Brush Up! 権利の変動篇
民法総則・通則・基本原則の過去問アーカイブス 平成18年・問1 基本原則
次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。 (平成18年・問1) |
1.「契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。」 |
2.「民法第1条第2項が規定する信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であり、信義誠実の原則に反しても、権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない。」 |
3.「時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。」 |
4.「所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはない。」 |
<コメント> | |
民法では,民法総則(第一編)に,通則をおき,私権の行使や民法解釈の基準としています。これまでは,真正面から出題されることはありませんでした。 ただ,公務員試験や行政書士試験などのほかの試験では頻出問題でした。 最近は,民法の基本といえるものでもそれまで出題のなかったものが出題されることが宅建試験では多くなりました。今後も注意する必要があるでしょう。 |
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●出題論点● | |
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【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
正答率 | 25.5% |
1.「契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。」 |
【正解:×】 契約をするかどうか,どのように契約を締結するかについて交渉している当事者間には,相手方に損失を与えないように注意する義務があるといわれています。 例えば,相手方が契約が成立することは間違いないと考えて成立締結に備えて準備をしている場合に,こちらから一方的に契約しないと通告したようなときに,相手方に損害が生じれば,損害賠償しなければならないことがあります。 判例では, 「契約の交渉段階に入ると,契約が締結されるかどうかに関係なく,相互に相手方の人格や財産を害しない信義則上の義務を負う。 と認めました(最高裁・昭和59.9.18)。 したがって,本肢は誤りです。 |
2.「民法第1条第2項が規定する信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であり、信義誠実の原則に反しても、権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない。」 |
【正解:×】 債務などの義務の履行や権利の行使には,信義誠実の原則が適用され,制約を受けます。義務の履行や権利の行使には,相互の信頼関係が基本になるからです。 したがって,本肢は誤りです。 |
3.「時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。」 |
【正解:×】
時効の援用をすることが,場合によっては,信義誠実の原則に違反したり,権利の濫用になることがあります(判例)。 したがって,本肢は誤りです。 |
4.「所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはない。」 |
【正解:○】 法律で定められた権利を行使するにしても,通常の社会倫理を逸脱して,権利を行使することが,権利の濫用にあたる場合があります(判例)。 所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはありません。 ▼権利を行使することが権利の濫用にあたり,相手方の権利を侵害するのであれば,相手方から逆に損害賠償請求されることにもなりかねません。 |