Brush Up! 権利の変動篇

共有の過去問アーカイブス 平成18年・問4 


A、B及びが、持分を各3分の1として甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。  (平成18年・問4)

1.「甲土地全体がによって不法に占有されている場合、は単独でに対して、甲土地の明渡しを請求できる。」

2.「甲土地全体がによって不法に占有されている場合、は単独でに対して、の不法占有によって及びに生じた損害全額の賠償を請求できる。」

3.「共有物たる甲土地の分割について共有者間に協議が調わず、裁判所に分割請求がなされた場合、裁判所は、特段の事情があれば、甲土地全体をの所有とし、から及びに対し持分の価格を賠償させる方法により分割することができる。」

4.「が死亡し、相続人の不存在が確定した場合、の持分は、民法958条の3の特別縁故者に対する財産分与の対象となるが、当該財産分与がなされない場合は及びに帰属する。」

<コメント>  
 この問題では,過去問にも出題例があることから,正解を導くのは容易であったと思われます。
 共有は出題される論点も少ないので,確実にとっておきたいところです。

 1000本ノックでの共有
 http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/kyouyu-top.html
●出題論点●
 

【正解】

×

 正答率  75.3%

1.「甲土地全体がによって不法に占有されている場合、は単独でに対して、甲土地の明渡しを請求できる。」

【正解:平成13年・問1・肢3
◆共有物の保存行為 (平成13年・問1・肢3)

  共有物の保存行為は,共有者のうちの1人が単独ですることができます(民法252条但書)

  共有物の保存行為とは,「共有物の修繕など」のほか,「共有物の侵害に対する妨害排除請求」や「不法占拠者に対する返還請求」も含まれます(判例)。

(共有物の変更)
第251条
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加える
ことができない。

(共有物の管理)
第252条
 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の
価格に従い、その過半数で決する。
ただし、保存行為は、各共有者がすることができる
●関連過去問
●平成13年・問1・肢3

 A・B・Cが,持分を6・2・2の割合とする建物を共有している。
この建物をが不法占有している場合には,B・Cは単独でに明渡しを求める
ことはできないが,なら明渡しを求めることができる。

【正解】×

2.「甲土地全体がによって不法に占有されている場合、は単独でに対して、の不法占有によって及びに生じた損害全額の賠償を請求できる。」

【正解:×平成6年・問3・肢3
◆共有物についての損害賠償請求 

  共有者のうちの1人は,単独で,持分権の割合に応じて損害賠償請求をすることはできますが,他の共有者の分も含めて,全員の損害賠償請求をすることはできません(最高裁,昭和41.3.3)  

●関連過去問
●平成6年・問3・肢3

 A・B・Cが別荘を持分均一で共有し,特約はない。
は,不法占拠者に対して単独で明渡請求を行うことができるが,損害賠償の求については,持分の割合を超えて請求することはできない。

【正解】○

3.「共有物たる甲土地の分割について共有者間に協議が調わず、裁判所に分割請求がなされた場合、裁判所は、特段の事情があれば、甲土地全体をの所有とし、から及びに対し持分の価格を賠償させる方法により分割することができる。」

【正解:平成13年・問1・肢4
◆全面的価格賠償 

  共有物の分割について,共有者の間で協議が調わないときは,その分割を裁判所に請求することができます(民法258条1項)

  この場合に,裁判所は,共有者の実質的公平を害しない特段の事情があれば,共有者のうちの1人の単独所有として,他の共有者にその持分の価格を賠償させる方法で分割させることができます(最高裁,平成8.10.31)

●関連過去問
●平成13年・問1・肢4

 A・B・Cが,持分を6・2・2の割合とする建物を共有している。

 裁判による共有物の分割では,に建物を取得させ,からB・Cに対して適正価格で賠償させる方法によることは許されない。

【正解】×

4.「が死亡し、相続人の不存在が確定した場合、の持分は、民法958条の3の特別縁故者に対する財産分与の対象となるが、当該財産分与がなされない場合は及びに帰属する。」

【正解:
◆相続人がいない場合の持分権の帰属 

 相続人がいない
    ↓
 特別縁故者がいない
    ↓
 他の共有者に帰属

 共有者の1人が,相続人がいない場合に,死亡したときは,まずその持分は特別縁故者がいれば,特別縁故者への財産分与の対象になり,特別縁故者がいなければ,他の共有者に帰属します(判例,平成元.11.24)

 民法255条の規定では,「死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」となっていますが,民法では,958条の3に,特別縁故者に対する相続財産の分与の規定があることから,最高裁は,上記のように,裁定しました。

●関連過去問
●昭和60年・問7・肢2

 共有者の1人が相続人なくして死亡したときは,その持分は,国庫に帰属する。

【正解】×

●平成4年・問12・肢

 A・B・C3人の土地の共有(持分均一)。
 が相続人なくして死亡し,特別縁故者に対する財産分与もなされない場合,
 の持分は,及びに帰属する。

 正解・○ 相続人もなく,特別縁故者に対する財産分与もなされない場合なので正しい。 

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第255条
 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第958条の3
 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

2  前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

(相続人の捜索の公告)
第958条
 前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

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