権を対抗するためには、借地権か建物の登記を要します。 |
<「法定地上権」に関する判例> [1]法定地上権が成立する場合 ・土地に対する抵当権設定当時、建物について保存登記がなされていなくても「建物」 が存在している場合(大判昭7.10.21)。 ・建物のみに抵当権が設定された後、抵当権実行前に土地が譲渡された場合 (大判昭8.3.27)。 ・土地と建物が同時に抵当権の目的となっている場合(最判昭37.9.4)。 [2]法定地上権が成立しない場合 ・更地に抵当権を設定した場合に、後日建物が築造された場合(大判大4.7.1)。 ・抵当権設定当時、土地と建物の所有者が異なっている場合(大判大6.5.14)。 ・共有地上に建物を所有する共有者の1人が自己の共有持分に抵当権を設定した場 合に、他の共有者の同意がない場合(最判昭29.12.23)。 |
2.「Aは、抵当権設定の登記をした後もEに賃貸することができるが、その賃貸借に
ついてのBの同意がなくても、期間3年以内の賃貸借でその登記があれば、Eは、
建物の競落人に対して賃借権を対抗しうる。」 法改正
【正解:×】 ◆抵当権者の同意による対抗力の付与 A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) 抵当権設定後の賃貸借では,期間を問わず,その賃借権の登記があり,かつ,その賃貸借についての抵当権者の同意の登記があるならば,建物の競落人に対して賃借権を対抗できます。 しかし,本肢では,賃貸借の登記があるのみで,抵当権者Bの同意〔同意の登記も〕がないため,Cは,建物の競落人に対して賃借権を対抗できません。 ●法改正について 抵当権を登記した後に抵当不動産上に設定された使用・収益権は、抵当権が実行されれば消滅するのが原則です。 (平成15年改正の前は、抵当権を登記した後に短期賃貸借という制度がありましたが悪用されることが多く不良債権処理を進めやすくするため廃止されました。) しかし、そうなると抵当不動産を利用することは難しくなりますので、民法では以下の二つの措置をしています。(第395条)。 1) 登記した賃貸借は,抵当権者の同意があれば抵当権者に対抗できる ・登記した賃貸借は,賃貸借の登記前にすでに登記してあった抵当権を有するすべての者が同意し,かつ,その同意の登記があるときは,これをもってその同意をした抵当権者に対抗することができる。(第387条1項) 抵当権者が同意をするには,その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受ける利害関係人の承諾を得なければならない。(第387条2項) 2) 建物明渡し猶予制度の創設 → 土地にはない 抵当権者に対抗できない賃貸借により抵当権の目的たる建物を使用収益する者で, ・競売手続の開始前より使用収益する者 ・強制管理・担保不動産収益執行の管理人が競売手続後にした賃貸借により使用収益する者 は,その建物の競売において,買受人の買受けのときから6ヵ月を経過するまではその建物を買受人に引き渡すことを要しない。(第395条1項) 買受人の買受後に建物を使用した対価について,買受人が建物使用者に対して相当の期間を定め,その1ヵ月分以上の支払いを催告し,その相当の期間内に履行がない場合は,建物使用者はその建物を買受人に引渡さなければならない。(第395条2項) |
3.「Bは、第三者Fから借金をした場合、Aに対する抵当権をもって、さらにFの債権
のための担保とすることができる。」
【正解:○】 抵当権者は、その抵当権をもって他の債権の担保(「転抵当」という)とすることができ ます(第375条1項)。平たくいえば、例えば、抵当権者は、自分の抵当権を他人から 金を借りるための担保とすることができる、ということです。 ●転抵当の対抗要件 抵当権者が転抵当を行うときは,債務者への対抗要件として,このことを,債務者に“通知”を行うか,債務者の“承諾”を得るかのいずれかを行う必要があります。(376条) ⇒転抵当は債務者に影響を及ぼします。また転抵当に付されたことを知らずに原抵当権の被担保債権を債務者〔保証人・物上保証人・承継人〕が弁済すると原抵当権が消滅し,転抵当権も消滅します。 また,原抵当権が数人のために転抵当に付されたときの第三者〔他の転抵当権者〕に対する対抗要件(177条)としては,登記が必要です(附記登記)。 |
4.「Aから抵当権付きの土地及び建物を買い取ったGは、Bの抵当権の実行に対し
ては、自ら競落する以外にそれらの所有権を保持する方法はない。」 法改正
【正解:×】 ◆第三取得者が抵当権を消滅させる方法 A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) 抵当不動産の第三取得者は、 自ら競落人となることができる(第390条)ばかりでなく、 ・債務者の代わりに「第三者弁済」する(第474条)、 ・抵当権者の請求に応じてその「代価を弁済」する(第377条)、 ・又は代価を提供して「抵当権消滅請求」をすること もできます(第378条)。 <抵当権の消滅事由> [1]被担保債権の全額弁済 [2]代価弁済 [3]抵当権消滅請求 [4]被担保債権の時効消滅 ⇒ 第三取得者や物上保証人は抵当権者に主張することができます。 |
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