Brush Up! 権利の変動篇
物権変動の対抗要件・解除の過去問アーカイブス 平成17年・問8
Aは、自己所有の甲地をBに売却し、代金を受領して引渡しを終えたが、AからBに対する所有権移転登記はまだ行われていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(平成17年・問8) |
1.「Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をCに対抗できない。」 |
2.「Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへのの所有権移転登記がなされた後、CがDに対して甲地を売却しその旨の所有権登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をDに対抗できない。」 |
3.「AB間の売買契約をBから解除できる事由があるときで、Bが死亡し、EとFが1/2ずつ共同相続した場合、E単独ではこの契約を解除することはできず、Fと共同で行わなければならない。」 |
4.「AB間の売買契約をAから解除できる事由があるときで、Bが死亡し、EとFが1/2ずつ共同相続した場合、Aがこの契約を解除するには、EとFの全員に対して行わなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をCに対抗できない。」 |
【正解:×】 A (被相続人,譲渡人)− B (譲受人) Cは,Aの相続人として,甲地の売主としての地位を承継している。相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合であっても,このことに変わりはなく,Cは売主の相続人,Bは買主として当事者の関係にあり,対抗関係には立たない。 したがって,Bは,登記をしていなくても,甲地の所有権をCに対抗でき,売主としての義務の履行(引渡し・移転登記)をCに求めることができるので誤り。 |
2.「Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへのの所有権移転登記がなされた後、CがDに対して甲地を売却しその旨の所有権登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をDに対抗できない。」 |
【正解:○】 A (被相続人,譲渡人)− B (Aから甲地を譲り受けた) 判例では,AとCは同一人とみなして,Aから譲渡を受けたBとCから譲渡を受けたDは互いに対抗関係に立ち,二重譲渡と同じく,登記をしなければ対抗することができないとした(昭和33.10.14)。 本肢でのBは所有権移転登記をしていないので,登記のあるDに対抗することはできないので,正しい。 |
3.「AB間の売買契約をBから解除できる事由があるときで、Bが死亡し、EとFが1/2ずつ共同相続した場合、E単独ではこの契約を解除することはできず、Fと共同で行わなければならない。」 |
【正解:○】 E┐ 当事者の一方が数人ある場合には,契約の解除は,その全員から又はその全員に対してのみ,することができる(民法544条1項)。肢3は,解除権を行使する側が複数の場合である。 買主Bの相続人であるE,Fはそれぞれ単独で契約を解除することはできず,E,Fが共同して解除しなければならないので正しい。 |
4.「AB間の売買契約をAから解除できる事由があるときで、Bが死亡し、EとFが1/2ずつ共同相続した場合、Aがこの契約を解除するには、EとFの全員に対して行わなければならない。」 |
【正解:○】 ┌ E 肢4は,解除権を行使される側が複数の場合である。 相手方(買主Bの相続人E,F)が複数いるので,売主Aは,E,Fに対して解除権を行使しなければならない(民法544条1項)。したがって,正しい記述である。 |