Brush Up! 権利の変動篇

抵当権の過去問アーカイブス 昭和41年

抵当権の効力・付加一体物・従物・物上代位


抵当権の効力の及ばないものは,次のうちどれか。(昭和41年)

1.「ある土地に抵当権が設定されている場合において,その土地の上に存する家屋」

2.「ある家屋に抵当権が設定されている場合において,抵当権設定当時すでにその家屋の中にあった障子,畳」

3.「ある土地に抵当権が設定されている場合,その土地の売却代金」

4.「ある家屋に抵当権が設定されている場合,その家屋が焼失したときの保険金」

【正解】

×

●問題を解く基本事項

【正解:

1) 370条の附加一体物

 抵当権の効力は,抵当不動産だけでなく,抵当地の上に存する建物を除いて,「その目的たる不動産に附加してこれと一体を成したる物」にも及びます。(民法370条)
 つまり,抵当不動産の一部〔構成部分〕になっているものには,抵当権の効力が及びます。
 ただし,当事者の合意で特定の附加一体物に抵当権の効力が及ばないとすることもできます。(民法370条但し書)

 本問題では,
 ・肢1 抵当地の上の建物には抵当権の効力は及ばない
 ・肢2 抵当権設定当時にあった障子,畳〔従物〕は抵当権の効力が及ぶ (判例)
 この2点がポイントです。

●附加一体物になるもの
 附合物  附合した時期が抵当権設定の前後を問わず
 特約で別段の定めがなければ,抵当権の効力が及ぶ。
 抵当権設定後の従物  抵当権設定当時に存在していれば,
 (特約で別段の定めがなければ)抵当権の効力が及ぶ。(判例)

 【参考】 抵当権設定の前後を問わず
 特約で別段の定めがなければ,抵当権の効力が及ぶ。(通説)

2) 物上代位 

 抵当権では,同一性が認められる限り,抵当権の目的物が売却・滅失・毀損・賃貸によって抵当不動産の所有者が受けるべき,『目的物に代わるもの』に対しても,その効力が及びます。これを物上代位といいます。(372条による304条の準用)

 目的物に代わるものとしては,火災保険金請求権不法行為に基づく損害賠償請求権土地収用の補償金替地賃料〔転貸賃料は判例で否定されている。(最高裁・平成12.4.14)〕・売買代金 などがあります。 

 ただし,抵当権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをすることが必要です。(372条による304条の準用) 

 本問題では,このうちの「売却代金」(肢3),「火災保険金請求権」(肢4)が出題されました。


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