Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の過去問アーカイブス 昭和56年・問5
根抵当権・抵当権の効力・抵当権の目的 (地上権) ・複数の抵当権の優先順位
抵当権に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和56年・問5) |
1.「抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。」 |
2.「土地に抵当権を設定した場合,その土地の上に存する建物にもその抵当権の効力が及ぶ。」 |
3.「地上権も抵当権の目的とすることができる。」 |
4.「数個の債権を担保するため同一の不動産につき,複数の抵当権を設定したときは,それらの抵当権の順位は登記の先後による。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。」(類・昭和48年) |
【正解:○】 ◆根抵当権 抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができます。本肢は,民法398条の2第1項をそのまま出題したものです。 ●抵当権の附従性と緩和と根抵当権 抵当権は,債権を担保するために存するもので,被担保債権が存在しない限り抵当権は存在しません。(被担保債権が無効なときは抵当権も効力を生じない。大審院・昭和8.3.2)〔附従性〕 しかし,この抵当権の附従性は緩和されており,普通抵当権でも「将来発生する特定の債権のための抵当権は有効である」とされています。(大審院・昭和7.6.1) 根抵当権は,民法では明文化されてはいなくても制定直後から判例では認められていましたが(大審院・明治34.10.25等),昭和46年(1971)の民法改正により立法化されたものです。(施行は昭和47年4月1日から。) 『抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。』(民法398条の2第1項) これが民法の条文で「根抵当権」を導入定義するところです。 |
2.「土地に抵当権を設定した場合,その土地の上に存する建物にもその抵当権の効力が及ぶ。」 |
【正解:×】 ◆抵当権は抵当地の上の建物には及ばない 抵当権の効力は,別段の定めがなければ,抵当不動産だけでなく,「その目的たる不動産に附加してこれと一体を成したる物」にも及びますが,土地だけに抵当権が設定されているときには抵当地上の建物には抵当権は及びません。(民法370条) したがって,本肢は×です。 |
3.「地上権も抵当権の目的とすることができる。」 |
【正解:○】 ◆抵当権の目的−地上権 民法では,抵当権は,不動産〔土地・建物〕・地上権・永小作権に設定できます。(369条)
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4.「数個の債権を担保するため同一の不動産につき,複数の抵当権を設定したときは,それらの抵当権の順位は登記の先後による。」 |
【正解:○】 ◆抵当権の順位 抵当権は登記をしなくても当事者間では効力がありますが,登記をしなければそのことを第三者に対抗できません。 同一の不動産に複数の抵当権が設定されたときの優劣は,登記の先後によって決まります。(373条1項)抵当権の実行としての競売の換価金は,まず第一順位の抵当権者に充当され,残余があれば次の順位にと順に配当されていきます。 |