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共有の過去問アーカイブス 平成19年・問4 共有 


A、B及びCが、持分を各3分の1とする甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。  (平成19年・問4)

1 共有者の協議に基づかないでから甲土地の占有使用を承認されたは、の持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。

2 及びが甲土地について、と賃貸借契約を締結している場合、が合意すれば、の合意はなくとも、賃貸借契約を解除することができる。

3 及びは、5年を超えない期間内は甲土地を分割しない旨の契約を締結することができる。

4 がその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰属する。

<コメント>  
 
●出題論点●
 (肢1)  共有者から承認を得た第三者の占有使用

 (肢2) 賃貸借契約の解除は持分の多数決 (管理行為)

 (肢3) 最長5年間の共有物の不分割特約

 (肢4) 持分を放棄したときは,他の共有者に帰属する

【正解】4

×

 正答率  82.9%

1 共有者の協議に基づかないでから甲土地の占有使用を承認されたは、の持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。

【正解:初出題
◆共有者から承認を得た第三者の占有使用

 判例によれば,共有者の協議に基づかないで,共有者の一部の者から共有物の占有使用を承認された第三者は,その承認をした共有者の持分に基づくものと認められる限度で,共有物を占有使用することができる(その権原がある)とされています(民法249条,最高裁・昭和63.5.20)

この判例は,以下の判例の判断を一歩進めたものです。

 もともと,各共有者は,持分による制限はあるものの,共有物の全部について占有使用する権原を持っているので,共有者の一人が協議に基づかずに,勝手に共有物を単独で占有使用していても,他の共有者〔持分の過半数を有している者であっても〕は,その共有者に対して,当然には,共有物の明渡し請求をすることはできない(民法249条,最高裁・昭和41.5.19)平成13年・問1・肢2出題

 ⇒ 他の共有者は,その持分割合に応じて,共有物を単独で占有使用している共有者に対し賃料に相当する不当利得の返還請求をすることができる(最高裁・平成12.4.7)

 協議に基づかずに単独で占有使用している者に対しても,当然には,明渡し請求することはできないのですから,共有者の一部の者から共有物の占有使用を承認された第三者に対しても,当然には,共有物の明渡し請求をすることはできないことになります。

2 及びが甲土地について、と賃貸借契約を締結している場合、が合意すれば、の合意はなくとも、賃貸借契約を解除することができる。

【正解:平成3年・問5・肢2,

◆賃貸借契約の解除

 共有物の賃貸借契約の設定(最高裁・昭和38.4.19)や解除(最高裁・昭和39.2.25)は,共有物の管理行為に該当するとされています。

 共有物の管理については,持分の価格の過半数で決定〔多数決〕されるので,持分がそれぞれ3分の1とされる本肢の場合,A,B二人が合意すれば,Cの合意がなくても,賃貸借契約を解除することができます(民法252条)

●民法544条1項との関係 
 民法544条では,当事者の一方が複数の場合は,その全員からのみ契約の解除をすることができるとしています。

 しかし,共有物の管理行為は持分の価格の多数決で決まるため,共有物が賃貸借契約の対象の場合には,この民法544条の規定は適用されません。

 (解除権の不可分性)

第544条  当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。

2  前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

3 及びは、5年を超えない期間内は甲土地を分割しない旨の契約を締結することができる。

【正解:昭和63年・問7・肢3,平成3年・問5・肢3,平成15年・問4・肢4,

◆最長5年間の不分割特約

 共有物の分割請求(民法256条1項)いつでもできるのが原則ですが,5年を超えない期間内には分割をしないという取決めを共有者間でしている場合は,その期間内には分割請求をすることはできません。(不分割特約,民法256条1項)

盲点

 不分割特約があっても持分そのものは処分することができるので,持分の特定承継人が現れることがあります。(共有者の1人が自分の持分を第三者に売却など。)

 この特定承継人に対しても,「不分割特約で分割請求はできない」と主張できるでしょうか?

 共有物が不動産の場合は,不分割特約を登記しておかないと特定承継人には対抗できないとされています。つまり登記があれば特定承継人に不分割特約を主張することができます。

 登記申請 ⇒ 平成19年・問16・肢2

4 がその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰属する。

【正解:×

◆持分を放棄したときは,他の共有者に帰属する

 共有者の一人がその持分を放棄したときは,その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)

このほか,共有者の一人が死亡して,相続人も特別縁故者もいないとき,その持分は,他の共有者に帰属します(民法255条,最高裁・平成元.11.24)

持分の放棄による所有権の移転〔持分権の移転登記〕を第三者に対抗するには登記をしておかなければなりません(最高裁・昭和44.3.27)

●関連問題
1.「不動産の共有者の一人が持分を放棄したときは,その持分は国庫に帰属する。」(司法試験・択一・昭和55年)
【正解:×
●類似問題出題歴
共有者の一人が

相続人なくして死亡

共有者の一人が相続人なくして死亡した場合,
特別縁故者(民法958条の3)他の共有者の順に
受け継がれる(最高裁・平成元.11.24)

(特別縁故者がいないときは,持分は他の共有者に帰属する。)

〔相続人なくして死亡したとき〕 ⇒ 平成元年の判例の前の出題。
昭和57年・問8・肢2,昭和60年・問7・肢3,

〔特別縁故者に対する財産分与〕平成18年・問4・肢4,

〔特別縁故者もいないとき〕平成4年・問12・肢3,

共有者の一人が

持分を放棄

持分は,他の共有者に帰属する。

昭和63年・問7・肢4,平成9年・問2・肢2,平成15年・問4・肢3,

平成19年・問4・肢4,

●民法255条と他の規定との関係 ⇒ 読み飛ばしOK
 
 (持分の放棄及び共有者の死亡)

第255条  共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

 民法255条の規定は,共有物の場合の特則です。

 本来,所有者がいない不動産は国庫に帰属し(239条2項)
 また,相続人も特別縁故者もいない相続財産は国庫に帰属するはずですが(959条)

 共有物にこの規定を適用すると,共有物の管理,処分などに国がいちいち関与することになり,手続が煩雑になるので,共有物については,239条2項,959条とも適用されません。

□所有者のいない動産・不動産 (共有物以外)

(無主物の帰属)

第239条  所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

2  所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

□相続人がいない場合 (共有物以外)

(特別縁故者に対する相続財産の分与)

第958条の3  前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

2  前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

相続人の捜索の公告
 家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。

(残余財産の国庫への帰属)

第959条  前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。

 この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。⇒相続財産の管理人は、遅滞なく国に対して管理の計算をしなければならない。


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