Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記法の過去問アーカイブス 事例総合問題 平成6年・問16・肢4
原題と解説 抹消予告後の移転登記
不動産の登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成6年・問16) |
4.「A名義の所有権の登記に関し,Bによる抹消登記手続請求訴訟が提起されたことにより,抹消予告登記がされている土地について,C名義への所有権移転登記がされた場合において,Bの勝訴判決が確定し,A名義の登記が抹消されるときは,Cの登記は,職権で抹消される。」難問 ⇒ 法改正で廃止 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
4.「A名義の所有権の登記に関し,Bによる抹消登記手続請求訴訟が提起されたことにより,抹消予告登記がされている土地について,C名義への所有権移転登記がされた場合において,Bの勝訴判決が確定し,A名義の登記が抹消されるときは,Cの登記は,職権で抹消される。」(関連・平成4年問15) |
【正解:×】超難問 ◆抹消予告登記⇒ 法改正により廃止になった。 平成16年の不動産登記法改正で,予告登記制度は廃止されました。以下の解説は参考のために掲載しています。 「抹消予告登記」とは,“すでに存在している登記が無効であるから抹消せよ”という訴訟が提起された場合に,裁判所から登記所に嘱託して,そのような訴えが提起されているという事実を登記簿に記入させ,第三者に“警告”を与えて,取引の安全を図ろうとするものです(旧第34条)。 ●原則的な手続の流れ−B(原告)とA(被告)しかいない場合 本肢では,B(原告)とA(被告)のほかにC(予告登記後の第三者)がいて複雑なので,まず,B(原告)とA(被告)しかいない場合から見ていきます。 本肢では,B(原告)がA名義の所有権の登記について抹消登記手続請求訴訟を提起したことにより,裁判所は登記所に嘱託し,「抹消予告登記」がされました。 B(原告)が勝訴したことにより,Bは,判決正本を添付してA(被告)名義の所有権の登記について抹消登記の申請をすることができます。(不動産登記法旧3条,旧146条1項など) このように,B(原告)の申請によりA(被告)名義の所有権の登記は抹消されますが,このとき,前述の「抹消予告登記」は登記官の職権により抹消されます。(不動産登記法旧145条2項) ●抹消予告後に出現した第三者がいた場合 「予告登記」とは,仮登記と並んで「予備登記」の一つであり,あくまでも第三者に対する警告的な効力を有するだけであって,対抗力はありません。 そのため,予告登記があるのを知っているにもかかわらず,取引関係を結ぼうとする第三者の出現を妨げることはできないことになります。 本肢の場合,「抹消予告登記」の後に,Aから第三者C名義への所有権移転登記がされており,A(被告)名義の所有権の登記の抹消をするために,このC名義への所有権移転登記をどうするかということが問題になります。 (裁判でBが勝ち得たのはA(被告)名義の所有権の登記の抹消のみであり,Aとは別個の第三者であるCの移転登記についてはまた別に考える必要があります。) このような場合の原則的な処理としては,A(被告)名義の所有権の登記の抹消をする前に,AとCとの共同申請によりC名義への所有権移転登記を抹消します。つまりC名義の移転登記を抹消した上でA(被告)名義の所有権の登記を抹消するわけです。 しかし,B(原告)の勝訴(A(被告)名義の所有権の登記の抹消)が確定したにもかかわらず,AとCがC名義の移転登記を抹消しないときは,B(原告)は,あらためて「Cの登記の抹消を命じる判決等(給付判決:第7条)」を得て,C名義の移転登記を抹消することになります。 したがって,職権によってもC名義の移転登記を抹消することはできません。 |