Brush Up! 権利の変動篇
請負の過去問アーカイブス 請負と瑕疵 昭和52年
●基本問題 |
注文者は,完成した目的物の瑕疵が隠れたるものでなくても,瑕疵担保責任を追及できる。(司法試験択一・平成8年) |
【正解:○】 請負人の担保責任は,「隠れたもの」でなくてもその責任を追及することができます。(634条〜640条) |
請負契約に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和52年) |
1.「目的物を第三者に譲渡した後は,注文者は,瑕疵の修補請求はできない。」 |
2.「目的物に瑕疵がある場合,注文者は,その瑕疵の修補が可能であっても,修補を請求しないで,損害賠償を請求することができる。」 |
3.「目的物が建物その他土地の工作物である場合でも,重大な瑕疵があって契約をなした目的を達することができなければ,注文者は,契約を解除することができる。」 |
4.「請負人が仕事に着手した後では,注文者は,契約を解除することができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「目的物を第三者に譲渡した後は,注文者は,瑕疵の修補請求はできない。」 |
【正解:×】 ◆瑕疵の修補請求(判例) 仕事の目的物に瑕疵があるときは,注文者は請負人に対して,『相当の期限を定めて瑕疵の修補請求をする』ことができます。〔その瑕疵が重要ではないにもかかわらず,修補に過分の費用がかかる場合は,損害賠償請求のみできます。〕(634条) 請負の注文者には,この瑕疵担保責任を追及する権利が契約上の地位から認められており,この権利は注文者によって放棄されるか,担保責任の存続期間〔除斥期間〕が満了するまで行使することができます。(大審院,大正4.12.28) 注文者が目的物を第三者に譲渡しても,注文者は請負人に瑕疵の修補請求や修補に代わる損害賠償請求をすることができるので,本肢は×になります。
▼担保責任の存続期間が満了しているかどうか書いてありませんが,一般論として尋ねているとお考えください。 |
●関連問題 |
請負人の担保責任において,注文者が目的物を第三者に譲渡した後は,注文者は目的物の瑕疵の修補請求や瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求することはできない。(司法試験択一・昭和60年) |
【正解:×】 |
2.「目的物に瑕疵がある場合,注文者は,その瑕疵の修補が可能であっても,修補を請求しないで,損害賠償を請求することができる。」 |
【正解:○】 ◆瑕疵に代わる損害賠償請求 目的物に瑕疵がある場合,注文者は,その瑕疵の修補が可能であっても,修補を請求しないで,直ちに損害賠償を請求することができます。(最高裁,昭和54.3.20) |
●関連問題 |
注文者が完成した目的物の瑕疵を知らなかったことにつき過失があっても,請負人は担保責任を負わなければならない。(司法試験択一・平成8年) |
【正解:○】 請負人の担保責任は,注文者が善意無過失でなくても,追及することができます。 |
3.「目的物が建物その他土地の工作物である場合でも,重大な瑕疵があって契約をなした目的を達することができなければ,注文者は,契約を解除することができる。」 |
【正解:×】 ◆瑕疵と解除 瑕疵が重大なため契約の目的を達成できないときには,注文者は,契約を解除することができます。(635条) ただ,注文者は瑕疵を理由としては解除できないのであって,請負人の帰責事由による債務不履行があれば,当然のことながら,債務不履行による解除をすることはできます。 |
4.「請負人が仕事に着手した後では,注文者は,契約を解除することができない。」 |
【正解:×】 ◆請負の着手後の解除 請負人が仕事に着手した後でも,仕事が完成する前であれば,注文者は,損害賠償をすることによって,契約を解除することができます。(641条) 請負人が仕事に着手した後であっても,注文者がその仕事が不要であると考えたならば,解除できるようにしています。判例も,この641条による解除は,債務不履行による解除とは別であるとしています。(大審院,大正7.2.20) 無理に完成させて注文者に不利益を与えなくても〔不要ならば完成しても撤去しなければならない場合もあり,その場合費用がかさむ〕,請負人に損害賠償させれば,請負人も不利益は蒙らないわけです。
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●関連問題 |
請負契約において,請負人は,仕事の完成するまでの間,いつでも,注文者の受ける損害を賠償すれば,その契約を解除することができる。(司法試験択一・昭和58年) |
【正解:×】 請負の仕事が完成するまで,損害賠償することにより,理由を問わず,いつでも解除できるのは注文者であって請負人ではありません。 |