Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記法の過去問アーカイブス 不動産登記の対象 平成11年・問12 改正対応
不動産登記の対象に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成11年・問12) |
1.「地表面が水で覆われている土地であっても,私権の客体となり得る池沼・ため池は,土地の表題登記をすることができる。」 |
2.「海面下に没する土地であっても,干潮時に陸地になる土地であれば,すべて土地の表題登記をすることができる。」 |
3.「建物は,必ずしも土地に定着していることを要しないので,容易に運搬することができる切符売場・入場券売場も,建物の表題登記をすることができる。」 |
4.「建築工事中の建物については,切組みを済ませ,降雨をしのぐことができる程度の屋根をふいたものであれば,周壁を有しなくても,建物の表題登記をすることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「地表面が水で覆われている土地であっても,私権の客体となり得る池沼・ため池は,土地の表題登記をすることができる。」 |
【正解:○】 ◆池沼・ため池 登記できる土地とは,『私権の目的となり得る地表の一部』です。 地目は,登記規則99条・準則68条では23種目に区分されています。 池沼・ため池は,私権の対象−取引の対象となり得るので登記することができます。(不動産登記法34条2項,登記規則99条) 準則68条8号,17号・先例等に拠れば,地目としての池沼やため池は次のようになっています。 池沼 (灌漑用水でない水の貯溜池。発電用ダム用水池, ため池 (耕地灌漑用の用水貯溜池) ▼河川の流水下の土地(常時継続して水流の敷地になっている土地)は私権の対象とはならないため,登記することはできませんが,土地またはその一部が河川法の適用または準用される河川区域内のものになったときは河川管理者の嘱託によって「河川区域内の土地である旨」が登記されます(法43条2項)。 |
●地目−不動産登記規則 |
(地目) 第99条 地目は、土地の主たる用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。 ⇒ 準則68条 地目を定める場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。 (地積) |
2.「海面下に没する土地であっても,干潮時に陸地になる土地であれば,すべて土地の表題登記をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆海面下に没する土地を登記することはできない 登記先例としては,春分・秋分の満潮時に海面下に没する土地は,私人の所有権の対象にはならず,登記することはできないとされており,自然災害などで土地の全部または一部が海面下に没したときは,土地の滅失の登記または地積の変更の登記をすることになっています。〔一時的なものや,復元できる場合は除きます。〕(昭和33.4.11民三203号回答,昭和34.6.26民甲1287号回答など) 大審院,最高裁の判例でも,海面下に没する土地は私人の所有権の対象にはならないとしたものがあります。(昭和61.12.16など) |
3.「建物は,必ずしも土地に定着していることを要しないので,容易に運搬することができる切符売場・入場券売場も,建物の表題登記をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆建物の認定−土地への継続かつ長期間の定着 建物の定義は民法では規定されていませんが,登記実務上は「屋根及び周壁またはこれに類するものを有し,土地に定着した建造物であって,その目的とする用途に供しうる状態にあるもの」とされています(登記規則111条)。
登記法上の建物として認定されるには いくつかの要件を同時に満たしている必要があります。その一つに「永続的に土地に定着していること」(=物理的に土地に固着していること)があります。
したがって,本肢は×になります。 ▼余談・土地の定着物 「土地の定着物」という概念には,建物の他に多くの物を含んでいます。例えば 立木や石油タンク,ガスタンクや給水タンクも土地に定着していますが,登記法上の建物ではありません。 |
●建物の種類−不動産登記規則 |
(建物の種類) 第113条 建物の種類は、建物の主たる用途により、居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所に区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。 2 建物の主たる用途が二以上の場合には、当該二以上の用途により建物の種類を定めるものとする。 ⇒ 準則80条2項 建物の主たる用途が2以上の場合には,その種類を例えば「居宅・店舗」と表示するものとする。 (建物の床面積) |
4.「建築工事中の建物については,切組みを済ませ,降雨をしのぐことができる程度の屋根をふいたものであれば,周壁を有しなくても,建物の表題登記をすることができる。」(平成11年・問12・肢4) |
【正解:×】 ◆建物の認定−外気分断性 建物として登記するには,屋根や周壁により周囲から遮断されていることが必要です。しかし,建築途中のものでは,どの段階から建物と言えるのかは微妙です。 判例では,屋根や周壁を有し土地に定着して一個の建造物として存在するといえる程度のものであれば,登記をすることができるとしています。(大審院・昭和10.10.1) 本肢では,『周壁を有しなくても,建物の表題登記をすることができる』としているので×になります。
〔屋根,周壁がビニールで覆われている建造物は耐久性に欠けるので外気分断性はなく,建物とは認められない。(昭和36.11.16・法務省民事局長回答・2868号)〕 |