Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の過去問アーカイブス 昭和43年
一括競売・建物の売却代金の帰属・法定地上権
Aは,Bのために自己所有の更地に抵当権を設定した後,その土地に家屋を建築した。その後,Bは,抵当権を行使しようとしている。次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和43年)改 |
1.「抵当権は,家屋には及ばないので,Bは,土地しか競売に付することができず,競落後は,Aに地上権が生じる。」 |
2.「Bは,土地とともに家屋も競売に付することができるが,優先権は,土地の代価についてしか行使することができない。」 |
3.「Bは,土地とともに家屋も競売に付することができ,優先権も土地及び家屋の代価について行使することができる。」 |
4.「抵当権は,家屋には及ばないので,Bは,土地しか競売に付すことができないが,競落後は,Aに地上権は生じない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
●問題を解く基本事項 |
1) 土地に抵当権設定後に,家屋を建築 → 法定地上権は生じない。 法定地上権が生じるのは,抵当権設定時に土地及びその上の建物が同一の所有者に属していて,競売に付された結果,土地と建物の所有者が異なることになった場合に,生じます。本問題では,抵当権設定時に家屋はなかったので,法定地上権は生じません。 したがって,肢1は×になります。 法定地上権 → 抵当権設定時に,土地の上に建物が存在し,同一の所有者のとき。 2) 一括競売 → 更地に抵当権を設定してその後建物が築造されたとき
更地に抵当権設定 建物を築造 抵当権の実行(競売)
―――●―――――――――●―――――――●―――――→ 抵当権設定時に建物がなく,その後抵当地に建物が建てられたときは,抵当権者は,建物の所有者が土地所有者自身でもまた第三者でも,原則として,土地と建物を一括して競売することができます。一括競売をするかどうかは任意です。 〔旧389条は,抵当権設定者自身が建物を築造した場合に限定していましたが,法改正により,この制限がなくなり,建物所有者が抵当権者に対抗できる敷地利用権を有する場合を除いて,建物所有者が抵当権設定者自身でなくても,一括競売できるようになりました。〕 一括競売で優先弁済を受けられるのは,土地の売却代金からのみです。建物の売却代金は建物所有者に帰属します。 したがって,「土地しか競売に付することはできない」という肢1,肢4は×になります。また,「優先権も土地及び家屋の代価について行使することができる」とする肢3も×になります。 |
●抵当権設定前に築造された建物は,誰が築造したとしても一括競売することはできない |
条文上は,抵当権設定当時に,すでに建物が存在していたときは一括競売することはできないので,その建物が設定者ではなく,第三者が築造した場合であっても一括競売することはできない。したがって,抵当権設定当時にすでに存在していた建物の所有者(第三者)が抵当権者に対抗できない場合であっても一括競売することはできない。 建物を築造 土地に抵当権設定 抵当権の実行(競売) ――●―――――――――――●――――――●―――――→ |
●一括競売できない建物の代表例 | |
建物の所有者↓ | どんな建物か?↓ |
土地の所有者 〔抵当権設定者〕 |
抵当権設定時に既にあった建物 〔抵当地が更地ではない場合〕 |
第三者 | 抵当権設定前から抵当権者に対抗できる土地の賃借権を 有している賃借人が築造した建物 |
〔改正法施行後〕 抵当権設定後に,抵当権者の同意の登記により対抗力を 付与された土地の賃借人が築造した建物 |
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抵当権設定後に,改正法施行前に短期賃貸借の要件を 満たしていた土地の賃借人が築造した建物 〔改正法施行時に短期賃貸借の要件を既に満たしていた〕 |
●一括競売できる建物の代表例 | |
建物の所有者↓ | どんな建物か?↓ |
土地の所有者 〔抵当権設定者〕 |
抵当権設定時は更地で,その後設定者によって築造された建物 |
第三者 | 抵当権設定後に,「抵当権者の同意の登記により対抗力を付与 されていない土地の賃借人」が築造した建物 |
抵当権設定後に,設定者によって築造された建物を譲り受けた が,「抵当権者の同意の登記により対抗力を付与されていない 土地の賃借人」が所有している建物 |
1.「抵当権は,家屋には及ばないので,Bは,土地しか競売に付することができず,競落後は,Aに地上権が生じる。」 |
【正解:×】 「抵当権は,家屋には及ばない」 → ○ 抵当権の効力は,抵当地の上に存する建物には及びません。(民法370条) 「土地しか競売に付することができず」 → × 「競落後は,Aに地上権が生じる」 → × |
2.「Bは,土地とともに家屋も競売に付することができるが,優先権は,土地の代価についてしか行使することができない。」 |
【正解:○】 「土地とともに家屋も競売に付することができる」 → ○ 「優先権は,土地の代価についてしか行使することができない」 → ○ |
3.「Bは,土地とともに家屋も競売に付することができ,優先権も土地及び家屋の代価について行使することができる。」 |
【正解:×】 「土地とともに家屋も競売に付することができ」 → ○ 「優先権も土地及び家屋の代価について行使することができる」 → × |
4.「抵当権は,家屋には及ばないので,Bは,土地しか競売に付すことができないが,競落後は,Aに地上権は生じない。」 |
【正解:×】 「抵当権は,家屋には及ばない」 → ○ 抵当権の効力は,抵当地の上に存する建物には及びません。(民法370条) 「土地しか競売に付することができず」 → × 「競落後は,Aに地上権は生じない」 → ○ |