Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記の過去問アーカイブス 登記申請の期限 平成9年・問14 改正対応


不動産登記の申請義務に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成9年・問15)

1.「建物を新築した場合,当該建物の所有者は,新築工事が完了した時から1ヵ月以内に,建物の所有権の保存の登記の申請をしなければならない。」

2.「所有権の登記名義人が住所を移転した場合,所有権の登記名義人は,住所を移転した時から1ヵ月以内に,登記名義人の氏名等の変更の登記の申請をしなければならない。」

3.「所有権の登記名義人に相続が開始した場合,当該不動産を相続により取得した者は,相続の開始を知った時から1年以内に,所有権の移転の登記の申請をしなければならない。」

4.「建物が取壊しにより滅失した場合,表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人は,当該建物が滅失した時から1ヵ月以内に,建物の滅失の登記の申請をしなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「建物を新築した場合,当該建物の所有者は,新築工事が完了した時から1ヵ月以内に,建物の所有権の保存の登記の申請をしなければならない。」

【正解:×

所有権保存の登記には義務規定がない

 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物所有権を取得した者は,所有権の取得の日から1月以内に,表題登記を申請しなければいけませんが(不動産登記法47条1項),〔新築工事が完了してから1ヵ月以内に,建物の表題登記を申請しなければいけません〕,権利に関する登記にはこのような義務規定はありません。

 したがって,新築工事が完了した時から1ヵ月以内に所有権保存の登記を申請する必要はないので×です。

2.「所有権の登記名義人が住所を移転した場合,所有権の登記名義人は,住所を移転した時から1ヵ月以内に,登記名義人の氏名等の変更の登記の申請をしなければならない。」

【正解:×

◆登記名義人の氏名等の変更(更正)登記は任意

 表題部所有者の氏名・名称・住所の変更登記又は更正登記は表題部所有者以外の者は申請することができません(不動産登記法31条)が,任意であり,義務化されてはいませんでした。

 権利の登記でもやはり,登記名義人の氏名等の変更登記更正登記は義務化されていません(不動産登記法64条)

任意であるといっても,では,全くしなくても問題がないかというと違います。

 例えば,不動産を売買するときの所有権移転登記ではその不動産の所有者が登記義務者ですが,申請情報の内容である登記義務者の氏名・名称・住所が登記記録と合致しないときはその登記申請は却下されます(不動産登記法25条7号)

 所有権と所有権以外の権利を問わず,権利移転等の登記申請では登記名義人の変更・更正を省略することはできない。(昭和43.5.7民甲1260号回答)

 申請情報の登記義務者の表示が登記簿上の表示と異なっている場合は,移転登記をする前提として,登記名義人の氏名等の変更登記または更正登記が必要になってくるのです。このように,任意だからどうでもいいというわけにはいきません。(権利の登記の申請の全てで登記名義人の変更・更正登記が必要というわけではありません。)

必ずしなければならない変更登記

 以下のものに変更があったときは,表題部所有者または所有権の登記名義人1ヵ月以内に表示の変更の登記を申請しなければなりません。

 建物の表題部の変更の登記 

 (建物の所在する市・区・町・村・字・土地の地番,種類・構造及び床面積,建物の名称,

 附属建物の種類・構造及び床面積等。)(不動産登記法51条1項)

 土地の地目地積の変更登記 (地目,地積)(不動産登記法37条1項)

3.「所有権の登記名義人に相続が開始した場合,当該不動産を相続により取得した者は,相続の開始を知った時から1年以内に,所有権の移転の登記の申請をしなければならない。」

【正解:×

◆相続の所有権移転登記

 権利に関する登記は,申請義務は課されていません。したがって,『相続の開始を知った時から1年以内に』というのは笑止というべきでしょう。

4.「建物が取壊しにより滅失した場合,表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人は,当該建物が滅失した時から1ヵ月以内に,建物の滅失の登記の申請をしなければならない。」(類・平成元年問15,関連・平成3年・問16,平成8年・問15)

【正解:

◆建物の滅失の登記

 建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,1カ月以内に『建物の滅失の登記』を申請しなければなりません。(不動産登記法57条)


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