Brush Up! 権利の変動篇
使用貸借の過去問アーカイブス 平成17年・問10
Aは、自己所有の建物について、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定のもとに、使用貸借契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(平成17年・問10) |
1.「Bが死亡した場合、使用貸借契約は当然に終了する。」 |
2.「Aがこの建物をCに売却し、その旨の所有権移転登記を行った場合でも、Aによる売却の前にBがこの建物の引渡しを受けていたときは、Bは使用貸借契約をCに対抗できる。」 |
3.「Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。」 |
4.「適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な時間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
正答率 | 57.5% |
1.「Bが死亡した場合、使用貸借契約は当然に終了する。」 |
【正解:○】平成9年・問8・肢3,平成13年・問6・肢2 ◆借主の死亡による使用貸借の終了 使用貸借では,借主の死亡により契約の効力を失う(民法599条)。賃貸借では賃借権は相続されるが,使用貸借では使用借権は相続されない。 |
2.「Aがこの建物をCに売却し、その旨の所有権移転登記を行った場合でも、Aによる売却の前にBがこの建物の引渡しを受けていたときは、Bは使用貸借契約をCに対抗できる。」 |
【正解:×】関連・平成9年・問8・肢1 ◆第三者(借用物の譲受人・抵当権者等)への対抗力はない 使用貸借は貸主・借主間の対人関係に基づいて行われ,使用借権には第三者への対抗力はない【使用貸借を登記することはできない】ので,借用物(使用貸借の目的物)が第三者に売却されたり,担保権の実行等で競落されると借主は対抗できない。したがって,誤りである。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/rent-ans8.html |
3.「Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。」 |
【正解:○】初出題 ◆借主は,第三者に借用物を使用・収益させることはできない 借主は,貸主の承諾を得なければ,借用物の一部であっても,第三者に借用物の使用や収益をさせることはできない(民法594条2項)。借主がこれに違反すると貸主は契約の解除をすることができる(民法594条3項)。 |
4.「適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な時間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。」 |
【正解:○】初出題 ◆借用物の返還の時期 この使用貸借は,<適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定>があるので,返還の時期の定めのないものである。 返還の時期の定めのない場合の貸主からの返還請求については,次の3通りに分けられる。
本肢では,適当な家屋が現実に見つかる以前であっても,適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な時間を経過した場合,AはBに対し,この建物の返還を直ちに請求できることになる(民法597条2項但書,最高裁・昭和34.8.18)。 ▼民法上の賃貸借では,存続期間の定めがない場合,貸主・借主ともいつでも解約の申入れができるが,一定の予告期間を経過することによって終了する(民法617条)。 |
●講評 |
正答率57.5%は使用貸借の問題としては,比較的高い正答率であるといえる。単に過去問出題事項のみを学ぶのではなく,関連項目まで学習する必要性があるのは,この問題からも指摘することができる。 使用貸借の問題は,これまで,昭和53年,昭和61年・問2・肢2,昭和61年・問14・肢2,平成9年・問8,平成13年・問6・肢2,平成16年・問12・肢2で出題があった。 肢3・肢4は初出題だが,使用貸借には第三者への対抗力はないことを理解していれば,正解肢の肢2を見出すことは容易である。 なお,使用貸借には,借地借家法は適用されない。(昭和61年・問14・肢2) |