Brush Up! 権利の変動篇
弁済の過去問アーカイブス 平成17年・問7
第三者の弁済・債権の準占有者への弁済・弁済の提供・弁済供託
Aは、土地所有者Bから土地を賃借し、その土地上に建物を所有してCに賃貸している。AのBに対する借賃の支払債務に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか 。(平成17年・問7) |
1.「Cは、借賃の支払債務に関して法律上の利害関係を有しないので、Aの意思に反して、債務を弁済することはできない。」 |
2.「Aが、Bの代理人と称して借賃の請求をしてきた無権限者に対し債務を弁済した場合、その者に弁済受領権限があるかのような外観があり、Aがその権限があることについて善意、かつ、無過失であるときは、その弁済は有効である。」 |
3.「Aが、当該借賃を額面とするA振出しに係る小切手 (銀行振出しではないもの) をBに提供した場合、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。」 |
4.「Aは、特段の理由がなくとも、借賃の支払債務の弁済に代えて、Bのために弁済の目的物を供託し、その債務を免れることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
正答率 | 76.2% |
1.「Cは、借賃の支払債務に関して法律上の利害関係を有しないので、Aの意思に反して、債務を弁済することはできない。」 |
【正解:×】判例 債務の弁済は,第三者もすることができるが,法律上の利害関係を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済をすることはできない(民法474条1項)。 判例では,借地上の建物(借地人A所有)を賃借しているCは,AのBに対する地代の弁済について,法律上の利害関係を有するとしているので(判例,昭和63.7.1),当事者ABの間で第三者の弁済を許さない旨の特約をしていない限り,債務者Aの意思に反しても,第三者の弁済をすることができる(民法474条2項)。したがって,本肢は誤りである。 |
2.「Aが、Bの代理人と称して借賃の請求をしてきた無権限者に対し債務を弁済した場合、その者に弁済受領権限があるかのような外観があり、Aがその権限があることについて善意、かつ、無過失であるときは、その弁済は有効である。」 |
【正解:○】 債権者の代理人として請求をしてきた無権限者に弁済した場合は,債権の準占有者に対する弁済の規定(民法478条)が適用され(最高裁,昭和37.8.21),弁済受領権限があるかのような外観があり,弁済者がそのことに善意無過失ならば,その弁済は効力を有するので,正しい。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/bensai-ans4.html |
3.「Aが、当該借賃を額面とするA振出しに係る小切手 (銀行振出しではないもの) をBに提供した場合、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。」 |
【正解:×】初出題・新判例 弁済の提供は,債務の本旨(内容・場所・時期など)に適合するものでなければならない(民法493条本文)。 判例では,<個人振出しの小切手で弁済の提供をした場合は,当事者間での特約や慣習などがない限り,債務の本旨に従った適法な弁済の提供とはならない(小切手は不渡りになることがあるから)。>としているので誤りである(最高裁,昭和35.11.22)。 |
4.「Aは、特段の理由がなくとも、借賃の支払債務の弁済に代えて、Bのために弁済の目的物を供託し、その債務を免れることができる。」 |
【正解:×】初出題 債権者が弁済の受領を拒み,又はこれを受領することができないときは,弁済者は,債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる(民法494条本文)。 しかし,本肢では,<特段の理由がなくても、・・・供託し、その債務を免れることができる。>としているので,誤りである。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/bensai-ne2.html |
●講評 |
正解肢の肢2は,代理人と称する者への弁済は初出題であるが,類題が,(債権の準占有者への弁済)昭和55年・問12・肢3,平成11年・問5・肢3(受取証書の持参人に対する弁済)昭和62年・問11・肢4,平成5年・問6・肢3,で出題歴があるので,正解に達するのは容易である。 また,肢4は1000本ノックでも,既に学習済みであることから,見ていた人はさほど迷うことはなかったと思われる。 |