宅建過去問 権利の変動篇 

担保責任の過去問アーカイブス 平成19年・問11 瑕疵担保責任 


宅地建物取引業者でも事業者でもないAB間の不動産売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。 (平成19年・問11)

1 売買契約に、隠れた瑕疵(かし)についてのの瑕疵担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、が知りながらに告げなかった瑕疵については、は瑕疵担保責任を負わなければならない。

2 が不動産に隠れた瑕疵があることを発見しても、当該瑕疵が売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないような瑕疵である場合には、は瑕疵担保責任を負わない。

3 が不動産に瑕疵があることを契約時に知っていた場合や、の過失により不動産に瑕疵があることに気付かず引渡しを受けてから瑕疵があることを知った場合には、は瑕疵担保責任を負わない。

4 売買契約に、瑕疵担保責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、が瑕疵担保責任を追及するときは、隠れた瑕疵があることを知ってから1年以内に行わなければならない。

<コメント>  
 
●出題論点●
 (肢1) 売主は,瑕疵担保責任を負わない特約が定められていても,知っていて買主に告げなかった瑕疵については,瑕疵担保責任を負わなければならない。

 (肢2) 瑕疵によって売買契約の目的を達成できないとは言えない場合,買主は契約解除はできないが,損害賠償を請求できる(つまり,この場合でも,売主は,瑕疵担保責任を負わなければならない)。

 (肢3) 瑕疵担保責任を追及できるのは,買主が瑕疵について善意無過失の場合のみ。

 (肢4) 買主が瑕疵担保責任を追及できるのは,事実を知ったときから1年以内。

【正解】2

×

 正答率  75.8%

1 売買契約に、隠れた瑕疵(かし)についてのの瑕疵担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、が知りながらに告げなかった瑕疵については、は瑕疵担保責任を負わなければならない。

【正解:
◆担保責任を負わない旨の特約がある場合

 民法の担保責任の規定は任意規定なので,当事者間で担保責任を負わない特約を定めることができます〔例えば,売主が宅建業者以外の場合,中古住宅の売買契約では現状有姿で担保責任を負わないことが多い〕。

 しかし,民法では,公平を図るために,売主は,担保責任を負わない旨の特約をした場合でも,知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定しまたは第三者に譲り渡した権利※があるときには,その責任を免れることができないとしています(民法572条)

 したがって,売主は,瑕疵担保責任を負わない特約が定められていても,知っていて買主に告げなかった瑕疵については,瑕疵担保責任を負わなければなりません。

自ら第三者のために設定しまたは第三者に譲り渡した権利

 たとえば,売買の目的物に抵当権や地上権が設定されていたり,売買の目的物の全部または一部を第三者に譲渡していた場合のことを言います。

2 が不動産に隠れた瑕疵があることを発見しても、当該瑕疵が売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないような瑕疵である場合には、は瑕疵担保責任を負わない。

【正解:×
◆瑕疵によって売買契約の目的を達成できないとは言えなくても,売主は,瑕疵担保責任を負わなければならない。

 売買の目的物に瑕疵があり,その瑕疵によって売買契約の目的を達成できないときには,買主は,契約を解除することができます。その瑕疵によって売買契約の目的を達成できないとまでいえないときには,買主は,契約を解除をすることはできませんが,損害賠償請求をすることができます(民法570条,566条1項)

 したがって,瑕疵が売買契約をした目的を達成することができないとまではいえない場合でも,売主は,瑕疵担保責任を負うので,本肢は誤りです。

3 が不動産に瑕疵があることを契約時に知っていた場合や、の過失により不動産に瑕疵があることに気付かず引渡しを受けてから瑕疵があることを知った場合には、は瑕疵担保責任を負わない。

【正解:
◆瑕疵担保責任を追及できるのは,買主が瑕疵について善意無過失の場合のみ

 隠れた瑕疵とは,一般の取引で必要とされる程度の注意をしても見つけられなかった瑕疵のことを言います。買主が瑕疵担保責任を追及できるのは,その瑕疵について善意無過失の場合です(民法570条)

 買主が瑕疵について知っていた場合や過失によって瑕疵に気付かなかった場合には,瑕疵担保責任を追及することはできず,売主は瑕疵担保責任を負うことはありません。

4 売買契約に、瑕疵担保責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、が瑕疵担保責任を追及するときは、隠れた瑕疵があることを知ってから1年以内に行わなければならない。

【正解:
◆買主が瑕疵担保責任を追及できるのは,事実を知ったときから1年以内

 瑕疵担保責任を買主が追及できるのは,当事者間で瑕疵担保責任を負う期間について特約のない限り,買主が隠れた瑕疵があることを知った時から1年以内です(民法570条,566条3項)。ただし,損害賠償請求権は,判例により引渡しから10年の消滅時効にかかります〔住宅品確法などで当事者間に10年を超える担保責任の定めがある場合を除く〕。


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