Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の基本確認5系 競落人―賃借地上の抵当権つきの建物
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
AがBから土地を賃借して、建物を建て、その登記をした後、その建物にCの抵当権を設定して、登記をしたが、Aが弁済期に履行しなかったので、Cが抵当権を実行して、Dがその建物を競落した。この場合、民法及び借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(平成5年・問10) |
1.「Cは、抵当権を実行する際、A及びBに通知しなければならない。」 法改正
【正解:×】
◆抵当権実行の通知義務はない B(地主) 抵当権者は抵当権を実行する前に滌除権者にあらかじめ通知しなければならない(旧・民法381条)という規定がありましたが平成15年の民法改正でこの規定はなくなりました。本肢では,第三取得者(抵当権のついた不動産を取得した人)はいないので,改正前でも×でした。 現行の民法では、抵当権者は、抵当権消滅請求を拒否するときに抵当権を実行する場合〔このときは債務者及び抵当不動産の譲渡人に通知〕を除いて(385条)、抵当権実行を通知する義務は誰に対してもありません。 |
2.「Dは、競落により建物を取得したのであるから、土地の賃借権も当然に取得し、
Bに対抗することができる。」
【正解:×】
◆賃借権譲渡の承諾 B(地主) 賃借地上の建物に抵当権の設定があるときには、抵当権の効力は従たる権利である土地の賃借権にも及びます。建物は敷地利用権なしには存在できないからです。判例では、民法87条2項類推適用説(昭和40・5・4) つまり、競落人Dは建物の所有権と同時にこの土地の賃借権を譲渡されたことと同じことになります。 しかし、賃借権の譲渡には賃貸人の承諾が必要であり、承諾なく譲渡すれば、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます。(民法612条1項) 建物を競落しただけでは、賃借権譲渡へのBの承諾がないため、賃借権の取得を当然に取得したとは言えず、このままではBに対抗することはできず、本設問は×になります。 ▼借地権が地上権の場合は、地主の承諾は当然のことながら不要です。 |
3.「Dは、土地の賃借権の譲渡についてBの承諾を得なければならず、Bが承諾しない
ときは、Bに対抗する手段がない。」(類・平成9年など出題多数)
【正解:×】
◆裁判所の許可 B(地主) Bの承諾がなくても、他にも対抗する手段はあります。 借地上の建物の譲渡について、賃貸人の不利になる恐れがないにもかかわらず、賃借権の譲渡を賃貸人が承諾しない場合には、借地上の建物の競売または公売による取得者は裁判所に申し立てて、賃貸人の承諾に代わる許可をもらうことができます。(借地借家法20条1項) この申立は、競売または公売の場合は、建物の代金を支払った後、2ヶ月以内に限り、できることになっています。(借地借家法20条3項) ←注意・平成6年問11肢2に出題 |
●参考問題 |
1.「AがBの土地を賃借して建てた建物の所有権が、Cに移転した。Bは、Cが使用しても何ら支障がないにもかかわらず、賃借権の譲渡を承諾しない。Cの建物の取得が競売によるものであるときは、Cは、競売代金支払い後2ヶ月以内に限り、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。」(H6-11-2) 類題・(H9-11-3) |
【正解:○】 B(借地権設定者)―A(借地権者、借地上に建物を建てた) ▼ココが狙われる! 競売により建物を取得したのではなく、Aから譲渡されたケースでの裁判所への申立てについて注意点を申し上げます。 Aが土地を賃借して建てた建物をDに譲渡しても借地権設定者Bに不利になる恐れがないときに、裁判所に対して土地の賃借権の譲渡についてBの承諾の代わりとなる許可を申し立てることができるのは、Aであることに注意してください。(H9-11-4) B(借地権設定者)―A(借地権者、借地上に建物を建てた) Dからは申立てをすることはできません。(借地借家法19条1項) 競売との混同に注意してください。 |
●借地権譲渡について地主の承諾に代わる裁判所の許可を申し立てる者 | |
競売による借地上の建物の取得 | 競落人 |
競売以外での借地上の建物の取得 | 譲渡人 |
4.「BがDの土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、Dは、Bに対しその建物を時価で
買い取るよう請求することができる。」類題多数出題
【正解:○】
◆建物買取請求権 B(地主) B(借地権設定者)が土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、D(建物の譲受人)はBに対して建物を時価で買い取るよう請求することができます。(借地借家法14条) なお、請求する金額は借地権の価額を超えることはできないとされています。(最高裁・昭和35.12.20) |
●参考問題 |
1.「問題4の設定において、DがBに対して買取請求権を行使した場合、Dは、その建物を使用していても、Bが買取代金を支払うまで建物の引渡しを拒むことができ、その間の地代相当額を不当利得として返還する必要はない。」(H6-11-4) |
【正解:×】 B(地主) Dは建物買取請求をすることはできますが、地代相当額は不当利得となるため、地代相当額については返還する必要があります。(最高裁・昭和35.9.20) ▼この場合、Dは留置権に基づき、Bが建物の買取代金を支払うまで建物の引渡しを拒んでいることになります。 |
●競落人 |
・競落人(買受人)は,建物を買い受けたときに「法定地上権」を取得することがあります。〔建物のみを買い受けたときに起こり得る。〕 ・競落人(買受人)は,土地〔要役地〕を買い受けたときに「地役権」を取得することがあります。〔地役権の移転について承役地の所有者を必要とする特約がない場合。要役地に抵当権を設定するとその効力は地役権にも及ぶからです。〕 ・抵当権者に対抗できる賃貸借を承認しなければなりません。 ・一定の建物の賃借人には6カ月間は明渡しを猶予しなければならない。〔土地にはこのような規定はない。〕(395条)建物の明渡し猶予制度 ・競売の場合,買受人は担保責任を追求できないが,物・権利の欠缺を債務者が知っていて申し出ず又は債権者がこのことを知っていながら競売を請求したときは買受人は過失者に対して損害賠償を請求できる。(569条3項) |