Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
請負に関する問題1 平成6年・問8
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
Aが建設業者Bに請け負わせて木造住宅を建築した場合に関する次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。(平成6年・問8) |
1.「Aの報酬支払義務とBの住宅引渡義務は、同時履行の関係に立つ。」
【正解:○】 請負契約は、長期間に渡ることも多く、その間に工事発注者が破産したり、逆に請け負い代金を受領した請負業者が破産して、工事途中に雲ガクレすることもあります。 そのような不利益を防止するため、請負報酬の支払義務と目的物の引渡義務は、同時に行うもの(「同時履行の抗弁権」という)と規定されています(民法第633条)。 |
●瑕疵修補義務に代わる損害賠償義務-同時履行の抗弁権 |
1.「建物の建築請負契約の請負人が,瑕疵修補義務に代わる損害賠償義務について,その履行の提供をしない場合,注文者は,当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。」(平成11年・問8・肢3) |
【正解:○】
瑕疵修補義務に代わる損害賠償義務と請負報酬の支払いは同時履行の関係にあり、請負人が賠償しないときは、請負報酬の支払いを拒むことができます。(判例・最高裁・平成9.2.14) |
2.「Aは、住宅の引渡しを受けた場合において、その住宅に瑕疵があり、契約をした目的
を達成することができないときは、引渡しを受けた後1年内であれば、その契約を解除する
ことができる。」
【正解:×】 契約の解除によって完成した建物等を除去することは、請負人にとっては過酷であり、また社会経済的にも損失が大きいため、「建物その他土地の工作物」については、“瑕疵の修補”か“損害賠償の請求”に限られ、たとえ引渡し1年以内であっても、解除権の行使は認められていません(第635条但し書き)。 |
3.「Bは、引き渡した住宅に瑕疵があるときは、原則として引渡し後5年間瑕疵担保責任を
負うが、この期間は、AB間の特約で10年にまで伸ばすことができる。」
【正解:○】 土地の工作物の請負人は、その瑕疵について、 ・その引渡しの「5年間」 ・石造、土造、煉瓦造、金属造などの場合は「10年間」 は責任を負わなければなりません(第638条1項)。 しかし、「5年」という期間は、特約によって、債権の消滅時効期間(第167条1項)である「10年間」まで伸長することができます(第639条)。 ≪参考≫ 住宅品確法での「瑕疵担保責任の特例」 新築住宅の取得契約(請負/売買 平成12年4月1日以降の契約)において、基本構造部分(柱や梁など住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分)について10年間の瑕疵担保責任(修補請求権等)が義務づけられます。 対象となる部分 新築住宅の基本構造部分 *基礎、柱、床、屋根等 請求できる内容 修補請求 *民法上の売買契約には明文化されていません。 賠償請求 解 除 *売買契約の場合で修補不能な場合に限ります。 (これらに反し住宅取得者に不利な特約は不可) 瑕疵担保期間 完成引渡から10年間義務化 (短縮の特約は不可) 2 新築住宅の取得契約(請負/売買)において、基本構造部分以外も含めた瑕疵担保責任が特約を結べば20年まで伸長可能になります。 http://www.shoujikensetu.com/sinpou/sinpou.html ※ 民法での瑕疵担保の規定との違いとしては、「住宅品確法」で規定されているのは、 「基本構造部分」についてであり、特約がなければ、「基本構造部分」以外は、民法の規 定どおりになります。 |
4.「Bは、瑕疵担保責任を負わないとする特約をAと結ぶこともできるが、その場合でも、B
が瑕疵の存在を知っていて、Aに告げなかったときは、免責されない。」
【正解:○】 瑕疵担保責任は、原則として任意規定(当事者が自由に決められる)のため、「瑕疵担保責任を負わない」という特約も有効です。 しかし、建設業者Bが瑕疵を知っていて告げなかったときは、その不誠実さのゆえに許されず、Bは責任を免れること(免責)はできません(第640条)。 |
●関連問題 |
請負人の担保責任において,注文者の与えた指示により目的物に瑕疵が生じた場合でも,請負人がその指図が不適当なものであることを知って,これを注文者に告げなかったときは,注文者は請負人に対して損害賠償を請求することができる。(司法試験択一・昭和45年) |
【正解:○】 注文者の指図によって目的物に瑕疵が生じた場合は,原則として請負人の担保責任は生じませんが,その指図が不適当であることを知っていながら告げなかった場合には,請負人は担保責任を免れることができません。(第636条) |