宅建過去問 権利の変動篇
代理の過去問アーカイブス 平成19年・問2 復代理人〔任意代理〕
Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(平成19年・問2) |
1 Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。 |
2 Bが、Bの友人Cを復代理人として選任することにつき、Aの許諾を得たときは、Bはその選任に関し過失があったとしても、Aに対し責任を負わない。 |
3 Bが、Aの許諾及び指名に基づき、Dを復代理人として選任したときは、Bは、Dの不誠実さを見抜けなかったことに過失があった場合、Aに対し責任を負う。 |
4 Bが復代理人Eを適法に選任したときは、EはAに対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負うため、Bの代理権は消滅する。 |
<コメント> |
4肢とも復代理人の出題は昭和53年以来です。問われている論点そのものは難解なものではありませんが,それにしては正答率が低すぎます。正解肢は頻出問題ですから,90%でもおかしくない問題です。「近年出題がなかったので,どうせ勉強していないだろう」と出題者も予想していたでしょう。 |
●出題論点● |
(肢1) 代理人は,1)本人の承諾があるとき,2)やむを得ない事由があるときに限り,復代理人を選任することができる。
(肢2) 代理人は,復代理人を選任したときは,その選任及び監督について,本人に対してその責任を負う。 (肢3) 代理人は,本人の指名に従って復代理人を選任したときは,原則として,その選任及び監督について責任を負うことはない。ただし,代理人は,復代理人が不適任または不誠実であることを知りながら,その旨を本人に通知しなかったり,復代理人を解任することを怠ったときは,その選任及び監督について責任を負う。 (肢4) 代理人が復代理人を選任しても,代理人がもともと有していた代理権は消滅しない。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
正答率 | 72.3% |
1 Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。 |
【正解:○】昭和55年・問2・肢2,昭和56年・問3・肢3,平成12年・問1・肢2,平成13年・問8・肢4,〔参考〕法定代理 昭和63年・問2・肢1,複委任平成7年・問9・肢4, 任意代理では,代理人は,1)本人の承諾があるとき,または,2)やむを得ない事由があるとき〔本人が行方不明のときや非常時で本人の承諾を得ることができない場合など〕に限り,復代理人を選任することができます(民法104条)。 したがって,Bは,やむを得ない事由があるときは,Aの許諾を得なくとも,復代理人を選任することができます。
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●復代理人の選任 (「復任」ともいう) |
任意代理では,代理人が,本人の承諾もやむを得ない事由もないのに,復代理人を選任した場合に,復代理人が本人の代理として行った行為は,無権代理行為になります。 |
2 Bが、Bの友人Cを復代理人として選任することにつき、Aの許諾を得たときは、Bはその選任に関し過失があったとしても、Aに対し責任を負わない。 |
【正解:×】<関連>法定代理 昭和58年・問2・肢2, 任意代理では,代理人は,(本人の承諾ややむを得ない事由により)復代理人を選任したときは,その選任及び監督※について,本人に対してその責任を負います(民法105条1項)。 したがって,「代理人Bは,本人Aの許諾を得たときは,復代理人Cの選任に関し過失があったとしても,Aに対し責任を負わない。」とする本肢は誤りです。 ※例えば,復代理人が本人に損害を与えた場合に,復代理人の選任・監督について代理人に過失があった場合にのみ,代理人が責任を負うということです。復代理人の選任・監督について代理人に過失がなければ,代理人が責任を負うことはありません。
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3 Bが、Aの許諾及び指名に基づき、Dを復代理人として選任したときは、Bは、Dの不誠実さを見抜けなかったことに過失があった場合、Aに対し責任を負う。 |
【正解:×】 任意代理では,代理人は,本人の指名に従って復代理人を選任したとき※は,:原則として,その選任及び監督について責任を負うことはありません。 ただし,代理人は,復代理人が不適任または不誠実であることを知りながら,その旨を本人に通知しなかったり,復代理人を解任することを怠ったときは,その選任及び監督について責任を負うことになります(民法105条2項)。 本肢の場合,代理人Bは,Dが不誠実であることを知らなかったのですから,見抜けなかったことに過失があっても,本人Aに対して責任を負うことはありません。 ※この場合,代理人は,本人の指名によって復代理人を選任したのですから,代理人自身が自分の裁量で選任した場合と同じ責任(肢2参照)をとらされたのではたまったものではありません。 |
●関連過去問 |
1 代理人Bが本人Aの指名に従って復代理人Cを選任した場合には,BはAの同意がなければCを解任することはできない。(司法試験,昭和51年改) |
【正解 :×】
復代理人の選任は,本人の指名があった場合も,代理人自身の権限によって行うものです。 したがって,本人の指名があった場合でも,代理人自身の権限によって復代理人を解任することができます。 |
4 Bが復代理人Eを適法に選任したときは、EはAに対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負うため、Bの代理権は消滅する。 |
【正解:×】昭和59年・問4・肢4, 「Bの代理権は消滅する」が誤りです。 代理人が復代理人を選任しても,代理人がもともと有していた代理権は消滅しません〔代理人の代理権と復代理人の代理権は併存します〕。※ 復代理人は,代理人が自己の権限内の行為を行わせるために選任するものであり,「本人の代理人」であり,本人や第三者に対して,代理人と同一の権利を有し,義務を負います(民法107条1項,2項)。 ※ただし,代理人の代理権が消滅すれば,復代理人の代理権も消滅すると解されています。復代理人の代理権は,代理人の代理権がなければもともと存在しなかったものからです。 委任代理での代理権は,(1)本人の死亡,(2)代理人の { 死亡,破産手続開始の決定,後見開始の審判 },(3)委任の終了 によって,消滅します(民法111条)。 |
●復代理人の権限 |
復代理人の代理権は,代理人の代理権に基づいているので,代理人の代理権の範囲を超えることはできません。復代理人の代理権の範囲は,代理人の代理権の範囲内で,代理人によって定められます。
このため,復代理人が,(1)代理人の代理権の範囲を超える行為をした場合や,(2)代理人によって定められた復代理人の代理権の範囲を超える行為をした場合は,無権代理行為になります。 |
●関連過去問 | |
1 復代理人は代理人により選任されるのであるから,代理人の代理権の範囲をこえる権限をもつことはできない。(宅建,昭和53年) 2 復代理人は代理人の名のもとに行動し,直接本人とは代理関係に立たない。(宅建,昭和53年) |
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【正解 : 1○,2×】
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