法令上の制限 実戦篇

都市計画法の過去問アーカイブス 平成19年・問18 

高度地区,区域区分,地区計画,都市計画の決定・変更の提案


都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。  (平成19年・問18)

1 高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。

2 都市計画区城については、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため、市街化区域と市街化調整区域との区分を必ず定めなければならない。

3 地区計画の区域のうち、地区整備計画が定められている区域内において、土地の区画形質の変更又は建築物の建築を行おうとする者は、当該行為に着手した後、遅滞なく、行為の種類、場所及び設計又は施行方法を市町村長に届け出なければならない。

4 都市計画の決定又は変更の提案をすることができるのは、当該提案に係る都市計画の素案の対象となる土地の区域について、当該土地の所有権又は建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権を有する者に限られる。

<コメント>  
 正解肢は,過去問頻出の『高度地区の定義』でした。肢2,肢3も頻出問題だったので,迷った人は少なかったと思います〔肢4は初出題ですが,肢1が正解肢だと気付けばどうということのない問題です〕

 本問は,合格するには絶対に得点しなければならない問題です。

●出題論点●
 (肢1) 高度地区の定義

 (肢2) 区域区分に関する都市計画

 (肢3) 地区計画の区域内の建築等の事前届出

 (肢4) 都市計画の決定・変更の提案者は,土地所有者等でなくてもよい。

【正解】

× × ×

 正答率  73.5%

1 高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。

【正解:

◆高度地区

 高度地区は,用途地域内で,市街地の環境を維持し,または土地利用の増進を図るため,『建築物の高さの最高限度または最低限度』を定める地区です(都市計画法9条17項)

 ⇒ 横須賀市の高度地区の計画

 高度地区内の建築物は,建築基準法の高さの規定 (各斜線制限など) と都市計画法の高度地区の制限と双方に適合していなければなりません。




趣旨=用途地域内において市街地の環境を維持し,または土地利用の増進を図る

制限=建築物の高さの最高限度(市街地の環境を維持するため)

    または,最低限度(土地利用の増進のため)

最高限度を定めているところが多く,最低限度を定めているところは少ない。







趣旨=用途地域内の市街地における

    土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図る。

制限=建築物の容積率の最高限度及び最低限度,建築物の建ぺい率の最高限度,

    建築物の建築面積の最低限度壁面の位置の制限を定める。

高度地区との違い高さの限度必ず定めなければならないものではない

準都市計画区地域用途地域が定められた土地の区域内にも定めることができますが,準都市計画区域内の高度地区では,高さの最低限度を定めることはできず,高さの最高限度のみを都市計画で定めることができます(都市計画法8条3項ト)

2 都市計画区城については、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため、市街化区域と市街化調整区域との区分を必ず定めなければならない。

【正解:×

◆区域区分は任意

 誤 : 「区分を必ず定めなければならない

 正 : 「必要があるときに定めることができる」

 都市計画区域を,市街化区域と市街化調整区域とに区分することを,「区域区分」といいます(都市計画法7条1項本文)

 区域区分に関する都市計画は,一定の場合を除いて(⇒参照 : 区域区分の有無),都市計画区域について無秩序な市街化を防止し,計画的な市街化を図るため必要があるときに,都道府県が定めます(都市計画法7条1項,15条1項2号,6条の2第2項2号)

 区域区分は,原則として,<必要があるときに定める>のであって,<必ず定めなければならない>のではありません。

市街化区域  すでに市街地を形成している区域
 及び
 おおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
市街化調整区域  市街化を抑制すべき区域

⇒ 区域区分されると,その都市計画区域内の土地は,市街化区域または市街化調整区域のどちらかになります。その場合,「市街化区域でも市街化調整区域でもないところ」はありません。

●区域区分の有無

 区域区分の有無は,原則として,都道府県の判断に任されていますが,以下の都市計画区域では,必ず区域区分を必ず定めなければなりません(都市計画法7条1項)

