Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の根底問題1 抵当権の根底事項
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
○ | ○ | × | × | ○ |
抵当権に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か、×か。 |
1.「抵当権設定契約の成立には、目的物の引渡しを必要とせず、かつ、必ずしも
契約書の作成を必要としない。」(昭和58-3-3)
【正解:○】
◆抵当権の設定 抵当権の設定のためには、債務者または物上保証人が目的物の引渡しを必要とせずに、債務者または物上保証人は引き続き目的物を占用・使用し収益をとあげることができ、抵当権者は債務が弁済されないときには競売代金から優先弁済を受けられる権利(民法369条1項)です。 この抵当権は、設定するという当事者間の契約によって成立し、設定の合意だけでよいとされています。(諾成契約) つまり、物権である抵当権の設定、移転は当事者の意思表示のみによってその効力を生じます。(民法176条) したがって、抵当権設定の契約書の作成は必ずしも必要とはされません。 ▼目的物の引渡しを必要とせず・・・条文では「占有を移さず」となっています。 |
2.「抵当権者がその優先弁済権を第三者に対抗するには、抵当権が登記されている
必要であるが、登記されない抵当権も当事者間では効力を有する。」(昭和59-7-1改)
【正解:〇】
◆登記は対抗要件であり、当事者間では登記していなくても抵当権の効力はある。 物権である抵当権の設定、移転は当事者の意思表示のみによってその効力を生じます。(民法176条) 抵当権の登記を必要とするのは、抵当権者が優先弁済権を第三者に対抗するためです。(民法177条) したがって、登記がなくても、当事者間では抵当権は有効に成立(最高裁・昭和25.10.24)し、抵当権の実行も可能(大審院・大正12.7.23)とされています。 ▼対抗要件としての登記がないと当事者間では効力をもっていても、他の債権者に対して優先弁済権を主張できません。また、抵当権の実行開始には民事執行法の一定の手続きを必要としているため、登記のない抵当権の実行は事実上困難です。 |
3.「被担保債権が弁済により消滅しても、抵当権の登記を抹消しなければ、抵当権
設定者は、抵当権の消滅を第三者に対抗することはできない。」(昭和52)
【正解:×】
◆被担保債権の弁済により、抵当権は消滅する(附従性) 担保物権とは、本来、債権を担保するための手段であり、債権という主役の従たる存在です。このため、「被担保債権が存在しなければ担保物権も存在せず、被担保物権が消滅すれば担保物権も消滅する」と考えられています。このことを担保物権の附従性といいます。 したがって、被担保債権が弁済によって消滅すれば、抵当権も附従性によって消滅し、たとえ抵当権の登記が残っていたとしても、それは実体のない登記なので、抵当権設定者は第三者に抵当権の消滅を主張できます。 |
4.「不動産先取特権と抵当権の優劣は、つねに登記の先後による。」(昭和52)
【正解:×】
◆抵当権に優先する先取特権 登記した権利の順位は原則として登記の先後によることになっています。(不動産登記法6条) しかし、これには例外があり、『不動産保存の先取特権』と『不動産工事の先取特権』が登記されていると、抵当権がこれより先に登記されていたとしても優先されます。(民法339条) |
5. 「自己の所有する建物に債権者Cのために抵当権を設定したDが、その建物を過失
により焼失させた場合、Dは、被担保債権について期限の利益を失う。」(昭和58-3-2)
【正解:○】
◆期限の利益が消滅する場合 『期限の利益』とは、期限が到来するまでの間に、法律行為の発生・消滅又は債務の履行が猶予されることにより当事者が受ける利益のことを言います。 たとえば、借金の返済の期限の日を決めるとその日までは返済を待ってもらえるため、利益があると言えます。 そして、この期限の利益は、債務者が担保を故意または過失により毀滅または減少させたときは、期限の利益を主張することができないとされています。その結果抵当権者は直ちに被担保債権の弁済を請求できるとともに、抵当権を実行することもできます。(民法137条2号) 本問では、抵当権設定者Dが抵当権を設定した建物 (担保) を過失により焼失させた(毀滅) ので、Dは、被担保債権について期限の利益を失い、抵当権者は弁済の請求をることができます。 ▼期限の利益 当事者間で別段の定めがなければ、この期限の利益は、原則として債務者のためにあると推定されます。(民法136条1項) 期限の利益がある者、つまり債務者は期限の利益を放棄することもできますが、放棄する場合には、債権者の利益を害することはできません。(民法136条2項) たとえば、借金の返済のときに利息を支払うことになっていれば、弁済期前に借金を返済する場合には、債権者に弁済期までの利息を支払う必要があります。 ▼期限の利益を喪失する旨の特約が可能な場合
【正解 : ×】 このような特約も、債務者または第三者の利益を不当に害するものでない限り、原則としては有効とされています。 このほかには、割賦払にした債務で、債務者が一回でも弁済を怠ると債務者が期限の利益を失うという特約も有効とされています。 |
●参考問題 |
1.「債務者が抵当権の目的物である不動産を毀損したときは,抵当権者は,被担保債権の弁済期の到来前であっても,抵当権を実行できる。」(司法書士・平成9-12-3) |
【正解:○】 |