法令上の制限 基礎編
形態規制・容積率
●容積率の定義と緩和措置
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | × | ○ | ○ | × |
<前提となる基礎知識> 延べ面積・・・建築物の各階の床面積の合計。 容積率・・・延べ面積/敷地面積 (延べ面積の算出やセット・バックには注意。) |
次のそれぞれの容積率の記述は、建築基準法の規定によれば○か、×か。 |
1.「容積率で延べ面積を算出する時に用いる<各階の床面積>とは、各階又は
その一部で壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積のことを
言う。」
【正解:×】
◆各階の床面積の定義 容積率で延べ面積を算出する時に用いる<各階の床面積>とは、各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積のことを言います。(建築基準法施行令・2条) <参考> 区分所有建物の専有部分の床面積を計算する時には、壁、柱などの区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積で算出します。 |
2.「一定の建築物の地階で住宅の用途に供する部分の床面積については、
当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の 1/4を限度として、
容積率に係る建築物の延べ面積に算入しない。」H8-24-2 【類題】H11-21-1
【正解 : ×】 ◆「地階にある住居用途の床面積」で「建築物の住居部分の1/3分」は、 延べ面積に不算入 その天井が地盤面から高さ1m以下にある(→地階の天井位置が地盤面より上) 地階の<住宅の用途に供する部分>の床面積 については 、 <当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の1/3>を限度として、 <容積率計算での延べ面積>に算入しません。 (兼用住宅でなければ、つまり、住居のみに使う住宅ならば、地階の床面積を 容積率計算での延べ面積に算入しません) 52条3項
地階の床面積が建物の延べ面積に算入されない限度は、住宅部分の床面積の 合計の4分の1ではなく「3分の1」です。このため、本設問は×になります。 例えば、地上2階建ての直方体の住宅であり、1階部分と同じ面積の地階であれば そっくりそのまま、延べ面積に算入されないため、地階も作ることができます。 <念のため> 地階が事務所や店舗になっているときは、この緩和措置は適用されません。 |
3.「駐車・駐輪の用途に供する部分は、敷地内の全ての建築物の各階の床面積
の合計の1/5を限度として、容積率計算での延べ面積に算入されない。」
【正解:○】
◆敷地内の全ての建築物の各階の床面積合計の1/5分の車庫面積は 延べ面積に不算入 本設問の記述の通りです。 敷地内に2つ以上建築物がある場合にも適用されます。(施行令2条・1項4号、3項) ●容積率計算での延べ面積 =全ての建築物の各階床面積合計−全ての建築物の各階床面積合計×1/5分 の車庫面積 |
4.「容積率の算定に当たっては、共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供す
る部分の床面積は、その建築物の延べ面積には算入しない。」 H11-21-2
【正解:○】
◆共同住宅の共用の廊下、階段は延べ面積に不算入 共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は、 その建築物の延べ面積には算入しません。(52条5項)註 平成17年6月より52条6項 ・共用廊下 ・共用階段(階段に代わる共用の車椅子用のスロープ等を含む) ・エレベーター・ホール(エレベーターそのものは、延べ面積に算入します) ・エントランス・ホールなど |
5.「工業地域又は工業専用地域内にある建築物であれば、容積率は、前面道路
の幅員による制限を受けない。」 H3-23-4
【正解:×】
◆前面道路の幅員の数値による容積率 容積率は、前面道路の幅員の数値による制限を受けます。 これは、原則として、どの用途地域でも同じであり、本設問は×になります。 <もっと詳しく> 当該建築物の前面道路(2つ以上あるときは、幅員の最大のもの)の幅員が12m未満の場合、
で求められた基準容積率と都市計画で定められた容積率の2つのうち 比較してどちらか小さい(厳しい)数値に、容積率は制限されます。(52条2項) |
<特定行政庁の許可による容積率の緩和> 特定行政庁が交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないものと認めて、 許可した次の建築物は、特定行政庁の許可の範囲内で、都市計画に定められた 容積率の最高限度を超えることもできます。(52条13項)註 平成17年6月より52条14項 <敷地の周囲に広い公園、広場、道路、その他の空地を有する建築物> <同一敷地内の建築物の機械室、その他これに類する部分の床面積が 著しく大きい場合> → 敷地内に広い空地を有する建築物についても一定の要件で、容積率・高さの 緩和措置があります。これも特定行政庁の許可が必要です。(59条の2) <特定行政庁の許可不要な容積率の緩和>(52条7項)註 平成17年6月より52条8項 その全部又は一部を住宅の用途に供する建築物で以下の条件に該当するものは、用途地域に関する都市計画で定める容積率の1.5倍を限度として、容積率を緩和して適用する。(以下の二つの要件をともに満たさなければいけません) 1) 用途地域 住居地域(第一種・第二種)・準住居地域・近隣商業地域若しくは準工業地域 (高層住居誘導地区および特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く) 商業地域(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く) 2) 敷地の規模と空地 → 施行令135条の15 その敷地内に政令で定める規模以上の空地(道路に接して有効な部分が政令で定める規模以上であるものに限る)を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上であること。 ただし、地方公共団体は、土地利用の状況等を考慮し、条例で、政令に定める数値の範囲内で空地や敷地面積の規模を別に定めることができます。 ※ 容積率の緩和措置について → 全体像だけ把握しておきましょう 容積率の緩和措置には、実はこれ以外にも、さまざまなものがあります。 近年の法改正で創設された86条2項の連担建築物設計制度(既存建築物があり、新たに建築物を建てるときに、これらの敷地を一団の敷地とみなして一定の制限をかける)や 特例容積率適用地区内の容積率の特例(57条の2第3項) (特定行政庁が指定した区域内では、敷地ごとに都市計画で定められた容積率と異なる容積率を敷地単位で再指定するもの) 特定道路までの延長距離に応じて容積率が緩和されるもの(52条9項)、住居系の 用途地域及び特定行政庁の指定区域内で壁面線の指定又は壁面の位置の制限が ある場合の容積率の緩和(52条10項)など数え上げればキリがなく、法令集持ち込み 可の建築士を受験するわけでもないので、今回は指摘するだけにとどめておきます。 |