Brush Up! 権利の変動篇

共有の過去問アーカイブス 共有(昭和55年・問6)


民法の共有に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和55年・問6)

1.「各共有者は,その持分の範囲内であれば,単独で共有物に変更を加えることができる。」

2.「各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができる。」

3.「各共有者は,単独で共有物の保存行為をすることができる。」

4.「共有者の1人が持分を放棄したときは,その持分は他の共有者に属す。」

【正解】

×

●共有物の保存・管理・変更
 保存行為  共有物の現状を維持する行為  単独でできる
 管理行為  使用方法の協議

 利用行為 (収益を図る)

 改良行為 (経済的価値を増加)

 共有者の持分の価格に従い,

 その過半数で決定する

 変更行為  物理的な変更

 法律的な処分

 全員の同意が必要

1.「各共有者は,その持分の範囲内であれば,単独で共有物に変更を加えることができる。」

【正解:×
◆共有物の変更

 各共有者は,他の共有者全員の同意がなければ,共有物に変更を加えることはできません。(251条)

 したがって,単独で共有物に変更を加えることはできません。

「変更」とは…

 ・共有物の性質または形状を物理的に変化させる。〔本肢の場合〕

 ・法律的に処分する。〔共有物自体の売却,担保を設定する等。〕

2.「各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができる。」

【正解:
共有物の使用は持分に応じたもの

 各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができます。(249条)具体的な使用方法は,共有者で協議しますが,この使用方法の協議は管理行為になり,各共有者の持分の価格に従いその過半数で決します。(252条)

3.「各共有者は,単独で共有物の保存行為をすることができる。」

【正解:
◆保存行為

 共有物の現状を維持するための以下の行為は、他の共有者の同意を得なくても、各共有者が単独ですることができます(252条)

・共有物の補修・修繕
・共有物の侵害に対する妨害排除請求
・不法占拠者に対する返還要求
・所有権保存登記

4.「共有者の1人が持分を放棄したときは,その持分は他の共有者に属す。」

【正解:
共有者の一人が持分を放棄→その持分は他の共有者に帰属

 共有者の1人が,その持分を放棄したとき又は相続人なくして死亡したときは,その持分は他の共有者に帰属します。(255条)

共有者の1人が,その持分を放棄
共有者の1人が,相続人なくして死亡したとき
(ただし,特別縁故者がいない場合)
   その持分は他の共有者に帰属

判例では,共有者の一人が相続人なくして死亡した場合、特別縁故者(958条の3)他の共有者の順に受け継がれるとしています。(最高裁・平成元.11.24) 

 平成4年の問題では、「特別縁故者に対する財産分与もなされない場合」となっており、この判例が出たことによって出題の仕方が変わっていることがわかります。

●関連問題
1.「不動産の共有者の一人が持分を放棄したときは,その持分は,国庫に帰属する。」(宅建試験・昭和60年・問7)
【正解:×

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