Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の基本確認7系 法定地上権の参考問題
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | × | ○ | × | × |
Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。法定地上権に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か×か。(行政書士の過去問) |
1.「抵当権設定当時甲地にA所有の建物が建っていたが、Aが抵当権設定後この建物
を取り壊して旧建物と同一規模の新建物を建てた場合、新建物のために法定地上権は
成立しない。」
【正解:×】
◆同一規模の新建物の再築(判例)
抵当権者Bは、抵当権設定時に、法定地上権がつくことを承知の上、土地を評価していたので、新たに旧建物と同一規模の建物が築造されてもBに特別の損害が生じるわけではなく、不利益はない、と考えられます。(大審院・昭和10.8.10)
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2.「抵当権設定当時甲地にA所有の建物が建っていたが、Aが抵当権設定後この建物
をDに譲渡し、Dのために甲地に賃借権を設定した場合、この建物のために法定地上権
は成立しない。」
【正解:×】
◆(四つの要件を満たして)借地権のついた建物にも法定地上権は成立する Dのために甲地の借地権という土地使用権が設定されていますが、抵当権設定後の借地権は抵当権者に対抗できないため(平成16年4月1日の民法改正施行前に対抗要件を備えていた短期賃借権や抵当権者の同意の登記を得た賃借権を除く)、抵当権が実行されるとDの借地権は存続できなくなります。このため、 この場合にも、Dの保護のため、法定地上権は成立すると解されています。(大審院・大正12.12.14)
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3.「抵当権設定当時甲地にはE所有の建物が建っていたが、抵当権設定後この建物を
Aが買い受け、抵当権実行当時この建物はAの所有となっていた場合、この建物のため
に法定地上権は成立しない。」
【正解:○】
◆抵当権設定時に土地と建物が同一人所有ではない場合には、法定地上権は成立しない
本肢のような場合、判例では、抵当権設定時に同一の所有者に土地と建物が帰属していない以上、法定地上権は成立しないとしています。(最高裁・平成2.1.22,昭和44.2.14など)
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4.「Bのための一番抵当権設定当時甲地は更地であったが、Fのために二番抵当権が
設定される前に甲地に建物が建てられた場合、Fの申立てに基づいて土地抵当権が
実行されたときは、この建物のために法定地上権が成立する。」
【正解:×】
◆一番抵当権設定当時を基準に法定地上権の成立は決定される(判例) ◆更地に抵当権設定しても,法定地上権は成立しない 法定地上権が成立するには、抵当権設定当時に、既に建物が存在していることが要件です。(最高裁・昭和36.2.10,昭和47.11.2など) 土地に複数の抵当権が設定された場合、判例では、土地の1番抵当権設定時を基準に、法定地上権の成立を考えるべきとしています。(最高裁・平成2.1.22) 二番抵当権者が競売の申立てをしても、一番抵当権設定当時の状況を基準にして法定地上権が成立するかどうかを考えるので、本肢の場合は、法定地上権は成立しません。
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5.「抵当権設定当時甲地にはA所有の建物が建っていたが、この建物が地震で倒壊
したため、抵当権者の承諾を得て建物を建築することになっていた場合、競売後に
建物が建築されれば、その建物のために法定地上権が成立する。 」
【正解:×】
◆抵当権実行段階で建物が存在しない場合には、法定地上権は成立しない 法定地上権は、建物を保護するための制度であり、抵当権実行段階でその建物がなければ、法定地上権は認められません。 本肢のように、抵当権者の承諾を得て建物を建築することになっていたとしても、競売後に建物を築造することを甲地の競落人Cがその事情を知りうる立場にいるとは限らず、Cの保護も考える必要があります。 このため、本肢の場合、法定地上権は成立しないと考えられます。
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●法定地上権の要件 |
・法定地上権も借地借家法の適用を受けるため、存続期間は当事者の合意がなければ30年になります。(借地借家法3条) ・地代は、当事者の協議で定まらないときは裁判所が決定します。(388条但書) ・法定地上権は、建物の敷地のほか、その利用に必要な土地にも認められるとされています。(大審院・大正9.5.5) |