Brush Up! 権利の変動篇

抵当権の基本確認4系 抵当権者の物権的請求権など

正解・解説


【正解】

×

 抵当権に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か、×か。

1.「AがBに対する債務の担保のためにA所有建物に抵当権を設定し、登記をした。

Aが通常の利用方法を逸脱して、建物の毀損行為を行う場合、Aの債務の弁済期が

到来していないときでも、Bは、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。」

【正解:H7-6-1

◆抵当目的物への侵害

抵当権者は、設定者が通常の利用方法を逸脱して、建物の毀損行為を行う場合は、被担保債権の弁済期の前後にかかわらず、抵当権の効力として物権的妨害排除請求権を行使できます。(抵当山林の伐採について=大審院・昭和6.10.21)

2.「民法の規定によれば、自己の所有する建物に債権者Bのために抵当権を設定した

Aが、その建物を過失により焼失させた場合、Aは、被担保債権についての期限の

利益を失う。」(昭和58-3-2)

【正解:

 債務者の行為により、抵当権の目的物を滅失させたり、毀滅して担保価値を減少させたときは、債務者は、故意・過失を問わず期限の利益を失います。(民法137条2号) 

 このことにより、抵当権者は、直ちに被担保債権の弁済を請求できます。

抵当権設定契約で、「抵当権の目的物が滅失ないし毀損をした場合、債権者は債務者に増担保または代担保を提供するように請求できる特約」を、することもできます。

●参考問題
1.「債務者が抵当権の目的物である不動産を毀損したときは,抵当権者は,被担保債権の弁済期の到来前であっても,抵当権を実行できる。」(司法書士・平成9-12-3)

【正解:

3.「AがBに対する債務の担保のためにA所有建物に抵当権を設定し、登記をした。

その後、第三者の不法行為により建物が焼失したので、Aがその損害賠償金を受領

した場合、Bは、Aの受領した損害賠償金に対して物上代位することができる。」

【正解:×H7-6-2

◆損害賠償金への物上代位

 物上代位するためには、抵当権者自身が抵当権設定者に代位目的物が払い渡される前に差し押さえなければいけません。

 本設問の場合は、すでに損害賠償金を受領しているので、物上代位することはできません。

●参考問題
1.「抵当権の目的物が滅失した場合には、抵当権の効力は、その滅失により目的物の所有者が受領すべき金銭にも及ぶ。」昭和58-3-4

【正解:

 抵当権の目的物が滅失した場合には、物上代位性により、抵当権の効力は、その滅失により目的物の所有者が受領すべき金銭にも及びます。

2.「第三者が抵当権の目的物である不動産を毀損し,これが不法行為となるときは,抵当権者は,不動産所有者の有する損害賠償請求権に物上代位することができる。」(司法書士・平成9-12-エ)

【正解:

4.「抵当権者に対抗できる短期賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、

抵当権者の請求によりその解除を命ずることができる。」(類・平成5年、11年)

註 ここでの短期賃貸借は民法の旧395条に規定されていたもの。民法の改正施行時に
現存する短期賃貸借は旧395条が適用される。 法改正

【正解:

◆詐害的短期賃貸借の解除請求

 対抗力のある賃貸借が抵当権者に損害を及ぼす場合、抵当権者はその解除を裁判所に請求できます。(395条但書)

 損害 賃貸借により抵当不動産の担保価値が下落して、抵当権者が優先弁済を受ける額が減少すること(最高裁・昭和34.12.25)

→ 短期賃貸借によって担保価値が下落して、被担保債権の元本・利息の全額の弁済を受けられなくなることを意味します。

 この解除命令の効果は賃貸人、賃借人の間にも及び、賃貸人は賃借人に対して明渡し請求をすることができます。

損害を及ぼすかどうかを決定する時期は抵当権実行の時であり、少なくとも被担保債権の弁済期が到来するまでは、抵当権者は、裁判所に賃貸借の解除を請求することはできないと解されています。

5.「抵当権者は抵当不動産の所有者に対して交換価値の実現が妨げられるような抵当

権の侵害が生じないように抵当権の目的物を維持するように請求できるが、その保全の

ために所有者が不法占有者に対して有する妨害排除請求権を代位行使し、不法占有者

に対して明渡しを請求することができる。」

【正解:

◆抵当権に基づく詐害的短期賃貸借の妨害排除請求

◆債権者代位権による不法占有者への明渡し請求

(抵当権設定者の物権的請求権の代位行使)

 抵当不動産が不法占有により、抵当権実行での売却価格が時価よりも大幅に下落することがあります。(裁判所の解除命令後も不法占有されていることがあります。)抵当権者はこの不法占有者に対して明渡し請求ができるかどうかが注目されていましたが、判例はこれについて以下のような判断を下しました。

第三者の不法占有により抵当不動産の「交換価値」の実現が妨げられれば、抵当権の侵害になる。

抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して、交換価値の実現が妨げられるような抵当権の侵害が生じないように、抵当権の目的物を維持・保存するように請求できる。

・その保全のために所有者が不法占有者に対して有する妨害排除請求権を抵当権者は代位行使し、不法占有者に対して明渡しを請求することができる

 (最高裁・平成11.11.24)


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