Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

請負に関する問題3 請負人の担保責任・解除


【正解】

× × ×

請負契約に関する次のそれぞれの記述は、民法の規定によれば○か、×か。
ただし、担保責任に関する特約はないものとする。(昭和52年)

1.「目的物を第三者に譲渡した後は、注文者は、瑕疵の修補請求はできない。」

【正解:×

 民法では、請求する期間を定めているだけで、第三者に譲渡した後でも、注文者は、瑕疵の修補請求をすることはできます。

 請負人の担保責任(瑕疵の修補請求、損害賠償の請求、契約の解除)の存続期間は、引渡したときから1年内です。(民法637条)

土地の工作物や地盤の瑕疵の場合は、原則として5年、木造以外は10年。(民法638条1項)

 (滅失・毀損した場合を除いて、特約で伸長することも短縮することもできる。伸長する場合は10年を限度とする)(民法639条)

土地の工作物が、瑕疵のために滅失または毀損したときは、その時から1年。 (民法638条2項)

売買契約の瑕疵担保責任と違うのは、次の2点です。

・瑕疵は隠れた瑕疵に限らないこと。

・注文者の善意・無過失は不要であり、瑕疵を知らないことについて注文者に過失があったとしても、請負人は担保責任を負います。

仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は請負人に対して相当の期限を定めてその瑕疵の修補請求をすることができます。(民法634条1項)

 ただし、その瑕疵が重要ではないのに過分の費用がかかるものには、瑕疵の修補請求をすることができません。この場合は、損害賠償の請求ができます。 

 注文者が修補請求をする場合には、修補がされるまでの間、同時履行の抗弁権が認められ、報酬全額の支払いを拒絶できるものとされています。(判例)

瑕疵が注文者の供した材料、指図に起因している場合には、請負人に担保責任は発生しません。ただし、請負人がその材料や指図が不適当であることを知っていた場合には担保責任を問われることになります。(民法636条)

請負人が担保責任を負わないと特約をすることもできます。ただし、請負人が知っていて注文者に告げない事実については、責任を免れることはできません。)(民法640条)

2.「目的物に瑕疵がある場合、注文者は、その瑕疵の修補が可能であっても、修補を

請求しないで、損害賠償を請求することができる。」

【正解:

 目的物に瑕疵があるときの

 損害賠償請求

 (民法634条2項)

 瑕疵の修補に代わる損害賠償請求
 瑕疵の修補と共に損害賠償請求

 『瑕疵の修補請求をしないで、損害賠償請求』、『瑕疵の修補請求+損害賠償請求』のどちらもできます。

3.「目的物が建物その他土地の工作物である場合も、重大な瑕疵があって契約を

なした目的を達することができなければ、注文者は、契約を解除することができる。」

【正解:×

 請負契約では、目的物に瑕疵がある場合は、注文者は以下の三つの法的な措置がとれます。

・修補請求権 (民法634条1項) 

・損害賠償請求権 (民法634条2項)

・契約解除権  (民法635条)

その瑕疵が重要ではないのに過分の費用がかかるものを除く。

 重大な瑕疵があって契約をした目的を達成できなければ、注文者は、契約を解除することができますが、民法635条但書では建物その他土地の工作物については、瑕疵があり契約をした目的が達成できなくても注文者は解除できないとしています。

4.「請負人が仕事に着手した後では、注文者は、契約を解除することができない。」(平成2)

【正解:×

 注文者はその仕事が不要となっても契約をした以上は解除できないとすると、注文者は相当な不利益を被ることになります。

 民法では、注文者は、請負人が仕事を完成するまでは、請負人に損害賠償をしていつでも解除できることになっています。 (民法641条)

仕事が完成すれば、目的物の引渡しがなくても解除することはできません。(大審院・昭和7.4.30)

給付が可分で、その給付が当事者に利益を有するならば、すでに完成した部分については解除はできません。(大審院・昭和7.4.30) 

●請負契約での解除
債務不履行での解除

注文者の任意解除

 注文者は、契約成立後〜仕事完成するまでは、請負人に損害賠償をしていつでも解除できる。(民法641条)

注文者について破産手続開始の決定があったときは、請負人・(注文者の)破産管財人は契約の解除をすることができる。(民法642条)


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