法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成16年・問20 2つの区域にわたる場合


建築基準法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。 (平成16年・問20)

1.「建築物の敷地が第一種住居地域と近隣商業地域にわたる場合,当該敷地の過半が近隣商業地域であるときは,その用途について特定行政庁の許可を受けなくても,カラオケボックスを建築することができる。」

2.「建築物が第二種低層住居専用地域と第一種住居地域にわたる場合,当該建築物の敷地の過半が第一種住居地域であるときは,北側斜線制限が適用されることはない。」

3.「建築物の敷地が,都市計画により定められた建築物の容積率の限度が異なる地域にまたがる場合,建築物が一方の地域内のみに建築される場合であっても,その容積率の限度は,それぞれの地域に属する敷地の部分の割合に応じて按分計算により算出された数値となる。」

4.「建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合,建築物が防火地域外で防火壁により区画されているときは,その防火壁外の部分については,準防火地域の規制に適合させればよい。」

【正解】

×

 敷地が2つの区域にわたる場合  肢1,用途地域
 肢3,容積率
 建築物が2つの区域にわたる場合  肢2,北側斜線
 肢4,防火地域と準防火地域

1.「建築物の敷地が第一種住居地域と近隣商業地域にわたる場合,当該敷地の過半が近隣商業地域であるときは,その用途について特定行政庁の許可を受けなくても,カラオケボックスを建築することができる。」

【正解:

◆敷地が2つの用途地域にわたる場合の用途制限=敷地の過半

 建築物の敷地が2つの用途地域にわたるときは,当該敷地の過半が属する用途地域の規定が適用されます。(建築基準法・91条)

 本肢では,当該敷地の過半が近隣商業地域なので近隣商業地域として用途地域の規定が適用されます。

カラオケボックスその他これに類するものは(マージャン屋,ぱちんこ屋も同じ),

  第一種・第二種低層住居専用地域,
  第一種・第二種中高層住居専用地域,
  第一種住居地域

では,特定行政庁の許可がなければ,建築することはできない。(建築基準法・48条,別表第二・(ほ))

 したがって,近隣商業地域では,カラオケボックスは特定行政庁の許可を受けなくても建築することができます。(建築基準法・48条,別表第二・(ち))

   どこから建築可か 工業地域 工業専用
カラオケボックス 第2種住居地域から工業専用地域まで    
麻雀屋、ぱちんこ屋、

勝馬投票券発売所

第2種住居地域から工業地域まで    ×

2.「建築物が第二種低層住居専用地域と第一種住居地域にわたる場合,当該建築物の敷地の過半が第一種住居地域であるときは,北側斜線制限が適用されることはない。」

【正解:×

◆建築物が2つの区域にわたる場合の北側斜線制限−属地主義

北側斜線制限は,

  第一種・第二種低層住居専用地域,
  第一種・第二種中高層住居専用地域(日影規制のある区域は除く)

に適用される。(建築基準法・56条1項3号)

  ⇒ 第一種住居地域には北側斜線制限はない。

属地主義 ⇒ 隣地斜線制限・道路斜線制限も同じ

 建築物が二つの用途地域にわたる場合,北側斜線制限は,建築物の「部分」の属する用途地域ごとに制限が適用される。(建築基準法・56条5項) 

 →当該敷地の過半が属する用途地域の規定が適用されるのではない。

 本肢は<敷地の過半が第一種住居地域であるときは,北側斜線制限が適用されることはない>としているので誤りです。

 第二種低層住居専用地域に属す建築物の部分→北側斜線制限が適用される。

 第一種住居地域に属す建築物の部分→北側斜線制限は適用されない。

●北側斜線制限の出題
(2つの区域にわたる場合)平成16年・問20・肢2(中高層住居専用地域と日影制限)昭和63年・問24・肢2(第一種住居地域には適用されない)昭和63年・問24・肢3(適用区域)平成5年・問23・肢3

3.「建築物の敷地が,都市計画により定められた建築物の容積率の限度が異なる地域にまたがる場合,建築物が一方の地域内のみに建築される場合であっても,その容積率の限度は,それぞれの地域に属する敷地の部分の割合に応じて按分計算により算出された数値となる。」

【正解:昭和62年・問24・肢2,昭和63年・問23・肢4,平成2年・問23・肢2,平成3年・問23・肢2,平成16年・問20・肢3,

◆敷地が2つの区域にわたる場合の容積率=加重平均

 建築物の敷地が,容積率の限度が異なる2つの地域・地区・区域にわたる場合は,建築物が一方の地域内のみに建築される場合であっても,その容積率の限度は,それぞれの地域・地区・区域に属する敷地の部分の割合に応じて按分計算により算出された数値になります。(建築基準法・52条6項)

 建築物が,敷地のうち一方の地域内のみに建築される場合でも,このことに変わりはありません。

建築物の敷地が,容積率の制限の異なる2以上の地域にわたる場合

 敷地が地域と地域にわたる場合で数式化してみます。

建築物の容積率  その地域の容積率×敷地内での地域の面積割合
 その地域の容積率×敷地内での地域の面積割合

<建築物が一方の地域内のみに建築される場合であっても,その容積率の限度は,按分計算により算出された数値となる>というのは,昭和63年・問23・肢4にも一度出題されています。

4.「建築物防火地域及び準防火地域にわたる場合,建築物が防火地域外で防火壁により区画されているときは,その防火壁外の部分については,準防火地域の規制に適合させればよい。」

【正解:

◆建築物が2つの区域にわたる場合−例外・防火壁で区画されているとき

 規制の厳しい方の
 規定が適用される
 ⇒ 防火地域と準防火地域

 ⇒ 準防火地域〔防火地域を除く〕それ以外の区域

 ⇒ 屋根不燃区域〔防火地域・準防火地域を除く〕それ以外の区域

 建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合は,原則として,その全部について防火地域内の建築物の規定が適用されますが(建築基準法・67条・2項),建築物が防火地域外で防火壁により区画されているときは,その防火壁外の部分については,準防火地域内の建築物の規定が適用されます。 (建築基準法・67条2項但書)

← 防火地域内の部分 → ← 準防火地域内の部分                 →
   (準防火地域内)

 防火地域の規定    

   
 ←     防火地域内の建築物の規定→ ←準防火地域内の建築物の規定→

建築物の敷地が防火地域と準防火地域にわたる場合でも,建築物がどちらか一方の地域内のみに建築される場合は,建築物が存する地域の規定に従うことに注意してください。


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