Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の過去問アーカイブス 昭和44年
二番抵当権の競売の申立
Aは一番抵当権,Bは二番抵当権をもっている。担保不動産競売〔担保権の実行としての競売〕に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和44年)改 |
1.「Aのみにしか担保不動産競売の申立てをすることができない。」 |
2.「Bは,Aの承諾を得たときだけ担保不動産競売の申立てをすることができる。」 |
3.「A,B2人で共同しなければ,担保不動産競売の申立てをすることができない。」 |
4.「AもBもどちらも1人で担保不動産競売の申立てをすることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
◆担保権実行としての競売手続 競売の申立・・・目的物の所在地を管轄する地方裁判所〔執行裁判所〕に抵当権者〔申立債権者〕が申立。要件を具備していれば競売開始決定。 |
●問題を解く基本事項 |
同一の不動産について数個の抵当権が競合することがあります。この場合,抵当権の順位は抵当権設定登記の順位によって定まります。(373条) 不動産担保権の実行は,法改正により『担保不動産競売』〔競売による不動産担保権の実行〕,『担保不動産収益執行』〔不動産から生じる収益を被担保債権の弁済にあてる方法による不動産担保権の実行〕の2つとなりました。(民事執行法180条) 本問題では,担保不動産競売(抵当権の実行としての競売)を誰が申立できるかを問うていますが,原則として,抵当権を目的不動産に有している者ならば誰でも〔未登記や仮登記でも〕,抵当権の存在を証する文書を提出して,担保不動産競売を申し立てることができます。したがって,二番抵当権者のBも申し立てることができます。 一番抵当権者は,その不動産の代価について,他の抵当権者よりも優先して弁済を受ける権利があるだけであり,後順位抵当権者の競売申立てができないとすると,設定者と第一抵当権者がグルになって競売が実質的にできなくなることも考えられ,競売制度そのものが空文化してしまいます。 後順位抵当権者の申立てには,先順位抵当権者の承諾や同意は不要であり,また先順位抵当権者と共同して行使しなければいけないという規定もありません。 ▼民事執行法では,≪先順位抵当権者が優先弁済を受けたら後順位抵当権者が優先弁済を受ける剰余がない≫と見込まれるときは,原則として,後順位抵当権者の申立てによる競売開始決定は取り消されます。(民事執行法188条,63条) ▼民事執行法では,強制競売や担保不動産競売の開始決定がされた不動産について,さらに競売の申立てをすることもできます。(民事執行法188条,47条1項)〔申立てにより二重に開始決定された場合は,先に開始決定していた競売手続が進行している限り開始決定以降の手続は行われず,先に開始決定していた競売により順位に応じて配当を受けることになります。二重に申立てできるメリットは,先に出されていた申立てが取り下げられたり開始決定が取消になったりしたときに備えることができることです。〕 |