一  以下の土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域要するに,首都圏・近畿圏・中部圏の一定都市の都市計画区域

イ 首都圏整備法 に規定する既成市街地又は近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域

二  大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの<政令で定めた都市計画区域

3 地区計画の区域のうち、地区整備計画が定められている区域内において、土地の区画形質の変更又は建築物の建築を行おうとする者は、当該行為に着手した後、遅滞なく、行為の種類、場所及び設計又は施行方法を市町村長に届け出なければならない。

【正解:×

◆地区計画の区域内での建築等の事前届出

 誤 : 「当該行為に着手した後、市町村長に届け出なければならない。

 正 : 「当該行為に着手する日の30日前までに、市町村長に届け出なければならない。

 地区計画の区域〔再開発等促進区もしくは開発整備促進区(一定の施設の配置及び規模が定められているものに限る。)または地区整備計画が定められている区域に限る。〕内で,土地の区画形質の変更建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は,当該行為に着手する日の30日前までに,行為の種類,場所,設計または施行方法,着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければなりません(都市計画法58条の2第1項)

4 都市計画の決定又は変更の提案をすることができるのは、当該提案に係る都市計画の素案の対象となる土地の区域について、当該土地の所有権又は建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権を有する者に限られる。(初出題)

【正解:×都市計画の決定又は変更の提案 の手続きが,平成16年・問17で出題

◆都市計画の決定等の提案

 誤 : 「当該土地の所有権・・・地上権若しくは賃借権を有する者に限られる

 正 : 「当該土地の所有権・・・地上権若しくは賃借権を有する者に限られない

 都市計画区域または準都市計画区域のうち,一体として整備し,開発し,または保全すべき土地の区域としてふさわしい政令で定める規模※1 以上の一団の土地の区域について,一定の者は,都道府県または市町村に対して,都市計画の決定または変更の提案※2 をすることができます(都市計画法21条の2第1項・第2項)

 しかし,提案できるのは,必ずしも,当該区域内の<土地の所有者>や<建物所有を目的とする対抗要件を備えた地上権者や土地の賃借人>でなくてもよい〔⇒参考知識参照〕ので,本肢は誤りです。

〔注意〕 土地所有権者や借地権者以外のものが提案する場合でも,土地の所有者・借地権者を合わせて2/3以上の同意〔その区域内の土地の総地積,借地権のある土地の総地積のそれぞれ3分の2以上〕が必要です(都市計画法21条の2第3項・2号)

※1 政令で定める規模は,0.5ha(ヘクタール)。ただし,都道府県または市町村は,特に必要があると認められるときは,条例で,区域又は計画提案に係る都市計画の種類を限り,0.1ha以上0.5ha未満の範囲内で,それぞれ当該都道府県または市町村に対する計画提案に係る規模を別に定めることができる(都市計画法施行令15条の2)

※2 提案をすることができる都市計画の決定・変更とは,都市計画区域の整備,開発及び保全の方針<都市計画区域マスタープラン>都市再開発方針等に関するものを除きます。

●参考知識●都市計画の決定等の提案者
 都市計画の決定等の提案をすることができるものは,都市計画法や施行規則で,以下のように定められています。

・当該土地の所有権または建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権もしくは賃借権(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。「借地権」。)を有する者(「土地所有者等」。)

・まちづくりの推進を図る活動を行うことを目的とする 特定非営利活動促進法 第2条第2項 の特定非営利活動法人

一般社団法人もしくは一般財団法人

独立行政法人都市再生機構

地方住宅供給公社もしくはまちづくりの推進に関し経験と知識を有するものとして国土交通省令で定める団体<過去10年間に開発許可を受けて開発行為(開発区域の面積が0.5ha以上)を行ったことがあるものなど>,

・これらに準ずるものとして地方公共団体の条例で定める団体


過去問アーカイブス・法令制限に戻る 宅建過去問に戻る

都市計画法の過去問アーカイブス

宅建1000本ノック・都市計画法/概要に戻る

宅建1000本ノック・法令上の制限に戻る