税法その他 基礎編

印紙税の問題1 印紙税の基本的なしくみ

正解・解説


【正解】

× × ×

印紙税に関する次の記述は○か、×か。

1.「土地売買の仲介を行ったA社が<A社は、売主B社の代理人として土地代金1億

円を受領した>という旨を記載のうえ、買主に交付した領収証に課税される印紙税の

納税義務者は、B社である。」H11-28-3

【正解:×

◆納税義務者=「課税文書」の作成者

 委任に基づく代理人が代理人名義で作成する課税文書の作成者はその代理人です。(基本通達43条)

 本肢での土地売買の仲介を行った社は 『社は,売主社の代理人として土地代金1億円を受領した』 という旨を記載して,買主に領収証を交付しているので,納税義務者は代理人である社です。委任者である社ではありません。

印紙税の課税対象は、契約の成立を直接証明する目的で作成された文書(契約書・領収書など)です。また、1の課税文書を2人以上が共同して作成した場合は、作成者は連帯納付義務を負います。

 営業に関する領収書(3万円以上の場合に課税)課税文書

 領収書を作成したのは営業者のA社

<注意>混同注意! 文書による課税の違い

 3万円未満の営業に関する領収書(受取書)は非課税です。

 しかし、売買などの契約書は一万円未満が非課税です。←注意

 (号数については豆知識参照)

 1号文書 契約書作成 → 不動産の売買契約書

 17号文書 営業に関する3万円未満の領収書は非課税

●不動産の売買契約

  印紙税は、売買についての契約書 + 領収書 の2段階あることに注意。

<ケース・1> 売買金額が二万円

  1号文書 契約書作成 → 不動産の売買契約書 一万円以上のため、課税。

  17号文書 営業に関する3万円未満の領収書は非課税

<ケース・2> 売買金額が一万円未満

 1号文書 契約書作成 → 不動産の売買契約書 一万円未満のため、非課税。

 17号文書 営業に関する3万円未満の領収書は非課税

●消費税等を含む総額表示と印紙税

・1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)

・2号文書(請負に関する契約書)

・17号文書(金銭または有価証券の受取書)

 上記の課税文書で,本体価格と消費税の金額を区分して記載している場合には,記載金額は本体価格になります。領収書(17号文書)の例で見てみましょう。17号文書では記載金額が3万円未満では非課税ですが,総額表示の場合,記載の仕方により課税・非課税の違いが出てきます。

<具体例(本体価額が29,000円の場合)>

 ・30,450円(本体価格29,000円、消費税等1,450円) → 記載金額29,000円 非課税

 ・30,450円(うち消費税等1,450円) → 記載金額29,000円 非課税

 ・30,450円(税抜価格29,000円)  → 記載金額29,000円 非課税

しかし,同じ総額表示でも以下の場合は消費税等を含めたものが記載金額になります。

 ・30,450円(税込) → 記載金額30,450円 3万円以上なので課税

 ・30,450円   → 記載金額30,450円 3万円以上なので課税

 → 消費税と印紙税についての解釈通達(平成元年3月10日)

   消費税と印紙税についての解釈通達(平成16年2月19日)

2.「個人が生活の用に供している自宅の土地建物を譲渡し、代金1億円を受け取っ

た際に作成する領収証には、印紙税は課税されない。」H11-28-1

【正解:

◆営業に関しない領収書

 営業に関しない領収書は、金額とは無関係に非課税です。

3.「不動産の売買契約書に印紙をはり付ける場合には、その文書と印紙の彩紋とに

かけて判明に消印しなければならないが、その消印は必ず文書の作成者の印章又は

署名により行わなければならない。」H4-29-4

【正解:×

◆消印(条文では「印紙を消す」と表現しています。)

 文書の作成者自身の印章又は署名により消印を行う必要はありません。

 課税文書の作成者の<代理人・使用人その他の従業員>の印章又は署名によって行ってもかまいません。

【類題】H11-28-3

4.「国とD社とが共同で土地の売買契約書(記載金額 5,000万円)を2通作成し、

双方で各1通保存する場合、D社が保存するものには、印紙税は課税されない。」

H9-28-2

【正解:

◆国などが作成した契約書は非課税

 国と私人が売買契約を結んだ場合、以下のようになります。

 私人が保存する契約書国が作成したもの→非課税

 国が保存する契約書私人が作成したもの→課税

 これは、国のほかにも、地方公共団体、日本道路公団、地方住宅供給公社、住宅金融公庫などの場合も同じです。

5.「建物の売買契約書(記載金額 2,000万円)を3通作成し、売主A、買主B及び

仲介業者C社が各1通を保存する場合、契約当事者以外のC社が保存するもの

は、印紙税は課税されない。」H9-28-1

【正解:×

◆仲介業者が保存する文書にも課税される

 同一内容の契約書を正本・原本とともに写し・副本・謄本など名称を問わず、併せて2通以上作成して、契約当事者の署名・押印のあるものや、正本と相違のないことの証明がある場合、契約書として扱われます。課税文書ならば、その文書の1通ごとに印紙税が課税されます

 『契約当事者以外の者に提出又は交付する文書等』については原則として課税文書には該当しないとされていますが,不動産の売買契約における仲介人は「契約当事者以外の者」に含まれていないので,本肢での仲介業者社が保存する契約書は課税文書であり,印紙税が課税されます。

 したがって、契約当事者以外のC社が保存するからといって、印紙税が非課税というわけではありません。

【類題】H12-27-3、H4-29-1

<注意>仮契約書も課税されます

 「印紙税が課税される契約」についての仮契約書も立派な契約書。課税されます。

【類題】

 「不動産の売買契約書を2通作成し、1通には正本、他の1通には副本と表示した

場合、副本には、印紙税は課税されない。」H4-29-1

【正解:×

◆正本、副本、謄本など

 上述の理由により、課税されます。

<豆知識> 課税文書

 実は、印紙税の課税される文書は、宅建に関係するものでは、次のように分類されています。(印紙税法・別表)

 1号の1 不動産の譲渡に関する契約書 

 1号の2 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書

 1号の3 消費貸借に関する契約書

 2  号 請負に関する契約書

 17号の1 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書 → 営業に関する領収書

 17号の2 金銭又は有価証券の受取書で1に掲げる受取書以外のもの 

 (非課税とされる文書も、実はこの表の下の欄に書いてあるのです。)

●非課税になる文書
契約書(譲渡・地上権設定・請負など)  1万円未満が非課税
営業に関する領収書(金銭・有価証券)  3万円未満が非課税
営業に関しない領収書  金額によらず、非課税


引き続き、印紙税の問題2を解く

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