Brush Up! 権利の変動編

正解・解説

抵当権の複合問題1 平成7年・問6


【正解】

× × ×

AがBに対する債務の担保のためにA所有の建物に抵当権を設定し、登記も完了した。

この場合、下記のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。

1.「Aが通常の利用方法を逸脱して、建物の毀損行為を行う場合、Aの債務の弁済期

が到来していないときでも、Bは、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。」

【正解:

 債務者が滅失、毀損(壊す)等事実上の行為で抵当物に対する侵害をしようとする場合は、担保価値が減少して抵当権者(債権者)に損害を生じるおそれがあるため、判例によれば、抵当権者の被担保債権が弁済期であるかどうかにかかわらず、抵当権は物権たる抵当権の効力として、その妨害の排除を求めることができます。

<参考>

妨害排除請求権ばかりでなく、債務者が担保を毀滅させたり減少したとき弁済期が到来していなくても、抵当権者は抵当権を実行することもできます(民法第137条2項)。

2.「抵当権の登記に債務の利息に関する定めがあり、他に後順位抵当権者その他の

利害関係者がいない場合でも、Bは、Aに対し、満期のきた最後の2年分を超える利息

については抵当権を行うことはできない。」

【正解:×

満期のきた最後の2年分の利息の制限規定(第374条)は、判例によれば、あくまでも後順位抵当権者や他の債権者との関係の制限(それらの者の保護のため)であって、債務者、物上保証人、第三取得者との関係では、最後の2年分に限定されません。

3.「第三者の不法行為により建物が焼失したのでAがその損害賠償金を受領した場合

、Bは、Aの受領した損害賠償金に対して物上代位することができる。」

【正解:×(ヒッカカル可能性大)

 滅失した抵当物件に関する損害賠償金につき、抵当権者が物上代位するには、先取特権の規定が準用され(第372条、第304条)ます。

 判例によれば、物上代位は現実の金銭の上に効力を及ぼすものではなく、目的物の滅失により生じた「損害賠償請求権」の上に効力を及ぼすものであって、当該賠償金を債務者が受領した後においては、債務者の一般財産と混同(マゼコゼ)してしまい、分離不可能となるため、物上代位することはできません。

 つまり、払い渡しされる前に請求権にもとづき差押え等の必要があります

4.「抵当権の消滅時効の期間は20年であるから、AのBに対する債務の弁済期から

10年が経過し、その債務が消滅しても、Aは、Bに対し抵当権の消滅を主張することが

できない。」

【正解:×

〔民法第396条〕

『抵当権は、債務者および抵当権を設定した者に対する関係では、その抵当権によって担保されている債権と同時でなければ時効にかからない。』

 債務者や抵当権設定者が、本来なすべき債務の弁済をせずに、期間の経過を主張することによって、債務ノミの消滅を主張することは妥当ではないため、債務者や抵当権設定者との関係では、被担保債権と同時に、つまり10年で時効消滅します。

<参考>

民法第396条の反対解釈によって、第三取得者や後順位抵当権者については、抵当権は、債権とは別個に20年(第167条2項)で時効消滅します(判例)。


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