Brush Up! 権利の変動篇

抵当権の基本確認7系 法定地上権の実戦問題

正解・解説


【正解】

× × ×

 Aは,Bに対する貸付金債権の担保のために,当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し,その旨の登記をした。その後,Bはこの土地上に乙建物を築造し,自己所有とした。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(H14-問6)

1.「Aは,Bに対し,乙建物の築造行為は,甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為

であるとして,乙建物の収去を求めることができる。」

【正解:×

◆抵当権設定者の使用収益

 抵当権の設定には、抵当権の目的物の引渡しは不要であり、抵当権の設定者には抵当権の目的物を使用し収益をあげることが認められています。

 抵当権の実行段階では、設定者の権利はすべて奪われますが、それまでは、設定者は抵当権の目的物を使用し収益をあげることができます

 したがって、抵当権者Aは、建物を築造したことが抵当権を侵害する行為だとして乙建物の収去を求めることはできません。

2.「Bが,甲土地及び乙建物の双方につき,Cのために抵当権を設定して,その旨の

登記をした後(甲土地についてはAの後順位),Aの抵当権が実行されるとき,乙建物の

ために法定地上権が成立する。」

【正解:×

◆一番抵当権を基準に法定地上権の成立は決定される(判例)

◆更地に抵当権設定しても,法定地上権は成立しない

 法定地上権が成立するには、抵当権設定当時に、既に建物が存在していることが要件です。(最高裁・昭和36.2.10など)

 土地に複数の抵当権が設定された場合、判例では、土地の1番抵当権設定時を基準に、法定地上権の成立を考えるべきとしています。(最高裁・平成2.1.22)

 本肢では、

 甲土地1番抵当権者A,2番抵当権者C

 乙建物=1番抵当権C

となっています。甲土地に1番抵当権が設定された時は、更地であった為、乙建物のために法定地上権は成立しません。

 本肢のような場合にも法定地上権を認めると、1番抵当権者Bにとっては、もともと更地と評価した土地なのに、競売実行時に法定地上権つきの建物があれば、土地の価格は下がることになるので、Bにとっては著しく不利益になるからです。

3.「Bが,乙建物築造後,甲土地についてのみ,Dのために抵当権を設定して,その旨

の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位),Aの抵当権及び被担保債権が存続

している状態で,Dの抵当権が実行されるとき,乙建物のために法定地上権が成立する。」

【正解:×

◆一番抵当権を基準に法定地上権の成立は決定される(判例)

◆更地に抵当権設定しても,法定地上権は成立しない

 肢2と同様に考えます。

 本肢では、

 甲土地1番抵当権者A,2番抵当権者D

となっています。甲土地に1番抵当権が設定された時は、更地であった為、乙建物のために法定地上権は成立しません。

4.「Aは,乙建物に抵当権を設定していなくても,甲土地とともに乙建物を競売すること

ができるが,優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。」

【正解:

◆一括競売での優先弁済→抵当権の設定されたもののみ

 土地が更地であったときに土地に抵当権が設定され、その後、抵当権設定者が建物を築造した場合、抵当権者は土地だけを競売にかけることもできるし、また土地と建物を一括して競売にかけることもできます。(民法389条)

 しかし、優先弁済は、土地の代価からしか受けられません。つまり、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できることになります。(民法389条但書)

●法定地上権

・法定地上権も借地借家法の適用を受けるため、存続期間は当事者の合意がなければ30年になります。(借地借家法3条)

・地代は、当事者の協議で定まらないときは裁判所が決定します。(388条但書)

・法定地上権は、建物の敷地のほか、その利用に必要な土地にも認められるとされています。(大審院・大正9.5.5)


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