宅建過去問 権利の変動篇 

相続の過去問アーカイブス 平成14年・問12 単純承認と限定承認,相続放棄


相続の承認及び放棄に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。  (平成14年・問12)

1 相続の放棄をする場合,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

2 相続人が数人あるときは,限定承認は,共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

3 相続人が,自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月(家庭裁判所が期間の伸長をした場合は当該期間)以内に,限定承認又は放棄をしなかったときは,単純承認をしたものとみなされる。

4 被相続人の子が,相続の開始後に相続放棄をした場合,その者の子がこれを代襲して相続人となる。 

【正解】

×

 正答率  87.2%

1 相続の放棄をする場合,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

【正解:
◆相続放棄の手続 

 相続の開始によって相続人には三つの選択肢があります。相続放棄・限定承認・単純承認、このうちのどれをとるかは相続人の自由です。

 相続人は,自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に、単純相続・限定承認・相続放棄をしなければならない。(相続の選択)

 但し,この期間は利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所は伸長することができる。(915条1項)

 → 相続の承認・放棄は、相続開始後にするべきものです。相続の開始前(被相続人の生前)にその意思表示をしても無効です。

 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所において申述しなければならず(938条)、その受理審判によって相続放棄の効力が生じます

 相続放棄をするとはじめから相続人にならなかったものとみなし(939条)、代襲相続もできなくなります。

 このように、相続放棄は相続人のカウントに重大な影響が出るため、詐欺や強迫・制限能力による場合を除いて、一度受理された相続放棄は取消すことができません(919条1項、最高裁・昭和37.5.29)

相続の承認 単純承認  債務と相続財産を無条件・無制限に引き継ぐ

 相続人は相続分のほかに相続人固有の財産を出してでも
 被相続人の債務全部を弁済しなければならない無限責任
 負う。

限定承認  債務のうち相続財産を超える部分の弁済義務は
 引き継がない

 相続人は、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務
 の負担を受け継ぐ。清算して最終的にプラスになるのか、
 マイナスになるのかわからないときに用いる相続方法です。

 マイナスの財産>プラスの財産・・・不足分を支払う必要がない

 マイナスの財産<プラスの財産・・・残りがあれば引き継ぐ

 相続の放棄  債務や相続財産の一切を引き継がない。

相続人は,相続の承認や放棄をするまでの間,その固有財産におけるのと同一
の注意をもって、相続財産を管理しなければならないと定められています。(918条)

2 相続人が数人あるときは,限定承認は,共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

【正解:
◆限定承認

 限定承認の定義・・・相続によって得る財産の限度においてのみ、被相続人の債務および遺贈についての責任を負うことを留保して、相続の承認をすること。

 限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に、相続の放棄をした者を除く共同相続人全員が共同して(923条)、財産目録を調製して家庭裁判所に提出し、その旨の申述をして行わなければいけません。(924条)

詐欺や強迫・行為能力の制限による場合を除いて、相続の承認や放棄一度受理されると取消すことができません(919条1項、最高裁・昭和37.5.29)

3 相続人が,自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月(家庭裁判所が期間の伸長をした場合は当該期間)以内に,限定承認又は放棄をしなかったときは,単純承認をしたものとみなされる。

【正解:
◆熟慮期間内に相続放棄も限定承認もしないときは、単純承認したことになる・・・法定単純承認

 相続人が,自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月(家庭裁判所が期間の伸長をした場合は当該期間。熟慮期間といわれます。)以内に、限定承認又は相続放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます。(921条2号) 

 法定単純承認になる三つのケース (民法921条)

・相続の放棄も限定承認もしないうちに熟慮期間が経過した。⇒平成14年・問12・肢3,

・相続人が相続の選択をする前に、相続財産の全部または一部を処分した。⇒平成19年・問12・肢2,

・限定承認や相続の放棄をした後でも,相続財産の全部または一部を隠匿し,私に消費し,または悪意で財産目録に記載しなかったとき。

4 被相続人の子が,相続の開始後に相続放棄をした場合,その者の子がこれを代襲して相続人となる。 

【正解:×
◆相続放棄のときは、代襲相続できない

 被相続人
   
 被相続人の子 相続放棄
   
 相続放棄した者の子 → 代襲相続することはできない

 相続放棄は代襲原因にならないので、相続放棄をした者の子は代襲相続人にはなれません。

 代襲相続の原因 →  死亡・廃除・欠格事由 (887条2号)

                 相続放棄は、代襲原因にならない

代襲相続

 被相続人の死亡以前に、相続人となるはずの「子」・「兄弟姉妹」が相続権を失ったとき(死亡・廃除・欠格事由)に、その者(被代襲者)の直系卑属(相続人となるはずの者が兄弟姉妹のときはその子に限る)がその者に代わって相続すること。(ただし、代襲相続人は被相続人の直系卑属でなければならないことに注意。)


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