Brush Up! 宅建業法篇

正解・解説

手付金等の保全措置に関する問題4 平成9年・問39


【正解】

×

 宅地建物取引業者Aは、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建築工事完了前の分譲住宅の売買契約(代金 5,000万円、手付金 200万円、中間金 200万円)を締結した。この場合に、宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置に関する次の記述は、○か×か。

1.「Aは、手付金を受け取る時点では、宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等

の保全措置 (以下この問において「保全措置」という。)を講じる必要はない。」

【正解:

 Aが受け取った手付金 200万円は、5,000万円×0.05=250万円 より低い金額のため、

代金の5パーセント以下かつ1,000万円以下を満たしています。

このため、手付金 200万円の保全措置は不要になります。

●類題

1.「宅地建物取引業者Aは、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建築工事完了前の分譲住宅の売買契約を締結した。手付金の額が1000万円以下の場合で、分譲住宅の本体価額(売買代金の額から消費税及び地方消費税に相当する額を控除した額)の5パーセントを超えていても売買代金の額の5パーセント以下である場合には、Aは、保全措置を講じる必要はない。」(平成9年・問44・肢4改題)

【正解:ヒッカケ問題

 消費税+地方消費税については、売買代金の一部として取り扱われる為、税込みの金額をベースに保全措置を講じるかどうかを判断します。(平成元年・建設省通達 / 国土交通省・宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)

★土地には、消費税は課税されないことに注意。

 したがって、手付金の額が1,000万円以下であり、かつ、消費税を含めた代金の5パーセントを超えていなければ、保全措置を講じる必要はありません。

 本問は、数学の問題ではないので、ここまで思い起こせばよく、計算する必要は全くありません。

<納得できない人は>

 しかし、この説明では納得いかない人もいるかもしれないので、計算してみると、確かにこのような範囲の金額が存在することがわかります。

 売買代金 = 本体価額+その消費税

として考えます。

 本体価額の5パーセント 手付金等 ≦ 売買代金の額の5パーセント

 例えば、本体価額2,000万円の分譲住宅の場合では(そんなに安いのはないだろう…という突っ込みはナシ)、売買代金2,100万円であり、

 本体価額の5パーセント=100万円

 売買代金の額の5パーセント=105万円

となり、確かに、100万円  手付金等 ≦ 105万円 という不等式が成立します。

 本問で言っている範囲は、金額\1,000,001から\1,050,000を示しているわけです。

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省)
その他の留意すべき事項

2 消費税等相当額の扱いについて

法第32条、第38条、第39条、第41条及び第41条の2等の規定の適用に当たっては、売買、賃借等につき課されるべき消費税等相当額については、「代金、借賃等の対価の額」の一部に含まれるものとして取り扱うものとする。なお、割賦販売については、法第35条第2項の規定に基づき、現金販売価額と割賦販売価額が区分されている場合で、契約書に分割支払に係る利子額を記載したときは、その利子の額については、非課税となる。

また、法第37条第1項第3号又は第2項第2号の規定により、宅地建物取引業者は、契約を締結したときは、遅滞なく、「代金の額」又は「借賃の額」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、消費税等相当額は、代金、借賃等の額の一部となるものであり、かつ、代金、借賃に係る重要な事項に該当するので、「代金の額」又は「借賃の額」の記載に当たっては、「当該売買、貸借等につき課されるべき消費税等相当額」を明記することとなる。また、交換については、「交換差金の額」に関する事項として、「当該交換につき課されるべき消費税等相当額」を明示することとなる。同様に、法第34条の2第1項第5号又は法第34条の3の規定により、媒介又は代理契約を締結したときは、遅滞なく「報酬に関する事項」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、その記載に当たっては、当該報酬の額に含まれる消費税等相当額に関する事項についても記載することとなる

なお、譲渡、賃貸等に課されるべき消費税等相当額は、法第47条第1号の重要な事項に該当することとなるので、宅地若しくは建物の売買、交換又は貸借の各当事者に対して故意に事実を告げず、又は不実のことを告げた場合には、法第47条違反となる

 また、消費税法第63条の2の規定により、不特定多数の一般消費者に対して物件価格、賃料等を表示する場合は、譲渡、賃貸等に係る消費税等相当額を含んだ額を表示しなければならないことに留意すること。

2.「売買契約で手付金が解約手付であることを定めておかなかった場合でも、Aが契約

の履行に着手していなければ、Bは、手付を放棄して契約の解除をすることができる。」

【正解:

宅建業法39条2項の規定そのままです。

2 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても当事者の一方が契約の履行に着手するまでは買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

3 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

3.「売買契約で「手付放棄による契約の解除は、契約締結後30日以内に限る」旨の

特約をしていた場合でも、契約締結から45日経過後にAが契約の履行に着手していな

ければ、Bは、手付を放棄して契約の解除をすることができる。」

【正解:

 この特約は、買主に不利な特約と考えられ、無効です。(39条3項)39条2項の規定どおりに、自ら売主の宅建業者が契約の履行に着手していなければ、宅建業者ではないBは、手付を放棄して契約の解除をすることができます。

4.「契約締結時の2月後で分譲住宅の引渡し及び登記前に、Aが中間金を受け取る場合

で、中間金を受け取る時点では当該分譲住宅の建築工事が完了していたとき、Aは、

手付金及び中間金について保全措置を講じる必要はない。」

【正解:×

 未完成物件の保全措置と完成物件の保全措置のどちらを講じなければならないかは、契約締結時期に完成していたかどうかで判断します(国土交通省・宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)

 中間金を受け取る時点では当該分譲住宅の建築工事が完了していても、契約締結当時にどうだったのかが、基準になります。本問では、契約締結当時には未完了であったため、<未完了物件の保全措置>を考えなければいけません。

 契約締結時は、工事完了前

 代金 5,000万円、手付金 200万円、中間金 200万円

 分譲住宅の引渡し及び登記前に、Aが中間金を受け取る

 本問での手付金は肢1より保全措置は不要でした。
中間金を受け取る前に保全措置を講じる必要があるかどうかを決めるには、
中間金だけで判断するのではなく、手付金+中間金が保全措置を講じる必要がある金額なのか判断なければなりません。

代金の5パーセント以下かつ1,000万円ならば、保全措置を講じる必要はありませんが、

手付金 200万円+中間金 200万円=400万円 > 代金の5パーセント250万円

であるため、手付金、及び、中間金について保全措置を講じなければいけません。

保全措置をとらなくてもよい場合(宅建業法41条1項)

・当該宅地若しくは建物について買主への所有権移転の登記がされたとき

・買主が所有権の登記をしたとき

・当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の100分の5以下であり、かつ、1,000万円以下であるとき

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省)
第41条第1項関係

宅地の造成又は建築に関する工事の完了について

 宅地の造成又は建築に関する工事が完了しているか否かについては、売買契約時において判断すべきであり、また、工事の完了とは、単に外観上の工事のみならず内装等の工事が完了しており、居住が可能である状態を指すものとする。


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