宅建過去問  権利の変動篇

意志表示+物権変動の過去問アーカイブス 平成20年・問2 

物権変動の対抗要件+意志表示

登記をしなければ対抗できない第三者(登記がなくても対抗できる第三者),

無権利者からの譲受人,通謀虚偽表示,解除後の第三者,強迫(取消し前の第三者)


所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(平成20年・問2)

との間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はであって、が各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、は所有者であることをに対して主張できる。

との間で売買契約を締結したが、AB間の所有権移転登記はが通じてした仮装の売買契約に基づくものであった場合、AB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、が所有権移転登記を備えていなければ、は所有者であることをに対して主張できる。

との間で売買契約を締結したが、BE間の売買契約締結の前にの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合、が解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、は所有者であることをに対して主張できる。

4 との間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その後の強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合、による強迫を知っていたときに限り、は所有者であることをに対して主張できる。

<コメント>  
 19年の問1の意志表示,19年の問6の物権変動の問題に続く基本問題の良問。
●出題論点●
 (肢1) 無権利者から譲り受けた者に対しては,登記がなくても,対抗できる

 (肢2) 仮装譲渡〔通謀虚偽表示〕した相手方から取得した第三者が善意であれば,その者に登記がなくても,対抗できない。

 (肢3) 解除後に取得した第三者に対しては,登記がなければ,対抗できない。

 (肢4) 強迫による取消し前に取得した第三者に対しては,その者の善意・悪意に関係なく,対抗できる。

【正解】

× × ×

 正答率  69.8%

との間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はであって、が各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、は所有者であることをに対して主張できる。

【正解:
◆登記がなくても対抗できる第三者・無権利者から譲り受けた者も無権利者

   移転登記    移転登記 
  ――――― ―――――

       書類を偽造して
       移転登記
        ↓
       無権利者

 は書類を偽造して自らに登記を移しているので,は無権利者です。は無権利者に対して登記がなくても対抗できます。

 から甲土地を譲り受けたもまた無権利者ですから,に対して登記がなくても対抗できます〔は所有者であることをに対して主張できる。〕(最高裁・昭和34.7.24)

KEY  書類を偽造して移転登記したなどの無権利者に対しては,
 登記がなくても,所有者であることを主張できる。

との間で売買契約を締結したが、AB間の所有権移転登記はが通じてした仮装の売買契約に基づくものであった場合、AB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、が所有権移転登記を備えていなければ、は所有者であることをに対して主張できる。

【正解:×
◆意志表示・仮装譲渡の相手方から転得した善意の第三者

   通謀虚偽表示    善意無過失
  ――――――― ―――――――
               移転登記

 との間の通謀虚偽表示による所有権の移転は当事者間では無効です(民法94条1項),仮装譲渡の相手方が第三者に売却したことにより第三者が現れると,話が違ってきます。

 第三者は,との間の通謀虚偽表示であることに善意であれば〔善意無過失でなくてもよい〕Dへの移転登記がなくても,保護されます(民法94条2項,最高裁・昭和44.5.27)

 したがって,は,善意のに対して,登記がないことを理由に,自分が所有者であることを主張することはできません。

との間で売買契約を締結したが、BE間の売買契約締結の前にの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合、が解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、は所有者であることをに対して主張できる。

【正解:×
◆物権変動の対抗要件・解除後の第三者

 が解除      -の契約締結

 ――――――――――――――

               2)契約締結
  ――――――― ―――――
   1)解除     

      (解除による所有権の復帰)
   
 
   \
     E (売買契約を締結)       

 との売買契約を解除したと解除後の第三者とは,を起点とした二重譲渡と同様に考え, (解除した旨の登記) (からへの所有権移転登記)のどちらが先にその登記を得たかによって,その優劣が決まります(大審院・昭和14.7.7,最高裁・昭和35.11.29)

 要するに先に登記を得た者が勝ちということですから,「解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、は所有者であることをに対して主張できる。」とする本肢は誤りです。

●「解除した旨の登記」
 本肢でいう「解除した旨の登記」という表現は,以下の表現を引き継いだものです。

 平成19年・問6・肢2 「売主が当該契約を適法に解除した場合,売主は,その旨の登記をしなければ,当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。」 【正解 :

 「解除した旨の登記をした」とは,具体的には,<登記義務者,登記権利者として,所有権移転登記〔登記原因が解除(債務不履行による解除)を,したこと>を意味しています。は,解除をしたことで,に対する登記請求権があります。

4 との間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その後の強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合、による強迫を知っていたときに限り、は所有者であることをに対して主張できる。

【正解:×
◆意志表示・強迫による取消し前の第三者

 強迫により      -の契約締結
 契約締結      所有権移転登記     取消し

 ――――――――――――――――――――

    1)強迫         
  ――――――― ―――――――
    3)取消し        2)移転登記

 強迫による意志表示の取消しは,取消し前の善意の第三者にも対抗することができます(民法96条3項の反対解釈)

 つまり,取消し前の第三者が強迫について善意か悪意かということに関係なく,所有者であることをに対して主張できるので,本肢は誤りです。

詐欺による取消しの場合,取消し前の第三者は,善意であれば,登記がなくても保護されます(民法96条3項)

 が詐欺により    -の契約締結
 契約締結      所有権移転登記     取消し

 ――――――――――――――――――――

    1)詐欺         
 ――――――― ―――――――
    3)取消し        2)移転登記

 Zは,詐欺について善意であれば(有過失でもよい)登記がなくても,保護される


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